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初心者からのアカペラミックス02 ハード機材

全般

このエントリでは制作環境に関して詳述します。皆さん手持ちの制作環境と比較して、不足すると思われる箇所に関して適宜補強するのが好ましいと思います。

システムとしては下図を想定しています。PCにオーディオIOを接続し、必要に応じてヘッドホンアンプを介してヘッドホンでモニターを行います。別途スピーカー(最悪TVでも可)にも接続して、適宜モニタリングできるようにしておきます。

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重要な点として、図内で赤で示したアナログ関連機材に関しては、高品質な製品を使う必要があります。上図においては、オーディオIO、ヘッドホンアンプ、ヘッドホンが該当します。私が一方的に師と仰いでいるミキシングエンジニアの足立タイセイさんも似たようなことをおっしゃっています。

音の出入口には金をかけましょう。


オーディオIO

PCに録音したり、PCから出す音を確認したりする機材で、最重要です。モニター音質(と録音品質)の大部分が決定されます。オーディオI/Oとは何かわからなかったら、下記のリンクを読んで知識を付けましょう。

一発録りをせず、一人ずつマルチトラックでレコーディングする前提とすると、2in 4out マイクプリアンプ付きで足ります。一発録りを行う場合は人数分のマイクプリを備えたオーディオIOが必要になります。マイクプリアンプとは何かわからなければ、下記のリンクを読んで知識を付けましょう。

選定基準としては1.音質 2.ドライバ安定性 3.入出力数が挙げられます。

オーディオIO選定基準1:音質

音質ですが、各種レビューを読んでも音質に関してはわかりにくいと思います。まずはスペックから確認し、リセールバリューを考慮して人気のあるオーディオIOを選択すれば間違いが少ないと思います。スペックとして、RMAAという音質測定ソフトでのTHD+N測定値が-100db程度のものを選択するのが経験上好ましいと考えております。

RMAAとはオーディオIO性能測定ソフトで、これを使うことで自分でオーディオIOの性能を測定することができます。世界中の暇人マニアが自身で購入したオーディオIOの性能を測定してネットにさらしています。測定結果はキーワード「オーディオインターフェース名 RMAA」でgoogle検索すると見つかります。THD+NとはRMAA測定項目で、低ければ低い程高音質となります。私がこれまでRMAA測定結果を見てきた経験上、この項目に機材間の差が出やすいと感じております。数値の目安としては下記のとおりです。

・2010年代初頭のプロ用機材=-90db程度
・現行の音が良いと言われているコンシューマー向け機材⁼-100db程度
・現行のプロ用機材=-110db程度

個人的には、THD+Nが100db程度の測定値を持つ機材が良いと考えています。THD+N=-90dbの機材から-100dbの機材に買い替えたら飛躍的にモニタリングがしやすくなった経験があります。ちなみに90年代のプロ御用達レコーダーであるSony PCM3348ではTHD+N=-24dbで、これでも数々の名曲が生まれたことを考えると現代は良い時代になったと思います。


オーディオIO選定基準2:ドライバ安定性

ドライバ安定性に関しては、使ってみないとわからない面があります。これはネットで評判を確認し、エイやで決めるしかないと思います。音楽制作中のトラブルシュートは創作意欲を著しく減退させるので、なるべく評判が良いものを選ぶのが好ましいでしょう。また、MAC使用を前提に置いている機材をWindowsで使うとトラブルに見舞われることが多いと感じています。そのような機材をWindowsで使ってトラブった場合、ネットにトラブルシュートがが落ちておらず対応に時間がかかるので避けるのが好ましいでしょう。Mac使用を前提としており、Windowsでも使用可能なIOを出しているメーカーは下記の通りです。

・MOTU(M2、M4以外)
・ApogeeのWindows対応IF(Windowsに対応していないものもある)

オーディオIO選定基準3:入出力数

録音を行うか?行うなら一発録りを行うか?ですべてが決まります。選択フロー図としては下記のとおりです。

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要は録音を行うのであれば、一度に録音するトラック数分のインプットとマイクプリが必要になります。アウトプットはヘッドホンアンプ(HPA、後述)を使うなら4アウト、そうでなければ2アウトで足ります。自分のやりたいことに合わせて検討しましょう

個人的おすすめオーディオIO

RME Babyface Pro FS

アナログ4in4outでマイクプリ2系統、THD+N=-102dbで10.5万円です。抜群の高音質、高いドライバ安定性、使いやすいユーティリティソフトを誇る鉄板インターフェースです。ヘッドホンアンプが高性能なため、これを購入すれば後述のヘッドホンアンプが不要となります。宇多田ヒカルはじめ、いろんなミュージシャンが愛用しており、人気があるのでリセールバリューも期待できます。

