ヤンデレVSツンデレ3

「先輩どうしたんだろう、心配だな…」
 
 先輩が通るであろう道で待ち伏せて十数分。いつもであれば、すでにでに出会えている筈なのに……。

「まだ……、かなぁ……」

 その時だった。少し離れた位置から聞こえてくる二つの足音に、旭は曲がり角から少し顔を出して覗き込む。

「あれはぁ……、先輩と誰だろう? まぁ、いっか!」
 
 そうしていつも通りに曲がり角を曲がる。
 
「あっ! 先輩、奇遇っすね!」

 

「それでね北斗君。今度おう……」

「あっ! 先輩、奇遇っすね!」

やべぇよ。ただやばい、と。
俺こと、神恵田 北斗は自分の良くない頭をひたすらに回転させる。

「あなた、だれ?」

「貴方こそ誰っすか!」

「えぇ……、とっ」

 どうするどうする!? ここで八雲さんと北見沢が出会うのは非常にまずい。

「私? 私は八雲 千歳っていうの、北斗君の……、か、の、じょ?」

ブフゥッ! え、俺聞いてない、聞いてないよ!? と、俺は内心で焦ることしかできない。

「えっ!? 先輩彼女いたんっすか! マジっすか!!!」

 大げさ驚いて見せる旭に、内心少しイラっとしつつも現状をどうにか平和的に……。

「え、超意外なんすけど。あ、ちな私は北見沢 旭っていうっす。こんな超オタクで、冴えない先輩のどこがよかったんですか?」

「あら。そんなことも分からないの?」
 
 言い争う二人を遠目に眺めながら、当事者であるはずの俺は『こんな展開ラノベで見たなぁ~』と、どこか他人ごとに思う事しか出来なかった。

 



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