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気付くわけないじゃん、花言葉で"好き"と伝えられても。




カランコロンカラン


〇〇:お疲れ様でーす。

店長:お疲れ!〇〇君。

〇〇:あ...また新メニューですか?笑

店長:うん!見て見て!ガトーショコラ!

〇〇:美味そうっすね笑 後で食わせてください笑


高校終わりに、町にある小さめのカフェでバイトをする。

小さいカフェだからバイトも二人だけ。本当は店長一人でも回せるんだけど、まぁ雇ってくれてるだけで有難い。



ガチャ 着替える為に、バックヤードの扉を開ける。


〇〇:お、今日は早いね。遥香。

遥香:ん!〇〇君! お疲れー。


賀喜遥香、僕のバイト仲間。学校は違うけどバイト歴が長いし、何よりずっと二人だからすぐに仲良くなった。


〇〇:何してんの?

遥香:ウェルカムボード書いてるの。


遥香:今週の....新メニューは......ガトーショコラ....っと....

〇〇:へぇー.....やっぱ遥香って絵上手いよな。

遥香:ほんと!?

〇〇:うん。僕の何倍も笑 それで.....今日の花は?

遥香:え?.....


ロッカーに荷物を詰めながら話していると会話が止まった。


〇〇:いや...え?じゃなくて笑 毎週描いてるじゃん。花。

遥香:き、気づいてたの!?

〇〇:気づくでしょそりゃ笑 

遥香:そっか....気づいてたんだ....

〇〇:半年前くらいから描いてるけど、毎週違う花だよね。

遥香:...うん。今週は"ジャノメギク"


そう言って遥香は僕に画像を見せた。


〇〇:へぇー!綺麗な花だね。

遥香:あの....あぅ....いやぁ....どうしよっかなボソッ

〇〇:ん?

遥香:〇〇君って.....花言葉とか知ってる?

〇〇:花言葉?・・

店長:おーい、お二人さん、お客さん来たよー。

〇〇:あっ、はい!今行きます!

遥香:.............

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店長:ふぅー、今日もお疲れー!

〇〇:お疲れ様でしたー。

遥香:お疲れ様でした!


バイト終わり、三人で少し話してから帰るのが定番になっていた。


〇〇:あ、そうだ。店長に言わないといけない事があって。

店長:なにー?

〇〇:僕、今年いっぱいでバイト辞めるかもです。

遥香、店長:えっ!?

店長:ど、どうして!?時給低い!?もうちょっと上げられるよ!

〇〇:違いますよ笑 僕だって辞めたくないですけど、来年受験生ですし。親とも話してバイトは今年いっぱいかなぁって話してたんです。

店長:.........そっかぁ....まぁそれは仕方ないね..。

〇〇:そんな悲しい顔しないでください笑 今年いっぱいは辞めないですし、何だったら来年はここで勉強しますよ笑

店長:じゃあ....ちょっとは寂しくないね笑

〜〜

〜〜

〇〇:うぉっ.....秋なのか冬なのかわかんないな...


カフェから出て、街灯と家の窓から差す光だけで照らされる道は、一人じゃとても寒かった。


遥香:あ、あの!〇〇君!

〇〇:ん? あぁ、遥香。何してんの?

遥香:あの、、一緒に帰りたいなぁ...なんて...

〇〇:ん、いいよ〜。

遥香:やった//

〜〜

〜〜

〇〇:さみぃな笑

遥香:ね!もうマフラー付けてこよっかな...

〇〇:それはまだ早いよ笑


バイト終わり。駅まで二人で帰るのは時々あった。


〇〇:電車まであと...5分くらいか。遥香は?

遥香:私はあと10分くらいかな。


二人、駅のホームで電車を待つ。手が触れれば、そのまま繋いでしまいそうな距離だ。


遥香:ねぇ、〇〇君。

〇〇:ん?

遥香:バイト...辞めちゃうの?

〇〇:まぁね。今年いっぱいかな。

遥香:......会えなくなる?

