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いまっつの演劇レポートvol.4「さて、どうしましょうか」

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本日は、劇団ホワイトチョコが好き。で長年会計を担当している“いまっつ”こと、今津佑介のコーナーです。
劇団を支える大切な一員であり、記者経験もある今津。
そんな彼に、今回のリーディング公演『カラシニコフ不倫海峡』について、独自の視点でレポートを書いてもらいました!
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「さて、どうしましょうか」

 
公演が急きょ決まり、主宰者に公式noteの連載企画再開を言い渡されて“さてどうしましょうか”。
  上演する朗読劇「カラシニコフ不倫海峡」(坂元裕二作、廣瀬響乃演出)の一節だが、この10文字に筆者は今捕らわれている。通勤中にシナリオを読んだが、ベージをめくるたびに好奇心がかき立てられ、ほっこりしたり、怒りを覚えたり、しまいには目頭を押さえたりと、他の乗客からきっと「情緒不安定」と思われただろう。「この連載で感動の共有を」とひらめいたが、それはネタばらしにつながる。
集客減を招いたら元も子もない。振り出しに戻る。
───“さて、本当にどうしましょうか”。


【女性の記録と記憶を主眼】

主宰の後藤(奥)と廣瀬(手前)

 そもそも劇団ホワイトチョコが好き。とは何か。旗揚げ公演の「LOVE LOVELOVE」(2012年)から12年、干支(えと)が一回りした。学生や駆け出しの社会人らが意気投合し、勢いに任せて結成したと記憶している。一例として、このメンバーの中でホワイトチョコをこよなく愛する者は一人もいない。劇団名の由来は“諸説”あるが、悪く言えばいい加減、適当か。
 ただ、ホワチョコには一貫してこだわっていることがある。それは今を生きる女性の記録と記憶だ。
初舞台を皮切りに、2014年の「捨てたい―あなたの捨てたいものはなんですか」(小野諭佳梨作、演出)、15年と22年の「まほろば」(蓬莱竜太作、廣瀬響乃演出)、19年の「遭難、」(本谷有希子作、廣瀬響乃演出)などはいずれも等身大の女性を描いている。
  中でも同年の「不帰の初恋、海老名SA」は今回同様、坂元氏の作品を当劇団主宰者の一人・廣瀬が演出したが、登場人物はオリジナルが男女ペアだったのに対し、廣瀬は女性同士にアレンジ。「“日常”を切り取り、見つめ直すことで、身近な生活の中につながる新たな視点を探る」と劇団の公式ホームページに掲載しているが、こうした妥協を許さない芝居づくりがホワチョコの知名度を上げてきた。


【“彼の物語”を打ち破れ】
 
歴史を英訳すればhistoryだが、その単語を分解したら“his”と“story”に。すなわち“彼の物語”。これまで男性だけがクローズアップされ、それ以外のストーリーが埋もれていたことに改めて気付かされる。
国際社会でジェンダー平等の実現が叫ばれているが、日本のジェンダーギャップ指数は調査対象の146カ国中、118位。先進7カ国の中で断トツの最下位だ(いずれも24年のデータ)。ホワチョコによる掘り起こしは今後、ますます求められる。


【酸いも甘いも味わった中】

2019年「不帰の初恋、海老名SA」にて

 それぞれ齢を重ね、筆者も不惑の年に。酸いも甘いも味わった中で質の高い演技を見せられる。その一方で、守備が攻撃を上回り、ホワチョコならではの斬新さが失われていなければとの懸念もある。ここでまた“さてどうしましょうか”。いや、もう動き出している。やるしかない。ありのままの姿を観客にさらけ出し、感想という名の“審判”を受ける。
演劇は実にシビアだとつくづく思う。それなのに筆者がホワチョコにどっぷり浸かっているのは、打ち上げでメンバーと美酒に酔いしれることかも。

“さて、宴席をどうしましょうか”。


最後まで読んでいただきまして誠にありがとうございました。
劇団ホワイトチョコが好き。では10月12日13日に公演を予定しています。よろしければHPもチェックしてみてくださいね。


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