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旧友・恩師に出逢う旅4

 旅も終盤。福島県に移り住んだ北大時代の恩師の家に滞在させてもらっています。


 動物行動学者の恩師は、オオカミと犬、サル、トドなどの海生ほ乳類を研究してきました。僕自身は大学入学後に手に取った北大出身の学者の著書がきっかけで、クジラに興味を持つようになり、大学4年時には当時、三陸沖で行われていたコビレゴンドウの調査捕鯨の水産庁調査員として乗船。捕獲されたクジラの体表に付いた平行傷(雄が持つ牙の幅)の多さが、その個体が持つ睾丸の重さと比例することから、繁殖をめぐる雄同士の闘争と根拠づけた科学論文をまとめました。
 2011年3月11日に起きた東日本大震災で、調査捕鯨の拠点だった宮城県牡鹿町(現石巻市)の鮎川港は壊滅状態に。震災10年を経た2年前に被災地を訪れた際には、一変した港周辺の景色を見て、改めて被害の甚大さに心を痛めました。
 大学の恩師は「被災地の復興の一助になれば」と4年前、福島第一原発から10キロほど離れた南相馬市小高区の「ポツンと一軒家」を終の棲家と定め、北海道から移り住みました。まだ帰還困難地域の指定解除からまもない時期で、住民のほとんどが戻って来ていない状態でした。
 はじめは以前から飼っていた黒毛の秋田犬オス「サンボ」との1人1匹暮らしから生活を始めました。

 その後、南相馬市に働きかけ、秋田犬の故郷・大館市と交流協定を締結。大館市から譲り受けた秋田犬オス「大馬(だいま=大館+南相馬)」とサンボの2匹は、地域に戻ったお年寄りたちの心の拠り所になっているほか、農作物を食い荒らすイノシシやアライグマを追い払う役目も担い、テレビや新聞のニュースにも取り上げられ、南相馬市では有名人・犬になっています。
 1年前には、サンボと大馬が森の中ではぐれているのを見つけて口にくわえて来た子猿のメス「茶々丸」、今年2月には三重県のブリーダーから購入したグレートピレネーズ(通称・ピレネー犬)のメス「ジュン」も加わり、動物たちは広大な森を庭代わりに自由な生活を満喫しています。


 4年前に亡くなった自分の父と同い年で、まもなく82歳になる今もアクティブに活動する恩師。卒業から四半世紀を経ても、最後の弟子だった自分に目をかけてくれる有り難い存在です。

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