見出し画像

森美術館 STARS展のモヤモヤ

新型コロナの影響で開催が遅れていた森美術館のスターズ展に行ってきました。(年間パスは、休館中だったぶんを延長してもらえました。)

本来であれば同じタイミングでオリンピックも開催されているはずでした。

オリンピックを目当てに海外から来た方々に日本の現代アーティストの代表だけでも覚えて帰ってもらうような企画になっていたはずだと思います。

画像1

会期がずれたので先行するかたちになりましたが雑誌『Pen』も『Casa Brutus』も同じ6人のスターを特集をする、お祭りのような企画展になるはずでした。

しかし、今回、1回目の訪問を終えて、なんだかモヤモヤするのです。(もちろん2回以上行きますが。)皆さん、大満足して帰っているのでしょうか。

1.村上隆

画像3

入場して最初に目にはいるのが村上隆さんの代表作であるフィギアKOKO。

KOKOもマイロンサムカウボーイも、日本の現代アート史においてはエポックメーキングな作品であり、あらためて実物が観られたのはよかったです。

画像4

しかし、この巨大なホワイトキューブの両脇にあるステンレス壁に張り付けられた壁画と真ん中の空間をフィギアで埋める・・・というのが、どうも単調に思えてしまいました。

画像5

2.リー・ウーファン

実は今回の展示で奈良美智さんに並んですごくよかったのがリー・ウーファンさん。

会場に敷き詰められた砂利。モノ派を体感できる部屋。村上隆さんの動に対していっきに静の部屋となります。

画像6

ガラスからミシミシ音が聞こえてきそうな、そんな静かさです。

なお、今回の展示は入場時間制になっているので、時間と時間のつなぎ目でどかっと人が押し寄せる波があります。より有名な草間さん、奈良さんを求める人たちは、この良き部屋をスルーしていってしまいました。

3.宮島達男

リー・ウーファンさんの静に続く、静。直島の家プロジェクトでみた、あのデジタル数値がカウントをする暗い空間に導かれます。

写真にはうまく映らないですね。宮島さんのデジタル数値の作品、常にかっこいいんです。カウントするスピードに設定した人の想いがこもっている。デジタルの数値が並べられただけですが不思議とぬくもりを感じます。

4.草間彌生

草間彌生さんは言うまでもなく日本を代表するスターです。

画像7

が、しかし、何と言いますか、草間さんだけでこの森美術館を埋め尽くす個展ができるわけなので、物足りなさをどうしても感じてしまいます。(村上隆さんのコーナーに感じるモヤモヤもそれからきていますね。)

5.奈良美智

撮影不可の各アーティストの年表コーナーを経て、奈良美智さんのコーナーに入ります。まずは奈良さんを形作ったとされる音楽CDのジャケットや小物がたくさん並んでいる部屋です。

画像8

こういうポップカルチャーがあの少女の作風に反映されているんだと、川崎市の藤子不二雄ミュージアムの作家の部屋を彷彿とさせる空間になっています。

画像9

ひとつ隣の部屋にいくと、奈良美智ワールドです。アメリカのポップミュージックがこの小さな部屋から聞こえてきて、奈良さんを形づくった音楽たちとの接続を感じることができます。

画像10

2020年の新作だそうです。いつものキリッとした目ではなく、髪の毛に様々な色が混じっていて、穏やかな様子。いつまでも眺めていたくなる作品。

6.杉本博司

画像11

最後は、杉本博司さんのコーナー。代表的な写真作品の紹介に続き、江之浦測候所ができるまでを、いろいろな言葉でつづった映像が流されている部屋にたどり着きます。

以上、振り返ってみると、やっぱりこれだけのスターが集まっていて、素晴らしい展示だったんじゃないかと思いました。

モヤモヤの原因は各アーティストが好きすぎるゆえの物足りなさですね。幕の内弁当のような、1品1品に深みがないのか・・・。

あとは、オリンピックとタイミングを合わせて日本の現代アートシーンを紹介するのであれば、できれば、次のスターたちも待ってるぜっていうところを、小出しにでも紹介して欲しかったなと思いました。

今回のスターはスターで間違いないですが、森美術館だからこそ、やはり次の世代に繋いでもらいたいところです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?