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凡豪の鐘 #51


美月:〇〇。ご飯できたよ。

〇〇:...............

美月:〇〇?

〇〇:.....ん?...あぁ、ごめん。


ベッドから起き上がって、食卓へ向かう。脳裏に焼きついて離れないのは、文化祭で見た真凛と悠真の姿だった。

〜〜

美月:............ソワソワ

〇〇:.......なんでそんなソワソワしてんの。

美月:へっ? ......ソワソワしてた?

〇〇:うん。飯の時間ずっと。


二人は食後にコーヒーを淹れて飲んでいた。


美月:ちょっと緊張してて......

〇〇:はは笑 明日の発表に?

美月:うん......

〇〇:.........大丈夫だよ。

美月:え?

〇〇:美月はもう立派な女優だ。美月より演技が上手い俺が言うんだから間違いない。

美月:....あはは笑 なにそれ笑

〇〇:うん。やっぱ美月は笑ってた方がいいよ。その方が可愛い。

美月:なっ//

〇〇:本番では顔赤くなるなよー。今言ったセリフあるんだからなー。


パタンッ 〇〇は自室へと戻って行った。


美月:軽々しくそんな事言うなー!


ドアの向こうから美月の声が聞こえる。

この頃にはもう、俺は美月に惹かれていたのかもしれない。自分では気づいていないだけで。部活に真摯な所や日々の生活の中で、良い所を沢山見つけた。


〇〇:ふぅ......


頭にどうしても引っ掛かるのは悠真と真凛。あの後少し追ったが、見失ってしまった。どうか見間違いであって欲しい。美月や他のメンバーには言わなかった。演技に支障がでると思ったから。

ただ、この考えが杞憂であればいいと願うばかりだった。

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翌日


ガチャ


〇〇:おはよ。

美月:ん、おはよー。


美月は先に食事を済ませていた。


〇〇:もう緊張してないか?

美月:うん! なんか寝たら緊張とか忘れちゃった笑

〇〇:そんなこと言って本番前緊張すんなよ?笑

美月:しないよ!笑 私先に学校行ってるね?

〇〇:おう。俺もこれ食ったら行くわー。


美月はバッグを持って玄関に向かった。


美月:..........〇〇!


玄関から自分を呼ぶ声が聞こえる。〇〇はダイニングテーブルから身を乗り出して、玄関を見た。


〇〇:んー?

美月:今日の発表.....絶対成功させようね!!


満面の笑みだった。.....何故だか少し、消えてしまいそうで、怖かった。


〇〇:............おう!

美月:じゃ、行ってきまーす!


パタンッ


〇〇:.........俺も準備すっか。

〜〜

〜〜

坂乃高校


生徒会長:これからー!坂乃高校文化祭2日目を開催しまーす!最終日だから楽しもー!!!


スピーカーから生徒会長の元気な声が響く。


〇〇:......よし.....あれ、俺シフト何時?

美波:演劇部の美月と〇〇は今日シフト入れてないよ。忙しそうだし。

〇〇:おぉ....美波良いやつだな....

美波:でしょー笑 午後からだっけ、発表。

〇〇:うん。来る?

美波:行く行く!絶対見に行く!

〇〇:はは笑 ありがと。

美波:そういえばさ、〇〇君は昨日誰と回ったの?

〇〇:俺は.....昨日は美月と回ったかな。

美波:へぇーニヤニヤ

〇〇:何笑ってんだ。

美波:いやー?笑 あ、私最初シフト入ってるから行くねー。

〇〇:頑張れー。


美波は教室から出て行った。


男1:演劇部の発表見に行くね!

女1:私もー。美月頑張ってね。

美月:ありがとう!


またもや美月の周りには人だかりができている。

〇〇はする事もなかった為、廊下へ出た。


〇〇:...........ん?

蓮加:良い?勝った方が誘えるってことで。

茉央:わかりました!

蓮加:行くよー! じゃんけんぽい!

茉央:あーー!! 負けてもうた......

〇〇:何やってんの?


廊下に出たら、蓮加と茉央は鬼気迫る表情でじゃんけんを繰り広げている。


茉央:あ、〇〇.........じゃ、私は負けたので去ります!では!


茉央は走り去ってしまった。


〇〇:何やってたの?

蓮加:あ....いや....その...い、一緒に文化祭....まわらない?

〇〇:え?べ、別に良いけど。

蓮加:やったボソッ  ほ、ほら!早く行くよ!

〇〇:お、おう。

〜〜

〜〜

蓮加:あれ食べたい!

〇〇:お、美味そう。食うか。


〇〇は蓮加と二人で文化祭を回っていた。


〇〇:ベンチに座って食お。

蓮加:うん!


終始、蓮加は楽しそうだった。


〇〇:よいしょ。......パクッ...ん、美味い。

蓮加:パクッ.....んー....なんか文化祭って味。

〇〇:はは笑 確かに。

蓮加:..........ねぇ、〇〇。

〇〇:ん?

蓮加:〇〇はさ......好きな人とかいないの?

〇〇:なんだよ急に笑 .......好きな人かぁ....どうなんだろ、わかんない。蓮加は?

蓮加:........いるよ。好きな人。

〇〇:お!誰誰!

蓮加:........ほんと鈍感...ボソッ

〇〇:え?

蓮加:なんでもない! ただ....ちょっとは私の事も見てよね!

