「スポーツ×テクノロジー」でアスリートにお金が集まる仕組みづくりを


日本のスポーツはキャッシュ創出力が相対的に低い

米プロバスケットボール選手のNBAドラフトで日本人初のドラフト1位指名を受けた八村塁選手の年俸は、初年度から4億円を超えると言われている。NBAの平均年俸は7億と、あらゆるスポーツリーグの中でもトップクラスである。一方、日本のBリーグでは、最高でも1億円前後の年俸に留まっている。

この差はどこから生まれているのだろうか?

日本のバスケットの質の高さは、世界ランキングや世界大会での活躍が証明している。
しかし、海外スポーツと比較すると、「放映権収入」「マッチデー収入」「スポンサー収入」のようなビジネス因度が高度に設計されており、この差が年俸の差に表れていることがわかる。NBAの背景には高額年俸を可能にする年間3000億円を超える放映権収益が存在する。

今後、日本スポーツには、ビジネスとしてキャッシュの創出力を高め、生み出された収益を、スポーツの感動の源泉であるヒト(選手を初め、コーチやスタッフ等)と、スポーツインフラ(スタジアム、スポーツ産業を支えるシステム)に再投資することによって、日本のスポーツ全体の価値を高めるシステムの構築が求められる。
これが達成できなければ、将来アスリートを夢見る学生達が「頑張っても年俸に反映されない」と考え、スポーツ界がどんどん夢のない世界になり、日本のスポーツは弱くなっていく。


スポーツのキャッシュ創出力を高める為には、どうすればいいのか?
鍵となる3つのトレンドを考察していきたい。


①モバイルファーストコンテンツ

スマホの普及により、メディア経由のスポーツ観戦はテレビからモバイルへと変わっている。加えて、視聴者の感染形態にも変化が見られる。時間を選ばずスポーツが見れる一方で、他のエンタメとの消費時間のバランスを考えるようになった。例えば、映画をネットフリックスでじっくり見て、スポーツはハイライトで楽しむといった若者も増えてきている。
 また、5Gの普及により、視聴者の行動や、コンテンツの特性は更に進化すると見られている。試合経過が超高速で伝わり、リアルタイムでの伝達出来れば、「スポーツの賭け事」がさらに普及し、メディアや決済手段の進化が見込まれる。
 重要なのは、コンテンツ側もトレンドを素早くキャッチアップし、コンテンツを進化させ続けて戦略的に視聴者を獲得していく努力をすることである。


➁スマートスタジアム

海外の最新スタジアムでは、チケット購入から、好みのタイミングでのリプレイ、試合日の飲食予約や座席での受け取りまで、観戦前、中、後の一気通貫の体験を、スマホを通じて出来るのが当たり前になってきている。
このような、スタジアムのスマート化を推進するには、施設構造や管理システムと連動させてスタジアムをアップデートさせていく必要がある。いくら飲食サービスの手配がスマホで実現できても、キッチンで火が使えなかったり、膨大に増えるオーダーを見越した飲食店の配置や裏方のオペレーション準備が出来ていなければ成立しないためである。


➂ファンリレーションシップマネジメント

ビジネスにおいて、顧客との関係構築はCRM(customer relationship management)と呼ばれ、スポーツにおいてはFRM(fan relationship management)と表現される。
世界中のスポーツチームが、テクノロジーによってFRMへ注力している。
スペインのサッカーチームレアルマドリードは、その代表格である。なぜなら、彼らのファンの95%はスペイン国外の人であり、彼らからのマネタイズがクラブの利益に直結するからである。顧客のIDでの一元管理、自社で用意したタッチポイントに来訪する
膨大な顧客属性データを解析するといったデジタルマーケティングの仕組みは、彼らにとっては必須の施策である。リーグやチームにとって、ファンとの関係は経営に直接影響を与える為、FRMへの着手は収益化において最優先事項だろう。その手法として、通信会社など顧客基盤をもつプレイヤーとの連携も期待されている。

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