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知っておくと(きっと)得する、翻訳業界用語集

はじめに

みなさまこんにちは、はじめましての方ははじめまして。最近1日に2回通り雨に降られた嘉汕🐸です。
唐突ですが、初見では意味がわかりいにくい用語や略語って、どこにでもありますよね。今となってはもう少し古いですが「DX」とか「ぴえん」とか。もちろん翻訳業界にもこういう言葉はあるのですが、業界に入りたての方やこれから翻訳者を目指そうと思っている方にとっては少々わかりにくいもの。そこでこの記事では、翻訳の現場でよく使われている用語・略語をアルファベット順にご紹介します。私見にあふれた一言をメモ付けましたので、ぜひ一度ご覧ください。

注1:用語・略語によっては、異なる意味合いで用いられることもあります。なじみのない言葉を聞いた・目にしたときには相手へのご確認をお願いいたします。
注2:カタカナで用いられる言葉は「カタカナ(英語)」の形で記載しています。略語については、「略語(正式名称)」で記載しています。

翻訳業界用語・略語(A~E)

● ASAP(As Soon As possible)=できる限り早く、なる早。
 🐸< ところでなる早っていつのことですか?

● アサイン(Assign)=仕事/案件を担当者に割り当てる(お願いする)こと。「翻訳メモリをアサインする」のように使われることも。
 🐸< Assignmentには課題、宿題の意味もありますね。

● ベストゲス(Best Guess)=原文の不明点などについて、調べられる限りの範囲で臨機応変に判断すること。“BG”と略されることも。
 🐸< 最善の判断ということですね。どこまで資料を深堀りするか、それが問題です。

● CAT(Computer Assisted Translation)ツール=翻訳支援ツール。作業負荷の解析、翻訳メモリなどの翻訳に役立つ機能を搭載したツールのことで、最近ではオンライン上のものもあります。
 🐸< そのまま「キャットツール」と読みます。猫の手より役に立ちますが、いやし効果はありません。

● COB(Close of Business)=終業時間のこと。同義語に”EOB”があります。
 🐸< 実は同義語があります。気になる方は下へスクロールを…

● コーディネーター(Coordinator)=クライアントとの橋渡し、翻訳者さんへのお仕事のヘッズアップ~ハンドオフ等、業務はさまざま。詳しくは別記事の「コーディネーターという仕事」をご覧ください。
 🐸< この方々がいないとてんやわんやになってしまいます。

● DNT(Do Not Translate)リスト=製品名やサービス名など、原文のまま残すべき用語をまとめた一覧のこと。
 🐸< 「訳すなよ?絶対訳すなよ?」はフリではありません。ご注意を。

● ENG(Engineer)=エンジニアのこと。海外の企業でよく使用されるようです。
 🐸< ツールのトラブルなどでよくお世話になる方々です。多謝。

● EOB(End of Business)=終業時間のこと。
 🐸< 「COB」の同義語です。個人的に「COB」は「Chip on Board」のイメージが強いので、こちらをよく使います。

● EOD(End of day)=真夜中12時のこと。
 🐸< こういうタイトルの映画、ありましたね。

翻訳業界用語・略語(F~J)

● Fortrans=翻訳作業ファイルをまとめたフォルダによく付けられる名称。
 🐸< 言うまでもありませんが、某プログラム言語は関係ないです。他にも、”ToTrans”や”Target”という名前がつくこともあります。

● ファジーマッチ(Fuzzy Match)=翻訳メモリと照合して、登録済みの原文と似ていると判断された文章のこと。
 🐸< 一から訳すよりは編集の手間が少ないのが普通ですが、たとえば「I have a pen」と「I have a dream」もファジーマッチ。しかし訳はまったく違うのでご注意を。

● グロッサリ(Glossary)=用語とその既定訳をまとめたリスト、つまり用語集のこと。
 🐸< CATツールに読み込むと、自動で用語を見つけてくれたりします。

● ヘッズアップ(Heads Up)=ご都合伺い、打診、引き合い。アサイン前の空き状況を伺うことです。
 🐸< 「Heads up!」と叫ぶ人がいたら、危険が迫っていることを知らせるメッセージです。ご注意を。

● HB(Hand Back)=成果物を納品すること。
 🐸< 「手戻り」ではないです…ないんです…

● HO(Hand Off)=作業ファイルを渡すこと。「ハンドオフ」とカタカナで書くこともあります。
 🐸< 最近ではオンラインストレージのリンクからファイルをお渡しすることもあるのですが、これは「手渡し」なんでしょうか…。

● ICEマッチ=翻訳メモリとの照合で、前後の文脈も含め登録済みの文章と完全に一致している原文のこと。コンテキストマッチ(CM)、101%マッチとも言います。
 🐸< 案件によっては作業対象外となり、触りません。翻訳作業の参考にはなるので、ファイルに含まれていたらぜひチェックを。

● in scope=作業対象(スコープ)に含まれる範囲のこと。
 🐸< 対義語の”out of scope”とセットで覚えておくと便利です。

翻訳業界用語・略語(K~O)

● Lockit=案件固有の指示書や参考資料などをまとめたキット。指示書には、スタイルガイドよりもさらに具体的な注意事項が書かれているケースが多い。
 🐸< ”Localization Kit (=翻訳用キット)”を縮めた言葉です。

● LSO(Linguistic Sign-off)=翻訳、レビュー、DTP処理を経た訳文の最終チェックのこと。
 🐸< レイアウトの確認をするほか、文脈などの観点から訳文をチェックします。

● LQA(Linguistic Quality Assessment)=翻訳品質評価。翻訳成果物が所定の品質基準を満たしているか確認することです。
 🐸< いくつになってもこの言葉を聞くと緊張しますね…

