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短編 悪魔くん

やあ、ようこそ。こんな世界の片隅へ。

Googleの波をかき分けて、よくぞここまで辿り着いたね。あんたに会えて嬉しいよ。
せっかくここまで来たんだ。少しゆっくりしていくといい。


自己紹介から始めよう。
俺の名前は悪魔くん。そう、あの悪魔だよ。
一応断っておくが、水木しげるは関係ない。たまたま名前が一緒なだけだよ。

俺はただ悪魔みたいなことしか言わないだけの無害なやつだよ。


俺は誰よりもあんたのことを知っている。
もう一度言おう。そう、あんたことを誰よりも知っているぜ。



なんで分かるのかって?
分かるさ。この部屋のドアを開ける奴は昔からだいたい同じようなやつなんだ。

ドアを明ける前から匂いたってたぜ、あんた。

いや、そんなに、ピりつくなよ。何も取って喰ったりしないよ。


じゃあ、言い当ててみろって?
試してみるかい?いいだろう。

あんたは、いつも自分に自信が無い。
いつも何かのコンプレックスを抱え、他人を妬んでいる。
あと、ストレスのせいにして、暴飲暴食を繰り返す。自分だけは太らないとか思ってる。そんな訳ないのにな。
そう、あんたは基本的になぜかいつも自分が正しいと思って生きている。

え、もうやめろって?
なんでそんな酷いこと言うのかって?

それは俺が悪魔くんだからだよ。悪魔くんは誰にも忖度しないし、本当のことしか言わないよ。

どうだい。全部当たってるだろう。

いいんだ。俺はあんたを責めているわけじゃないんだ。

話を変えよう。
昔のインターネット検索には、夢があった。


知りたいことを検索すれば、
誰が書いたかも分からない膨大なテキストのページに行きついたり、
よく分からない掲示板のよく分からない文脈を見せられたりと、とにかくネットサーフィンが楽しかった。

それに比べて、今はどうだ。
調べたいことを検索しても、何の価値もない
まとめサイトみたいなIQ低いものばかり読まされる。


だからあんたがここに辿り着いたってことは、少なくとも評価に値するぜ。
俺はあんたを焦らせたり、持ち上げたりして、何かを買わせようとはしないし、騙したりしない。


結局のところ、俺は悪魔くんで、悪魔みたいなことしか言えないけど、どうせ他のところも大差ないんだろう?



なあ、もう行っちまうのかい。

いいぜ、いつだってここのドアは開いている。
俺はあんたが再びここへくるのを、
蜂蜜たっぷりの皮肉を用意して待っているぜ。


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