〇〇:んー....バイトの時より頻繁には来れないかなぁ...


シュー....ガタンゴトン...


〇〇:あ、電車来た。


ホームに電車が止まって、僕は扉側に乗り込んだ。


〇〇:じゃ、またバイトで・・

遥香:あ、あのね!〇〇君!

〇〇:ん?

遥香:私がボードに花を描く理由....そ、それは〇〇君に向けて描いてるの!

〇〇:え?

遥香:〇〇君を思って、だから・・


プシューー


扉が閉まって、どんどんと遥香から距離が離れていく。

僕は、ただ呆然と手を振るしか出来なかった

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翌日 学校


△△:〇〇ー、今日どっか遊び行く?

〇〇:いや、今日は図書館いって勉強するわ。

△△:何!? もしや女の子と二人で・・

〇〇:ちげーよ笑 一人で勉強すんの笑

〜〜

〜〜

図書館


町に一つしかない大きな図書館だから、違う高校の生徒やらも沢山いた。


〇〇:(どこの席に座ろっかなー.....あれ?)


目線の先には、見覚えのある背中があった。


〇〇:(遥香じゃん.....あれ...寝ちゃってる)


机には、小さなメモ用紙と本が置いてあった。


〇〇:(花言葉辞典.....へー....)


何の気なしに手に取ってペラペラと捲る。


〇〇:(あ...ジャノメギクだ)


昨日遥香が描いていた花の名前に目が止まった。


〇〇:(花言葉は.....)


私を見つめて


〇〇:えっ?


あれ....確か...あの花は僕に向けて描いてるって....


もう一度机に目を落とすと、メモ用紙が目に入った。



"来週はアネモネ!"



〇〇:(アネモネ.....)


花言葉は


あなたを愛す


〇〇:っ.........


思わず声を出してしまいそうだったから、口を手で塞いだ。


たぶん、今の僕の顔は、赤いアネモネよりも真っ赤なんだろう。

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翌週


遥香:今日はアネモネ〜。赤いアネモネじゃないと告白の意味にならないから気をつけないと。


〇〇君のいるバイト先へ心を躍らせながら向かうが、ふと立ち止まってしまった。


遥香:でも......〇〇君バイト辞めちゃうのか...


私は不器用。"好き"と口に出来たらどれだけ楽なんだろう。


眼の奥から襲う涙を堪えて、カフェの扉を開けた。



カランコロンカラン


遥香:お疲れ様です!

店長:お疲れ〜。見て見て!新作チーズケーキ!

遥香:美味しそぉー!! 早速ウェルカムボード描かなきゃですね!

店長:あ、ウェルカムボードは〇〇君が描いてくれたよ。

遥香:え?

〜〜

〜〜

遥香:(〇〇君が描くのなんて初めてだ....)


当の本人は、店長におつかいを頼まれて今はカフェにいない。



ガチャ バックヤードの扉を開ける。


遥香:あ、本当だ。


新作チーズケーキ とデカデカと書かれている。男の子っぽい字で。


遥香:ん?


あれ、花だ。花の絵が描いてある。何度も消した跡がある。


描かれていたのは、白いアイリスだった。


遥香:えっ....あっ....ふぇぇぇ///


何度も花言葉を調べたから知っている。


花言葉は



あなたを大切にします



遥香:んんんー// えぇ!? どうして....

〇〇:よ。

遥香:あっ....


バックヤードの扉の所に立っていたのは、〇〇君だった。


〇〇:そんなに顔赤くしてたら......白いアイリス描いた意味ないだろ//

遥香:へへっ// グスッ  嬉しい//

〇〇:これから.....よろしくお願いします。

遥香:うん! 大好き!


抱きついた彼の胸からは、花のような香りがした。


花がやっと咲いた気がした。

これからも花言葉で伝えようかな。

いや、口で伝えよう。


彼の白いアイリスが、黄色のアイリスにならないように。

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                  Finish




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