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前書きが素敵な僕の好きな本

こんにちは。
今回は、僕の好きな本の紹介をしたいと思います。

僕は学生時代、天文学を専攻していました。
大学に入るまで天文学に一切興味がありませんでしたが、天文学の教授の講義を聴いて、「なんて面白い学問なんだ!」と心を打たれたことを今でも思い出します。
天文学研究室に配属されてからも、今までの人生の中で一番といってもよいほど勉強し、本を読み、研究会にも足を運んだりしました。
その時間は間違いなく今の僕の一部として生きていることは間違いありません。

そんなときに出会った本が、僕が今回紹介する本『すごい宇宙講義』です。

この本は多田将さんという高エネルギー加速器研究機構で働く方が一般公開講座で話した内容をまとめて文章にした本です。
この本を読むと、ブラックホールとか宇宙の創世について、とてもわかりやすく学ぶことができます。具体的な内容については、今回僕が話したいことではないので割愛します。
さて、僕がこの本を初めて手にして前書きを読み始めたとき、「この本すごいぞ!」ととても衝撃的だったのを覚えています。
というのも、僕が天文学という学問に憑りつかれた魅力とか、科学に対する僕の考え方をすべて言葉として表現してくれているようだったからです。
この本の前書きに書かれていることは、天文学という部分的な学問だけに当てはまる考え方ではなく、人が好奇心を持って人生を豊かに過ごしていくために必要な考え方なのかなと信じております。

ここでは少しだけ、そんな前書きを紹介したいと思います。

人間の思考そのものが魅力

多田さんは前書きではじめにこんなことをおっしゃっています。

じつは、僕は本書の中で、宇宙そのものの魅力ではなく、宇宙について人間がいかに考えてきたか、ということをお伝えしたいと思っているのです。

人間は宇宙について様々なことを理解してきました。
ところで、皆さんは宇宙に対する我々の知識はいかにして獲得したのか考えたことはあるでしょうか。
天文学は他の科学的学問と一線を画すことがあり、それは『実際に行って現物を確認したりできない』ことです。
天文学の知識の大半は星や銀河といった天体から来た光の情報を基に得た知識になります。
太陽の構成物質から宇宙の年齢に至るまで光なしでは私たちが住んでいる宇宙に対する理解は得られなかったことでしょう。

多田さんはそうやって得られた知識そのものではなく、その知識を獲得するために人間がどのように考え、またどうやって証明してきたのかというプロセスが本質的におもしろいところだとおっしゃっているのです。
僕が天文学の講義を初めて聴いたときに感じたこともまさにこのことでした。
天文学とは、ある種の推理小説みたいなもので、天体の光という証拠を手掛かりに宇宙の姿という犯人を特定していくようなものです。
僕は推理小説の物語の犯人がわかったからといって満足はしません。犯人に至った経緯が物語の面白さだからです。
そんな当たり前のようなことに思える大事なことに気づかされた本でした。

過程は積み重なり新たな結果の糧になる

また、多田さんは過程が大事な理由として、以下のようなことをおっしゃっています。

科学においては、これまで正しいとされていたことが、どんどん書き換わっていくことが、むしろ自然なのです。
ですから、この科学の世界では、本当に価値のあることは、知識なり情報なりの「結果」ではなく、それらをいかにして得たのかという「過程」のほうなのです。
結果は書き換わってしまえばおしまいですが、過程はそうではありません。そこで得られた「考え方」「やり方」は、無駄になることなく、それらを踏まえて再び考えることで、新たな「考え方」や「やり方」に発展させることができるのです。
科学においては、結果よりも過程のほうが魅力的で貴重なのです。

宇宙に対する私たちの知識は必ずしも正しいとは限りません。
実は間違っていて、結果が書き換わることは当たり前のように起こります。
例えば、宇宙の年齢は従来137億年と考えられていたものが、138億年と修正されたことがありました。

この一億年を修正するに至る過程や人間の努力はまさにロマンでした!
学校現場で行われているような受け身で知識を埋め込むだけの詰め込み教育にまったく意味がないことを教えてくれます。

また、過程を知るというのは自分で新たな過程を生み出すためにも必要なことです。
過程を知るということは自分が物語の作者になるチャンスにもなるのです。
自分が当事者になった気落ちで思いを巡らせれば、さらに過程を考えることに対して面白さを感じることができるようになるのではないでしょうか。
「科学的思考力」や「プログラミング的思考力」など、何かにつけて思考力が大事にされる今だからこそ、こういった過程を楽しむことの大切さを学べるような機会が増えていけばいいなと思います。

まとめ

いろんな情報をスマホ一つで手に入れることができる昨今、知識だけをとにかく入れるだけの状態から脱することの大切さをこの本は教えてくれます。
本を読むにしても「自分なら…」と思考を巡らし、自分の内に秘める好奇心を掻き立てることができるようになると、人生がずっと豊かになると思います。
興味を持った方は『すごい宇宙講義』もぜひ読んでみてくださいね!
最後までお読みいただきありがとうございました。

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