● Marcom=マーケティング・コミュニケーション。翻訳業界ではマーケティング分野のうち、刺さる表現が求められる案件を指すときによく使われます。
 🐸< 読者に刺さる言葉を全力で見つけにいきましょう

● MT(Machine Translation)=機械翻訳。コンピューターによる翻訳のこと。
 🐸< 昨今ではDeepLやGoogle翻訳などが登場し、MTどうしの競争が激化していますね。「人vs機械」ではなく「人with機械」でありたいものです。

● NP(No Problem)=「問題なし」などの意味を表すチャット用語。
 🐸< 「OK」の代わりに使ってみるのもいいんじゃないでしょうか。

● out of scope=作業対象(スコープ)に含まれない範囲のこと。
 🐸< ICEマッチなどが主に該当しますね。

翻訳業界用語・略語(P~T)

● PE(Post Edit)=機械翻訳に手を加えて、人ならではの翻訳に近づける作業のこと。「ポストエディット」とも書きます。
 🐸< 案件の性質、MTの性能で手間は大きく変わります。

● PM(Project Manager)=案件取りまとめの担当者、プロジェクトマネージャーのこと。会社によって業務範囲はさまざまです。
 🐸< 双方向で良い関係を築いていきましょう。

● クエリ(Query)=不明点や疑問点の申し送り/問い合わせのこと。
 🐸< 「何が問題なのか、どうすれば解決できると考えているのか」をうまく伝える工夫が必要ですね。

● Rep(Repetition)=翻訳ファイル内で繰り返し登場する原文のこと。
 🐸< 言葉の意味は文脈で変わるので、出てくるたびに別の訳を当てないと行けない場合もあったりします。

● リビジョン/レビュー(Revision/Review)=翻訳後の文章をチェックし、品質を高める校閲作業のこと。
 🐸< 誤字脱字や案件固有のスタイル、日本語としての自然さなどをチェックしますが、その本質はより正確で伝わる文章を目指すことにあります。

● リワーク(Rework)=作業を一からやり直すこと。
 🐸< 原文の改訂が行われたり、LQAで不合格となったりした時に待ち受けている言葉です…

● SOB(Start of Business)=始業時間のこと。
 🐸< 今日も一日がんばっていきましょう。

● スタイルガイド(Style Guide)=統一すべき文章・表記のスタイルや、翻訳上の留意事項をまとめた資料のこと。
 🐸< 実務翻訳ではこれを守ることが大前提になります。つまりガイドではなくルールブックですよね?

● SS(Screenshot)=PCの画面などを画像で記録した、スクリーンショットのこと。
 🐸< エラー報告のオトモ。また、UI案件ではSSや実機環境がないと文脈をつかめないので難易度が大きく変わります。

● TAT(Turn Around Time)=作業期間のこと。HOから納品日までを指すことが多い。
 🐸< 原文の分量、難易度、作業スピードなどを考慮して見積もります。

● TBA(To Be Announced)=未発表、追ってご案内予定などの意味。
 🐸< TB三羽烏(下2つを参照)の最古参。

● TBC(To Be Confirmed)=確認待ちの意味。
 🐸< まだ本決まりではありません。焦らず待ちましょう。

● TBD(To Be Determined)=未定のこと。
 🐸< 水面下では担当者のみなさんが奮闘しています。

● TER(Translation Edit Rate)=機械翻訳に単語の削除/挿入、語順調整などの編集を加えて基準訳に近づける手間を表す尺度。
 🐸< 「TER」。「U」を付けると「TERU」。GLAYです。

● タームベース(Termbase)=グロッサリと同義。
 🐸< 用語管理データベース、つまりグロッサリを編集するデータベースを指す場合によく使われます。

● トライアル(Trial)=翻訳会社への登録時に受ける試験のこと。また、翻訳会社が案件獲得のために受ける少量案件を指すこともあります。
 🐸< トライアルのポイント・心がまえについての記事を鋭意執筆中です(社長のハリーが)。お楽しみに。

● TM(Translation Memory)=対訳を蓄積するデータベースのことで、日本語では翻訳メモリ。
 🐸< 過去訳のリサイクル材料はもちろん、訳し分けの工夫もたくさん眠っています。

翻訳業界用語・略語(U~Z)

● UA/UE案件=ヘルプやマニュアルなど、エンドユーザー向けのドキュメントの翻訳案件のこと。
 🐸< 定型表現が多いジャンルですが、実物を知らないと思わぬ落とし穴が待ち受けています。ご注意を。

● UI案件=ユーザーインターフェースのローカライズ案件のこと。SW案件とも言います。
 🐸< SSがないと文脈がわからない、変数がよく登場するなど、他案件とは一味違ったおもしろさがあります。

● wwc(Weighted Word Count)=CATツールのグリッド(翻訳メモリのマッチ率)を加味した実際の作業負荷のこと。
 🐸< あくまでも一つの目安ですが、作業ペース・スケジュールを組み立てる基準になります。


最後に

実は本記事は、弊社Twitterで不定期連載中の翻訳業界用語をまとめたものです。これからも徐々に内容を更新していく予定ですので、よろしければ一度ご覧ください。
また、記事に載っていないものの、普段みなさんが目にする略語や用語がありましたら、Twitterやコメントからお知らせいただけると喜びます。「なんとなく使っているけれど実はよく意味を知らない…」、「この記事の説明が思ってたのと違う…」、「仲間内で使っている新しい用語を広めたい!」、「メモをもっとマジメに書け」など、自由にご意見をお寄せください。
🐸 < 最後までご覧いただきありがとうございました。


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