〇〇:どゆこと笑 見てるよ蓮加の事は。俺の事一番知ってるのは蓮加だろうし、蓮加の事一番知ってるのも俺だろうからな。

蓮加:.......そういう事...さらっと言わないでよ//

〇〇:なんだ、照れてんのか?笑

蓮加:うっさい!

〇〇:はは笑 ....よし。これ食ったらそろそろ部室行くか。

蓮加:あ、もうそんな時間か。


時刻は12時を少し過ぎた頃。公演の時間まで、刻一刻と近づいていた。

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演劇部 部室


衣装や小道具やセットやら部室に詰め込んでいる。演劇部の発表は一番最後。それまでは他の文化部が発表している。


〇〇:後何分くらい?

美月:あと1時間くらいかな.......ソワソワ

〇〇:緊張してんなぁ笑

美月:やっぱり緊張するよ....

茉央:私も....緊張してきた...

蓮加:大丈夫だよ、きっと上手くいく。

〇〇:そうだな。俺ちょっと体育館の様子見てくるわ。


カチャ


〇〇:ん?


ガタガタ


〇〇:あれ......

蓮加:どうしたの?

〇〇:.....扉が開かない。


扉に手をかけた時に違和感を感じ、力を入れて扉を開こうとするも開かなかった。

どうやら、外側から何らかの細工が施され扉が開かなくなっている。


美月:えぇ!?な、なんで!?

〇〇:........たぶん、悠真と真凛の仕業だ。

茉央:えっ!?

〇〇:昨日見たんだ。見間違えじゃなかったらしい。

美月:で、でも...退学になったはずじゃ...

〇〇:文化祭は誰でも学校に入れるからな....今日を狙ったんだろ、俺と茉央に何らかの嫌がらせをしたかったんだろうな。俺が和僧だってどうやって気づいたのか.....ま、色々調べたんだろ。


悠真達は悪事が明るみに出てから退学処分を言い渡されていた。昨日は変装をしていた為、気づくことができたのは〇〇だけだった。

部室に閉じ込められたこの状況でも、〇〇は至って冷静だった。


美月:ど、どうするの!これで間に合わなかったら....

〇〇:大丈夫。事前に律に言ってるから。公演30分前に俺らが体育館にいなかったら、なんかあったって事だから学校中探せって。

〇〇:あいつ今シフト入ってるから、30分前には探してくれると思うよ。

美月:そ、そっか.....良かった。


〇〇は悠真達が文化祭に来るというわずかな可能性を考慮していた。まさか本当に来て、危害を加えてくるとは思わなかったが。


〇〇:....体育館の様子も観れねぇし....暇になっちまったなぁ.....

〇〇:あ........


不意に七瀬との会話を思い出した。


七瀬:それとな、この小説に書ききれてないこともあるやろ?

〇〇:......まぁな。

七瀬:それも....どっかのタイミングで話しておいた方がええんとちゃうかな。


まだ話していなかった。〇〇の過去のこと。


〇〇:......まだ時間あるな....

蓮加:どうしたの?

〇〇:.......話しておこうと思ってさ。「消える君へ」のこと。

美月:ん?

〇〇:あの小説な.......俺が書いたんだよ。

茉央、美月:えぇっ!?

〇〇:あの小説は.....俺が中学の時に書いた....実話なんだ。


〇〇は自身の中学時代の事を、語り始めた。

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四年前


〇〇:相変わらず高いなぁ....


そびえ立つビル群を見て、首が痛くなる。昨日、中学の入学式を終え、今日から授業が始まる。

知らない人ばかり。田舎から移住して早くも一人暮らし。でも、別に不安ではなかった。小説さえ書ければなんでもいい。そう思っていた。

〜〜

乃木中学校


人数が多いマンモス校である。


担任:そうだなぁ.....よし!まずは自己紹介しよっか。名前と趣味と....まぁなんか言いたいことあれば言ってって〜。


〇〇は出席番号が1番だった。その為自己紹介は〇〇から。席を立って、後ろを向いた。


〇〇:天鐘〇〇。天の鐘って書いて、あまねって読みます。趣味は....趣味っていうか基本的に小説しか書いてません。よろしく。


周りの生徒はあっけに取られていた。


担任:お、おう。じゃ次の人。


そこから順に自己紹介をしていく。6列目の最後までまわってきた。


担任:じゃ、最後。

祐希:はーい! 与田祐希って言います!趣味はー、小説を読むこと!よろしくお願いします!

〇〇:.......小説...ボソッ


〇〇はあまり小説を読むことが趣味という人を好んでいなかった。なんとなく小説が軽んじられている感じがするから。


担任:よし!これで全員だな。あとは、休み時間とかで仲良くなれよー。


これでHRは終わり。別に仲良い人を作る気はない。できたらでいい。そう思っていた。

〜〜

昼休み


周りの目などは気にせず、原稿用紙を取り出す。


〇〇:今日は......ま、学生物だな....


いつものように、小説を書き始める。最初は皆んな探り探りで静かだった教室も、段々と話し声が聞こえ始めた。


〇〇:.............ん?


視線に何かが入ったと気づき、目線を前に向けると、自分の机の前に一人の女の子が立っていた。


〇〇:......なんか用?

祐希:君、〇〇君だっけ。

〇〇:.....そうだけど?

祐希:小説書くって言ってたけど....今書いてるの?

〇〇:....うん。


思い出した。こいつ、小説読むのが趣味って言ってた奴だ。


祐希:じゃあ、私にさ!君の小説読ませてよ!

〇〇:はぁ?


これが、〇〇と祐希の最初の出会いだった。

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              To be continued

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