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凡豪の鐘

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一人の才能を失くした高校生の小説家と、夢を追う少女達の物語。 読み方は「ぼんごうのかね」です。
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2024年3月の記事一覧

凡豪の鐘 #24

凡豪の鐘 #24

ギフテッドとは、一般に高い知能や特定の分野で優れた才能を持つ人のことを言う。「神様からの贈り物(ギフト)」という意味でギフテッドと呼ばれ、生まれ持った先天的な特性とされる。

〇〇は小さい頃から、物事を覚える速度や、感じる速度が異常だった。空子は少し変だと感じていたようだったが、鐘音は気にしていなかった。それは何故か。

それは鐘音も幼い時からそうだったから。

〜〜

空子:ギフテッド.....

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凡豪の鐘 #25

凡豪の鐘 #25

監督:はい!今日の撮影はこれで終わりです!お疲れ様でしたー。

一同:お疲れ様でしたー。

外はもう、すっかり暗くなっていた。

監督:俳優陣は明日の打ち合わせあるからちょっと残ってね。

七瀬:はーい。

鐘音:よし。じゃあ帰ろうか。

美月:.............。

鐘音:おい、何してる、帰るぞ?

美月:え!?わ、私ですか!?

鐘音:君しかいないだろ。

美月:え、あ........

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凡豪の鐘 #26

凡豪の鐘 #26

それは、夏休みに入る前日の事だった。

賢治:んー......これじゃあ、優秀賞は厳しいなぁ...

蓮加:....そっかぁ.....

賢治:共感力が低いな。

蓮加:共感力?

賢治:あとは自分で考えるんだな。

蓮加:んぅ.....

正直渾身の出来だと思った。でもやっぱりダメだった。私には才能がないんだろうか。

そんな事を思っていたら、もう足は海へ向かっていた。悩んだことがあれば海に行く

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凡豪の鐘 #27

凡豪の鐘 #27

〇〇:ふぅ......ちょっと休憩するか。

何かを掴んだあの夜から、〇〇はずっと小説を書いていた。

これが正解かも、わからないまま。でも何となく良い小説が書けているという感覚がある。

〇〇:.........撮影、見に行ってみるかな。

このウズウズとした感情の行き場を探して、部屋を出た。

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海辺

監督:じゃ、じゃ

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凡豪の鐘 #28

凡豪の鐘 #28

美月:................。

撮影の見学から帰ってきて、家に鐘音と〇〇はいなかった。

空子:ソワソワしてるわね笑

美月:だ、だって....負けたら〇〇は小説書けなくなっちゃうんですよね....

空子:まぁ....そうね。

美月:はぁ........

七瀬:見に行ってきたら?

美月:え?

七瀬:そんなに気になるんやったら見に行って来たらええ。私は打ち合わせがあるから無理や

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凡豪の鐘 #29

凡豪の鐘 #29

〇〇:....だーかーらー、俺は良いって!

美月:えー....行こうよー!!

〇〇:折れてる足で行きたくねぇんだって!

美月:でも夏祭り行かなかったら夏休みの意味ないじゃーん!

二人は家であーだこーだ喧嘩をしていた。律から電話で夏祭りに行かないかと誘われ、その場で〇〇は断ったのだ。

理由は足の怪我。人混みの中を松葉杖で歩きたくなかった。

美月:ねぇ...一緒に行こうよぉ...

〇〇:

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凡豪の鐘 #30

凡豪の鐘 #30

蓮加:....どこ行ったんだろ...

美月:皆んなはぐれちゃったねぇ笑

蓮加と美月は、はぐれてしまった為、歩きながら皆んなを探していた。

蓮加:......美月はさ、〇〇の事好きなの?

美月:え?

唐突な質問だった。

美月:な、なんで?

蓮加:.....なんか距離近くなってるし....お互い呼び捨てだし....一緒に住んでるし...

美月:ち、違うよ?一緒に住んでるのは・・

蓮加

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凡豪の鐘 #31

凡豪の鐘 #31

〇〇:......っしゃあぁぁぁあ!!終わったぁぁぁあ!!

教室内に空虚な声が響く。放課後の教室で課題を終わらせた。外はもうオレンジ色だった。

ガラガラガラッ

麻衣:何騒いでるの? 今日は終わるまで帰れないからね?

〇〇:...ふっふっふっ笑 まい先....もう終わりましたよ。

麻衣:えぇ!?嘘!?

〇〇:ほんとー。チェックおなしゃす。

〜〜

〜〜

麻衣:ほ、ほんとに全部終わって

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凡豪の鐘 #32

凡豪の鐘 #32

〇〇:.......書いてねぇわ...

蓮加:はぁ!? 何やってんの!?

高校生で小説家を目指しているものにとって重要な大会は、小説甲子園、そして文芸コンクールの小説部門。

小説甲子園の締め切りは8月の半ば。締め切りは明日に迫っていた。

蓮加:書いてないってこと!?

〇〇:いや.....親父との勝負に夢中になってて...頭から完全に抜けてた....

蓮加:はぁ....何やってんの...

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凡豪の鐘 #33

凡豪の鐘 #33

〇〇:な、なんでここにいんの?

茉央:え、えーっと....ちょっとお出かけでもしようかなーって...

〇〇:そ、そうか....友達と?

茉央:ううん。一人。〇〇は?

〇〇:俺も一人だけど....

ピロンッ LINEが入る。

律L:美波さん来たから、このまま電車で△△町まで行くから。

〇〇L:わかった。

LINEを打ち終えてスマホから目を離すと、茉央もスマホで何かを打っているようだっ

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凡豪の鐘 #34

凡豪の鐘 #34

〇〇:............えー....と..偶然?だな、あはは...

律:な、なんでこんな所にイルンダヨー、グウゼンダナァ....

美波:ま、茉央ちゃんも来てたんだぁ......こんな奇跡あるんだねー....

茉央:そ、そうですねー....

4人は今同じテーブルを囲んでいる。テーブルには二つの大きなパンケーキが置かれている。何故こんな状況かというと....

〜〜

数分前

〇〇:あ

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凡豪の鐘 #35

凡豪の鐘 #35

〇〇:あ、おはよー。

蓮加:...................。

蓮加は目も合わさずに横を通り過ぎてゆく。

〇〇:まだダメかー......早いとこなんとかしないとな....

蓮加との関係は未だ険悪。そうこうしてるうちにも修学旅行が近づいていた。

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坂乃高校

教師:・・であるからして....

〇〇:.....

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凡豪の鐘 #36

凡豪の鐘 #36

〇〇:ただいま。

美月:ただいまじゃないよ! また勝手に帰って!

〇〇:いいだろー。台本書くから許せって.....

美月:あれ?なんか元気ない?

〇〇:ん?.....美月もよく気づくなぁ.....実はな?

〜〜

美月:た、退部!?

〇〇:うん。後で職員室行って聞いてきたけど、退部届出されたって。.......はぁ.....あいつ何考えてんだよ...

美月:た、確かに文芸部入ってなく

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凡豪の鐘 #37

凡豪の鐘 #37

律:.....なんだってんだよ、急に泣き出して笑

〇〇:うっせ....

修学旅行の最初の行事は昼食。昼食会場に向かう間も、〇〇は東京に着いた瞬間泣いてしまった事を揶揄われていた。

美月:あんなに楽しくなーい、とか言ってたのに懐かしくなっちゃった?笑

〇〇:あー、うっさいうっさい!あくびが出ただけだ!

美月:それにしては涙の量が多かったけどなぁ....

〇〇:デカめのあくびだ!

美波:

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