旧機種のBabyface Proを中古で手に入れてもよいと思います。入出力が同じでTHD+N=-99dbで、大差がありません。下記記事では、新旧機種の差が聴感上分からないとのことです。

Forcusrite Clarett 2Pre USB

アナログ2in6outでマイクプリ2系統、THD+N=-99dbで4.5万円です。とても高音質で、実はBabyface Pro FSおよび過去機種のBabyface proと同じDACチップを積んでおり、RME旧機種のBabyface proと同等の音質を1/2の価格で実現しています。ただしヘッドホンアンプが弱いため、ミキシングにはヘッドホンアンプを準備するのが好ましいです
ForcusriteはオーディオIO世界シェアNo.1のメーカーで、世界中のユーザーが使っている関係で、ドライバも比較的安定しています。ただし日本国内の人気は微妙で、リセールバリューはBabyface proほどは大きくありません。

Forcusrite Clarett 8pre USB

アナログ8in8outでマイクプリ8系統、THD+N=-99dbで10万円です。インプット、アウトプット数以外はClarett 2pre USBと同じスペックで、一発録りをやりたい場合はこちらが有力な選択肢となるでしょう。

ヘッドホンアンプ

ヘッドホン専用のアンプです。オーディオIOのヘッドホン端子にも内蔵されていますが、はっきり言っておまけ程度の品質で、同じオーディオIOから出ている信号であっても、ヘッドホン端子から出ている音声信号は、ラインアウトから出ているものよりも品質が低いことが多いです。

またオーディオIO内蔵ヘッドホン端子はアンプの駆動力が弱く、ヘッドホンを十分にならしきれないことも多々あるため、駆動力が高く、低ノイズなヘッドホンアンプが正しいモニタリング環境構築には不可欠です。地味にオーディオIOよりも大事かもしれません。

ただし、音楽制作向けヘッドホンアンプという製品がニッチ過ぎてマーケットにはほとんど存在せず、選択肢はほぼありません。個人的なおすすめとしてはRNHP一択です。フラットな聴感、ドライブ力、低ノイズいずれも音楽制作に適しています。

安いものを買っても、オーディオIOのヘッドホン端子とあまり変わらないという結果となる可能性が高いため、頑張って金をためましょう。

ヘッドホン

次の項で説明しますが、モニタリングのための音場補正ソフトを積極的に使用するため、ソフトにて対応しているヘッドホンを選定するのが好ましいと考えられます。私が使用しているソフトはSonarworks SoundID Referenceです。

これを使うことを念頭に置いた場合、対応しているヘッドホンは限られます。(と言ってもものすごい数のヘッドホンが対応しています)対応ヘッドホンリストは下記のとおりです。

これに掲載されているものの中から、実際に試聴して好きなものを選んでください。リスニングにも使いまわせるとよいので、好みの音質のものでOKです。どうせヘッドホンは音場補正して使用しますので、ある程度以上の水準(目安2万円以上)のものであれば、モニター環境を大きく狂わせるものではありません。

ミキシング作業単体では開放型がおすすめです。Izotopeのエンジニアも下記の動画でそう言っています。

ただしレコーディングにも使用するなら、密閉型を選んでください。開放型と密閉型の違いは下記のリンクで理解してください。

PC

きょうび誰でも持っているので深くはコメントしません。WindowsでもMacでも好みのものを使ってください。ただしM1 Macは対応していないソフトがたくさんあるので現時点(2021年夏)ではお勧めしません。アカペラのミキシングだったら、下記程度のスペックのPCがあれば快適に行えます。そんなにハードルは高くないと思います。

CPU::4コア以上(Intel CPUが好ましい)
メモリ:16GB以上
ドライブ:SSDであればOK

注意点として、なるべくIntel CPUを搭載したPCを使ってください。最近AMDが安くて速いですが、積極的にサポートしているソフトはあまり多くなく、CPUがIntelでないことで発生するトラブルが発生した場合、解決に時間がかかります。人柱になりたくなければIntel CPUを選ぶのが良いと思います。

スピーカー

聴ければなんでもいいです。テレビやコンポのスピーカーで個人的には十分な気がしています。ミキシング可能なスピーカー再生環境を構築するためには金と経験が必要で、初心者にはハードルが高すぎるのでまずはあまり重視しません。

次回はソフトウエア環境に関して説明します。

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