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まだ少し臆病だけれど、私の全てで愛させてくれ。
適当に扱いたくなくて、適当に扱われたくなくて、付き合ってほしいと声をかけた。
何のために、どうして。と聞かれたら答えられないけれど、それが全てです。
大学4年になる年の3月、緊急事態宣言が発令されました。
その少し前から、とても大事な彼がいました。
恋人ではない、それでも誰よりも大事な人でした。
始まりは、誰と観ようか迷ってしまうくらい、重い映画を一緒に観た時。
言語化が得意で、私とは少し違う言葉遣いをする彼だから、観終わった後に2人でずんと沈んでいったことが心地よかった。
彼のことが大切でたまらないなと気づいたのは、私が泊まりにいった時。
多分見たい映画が一緒で、それを彼の家で一緒に見ようってなったんだったっけ。
DVDをレンタルして、彼の家に行って、でも私の大好きなアーティストの配信ライブがあって、それを一緒に見て、同じ毛布に包まって眠りました。
いいですか、付き合ってないんです。
私は自分から告白する気もない、どうしようもない人間でした。
付き合ってほしいって言って、彼との将来を望むことはできなかったし、
付き合わなくていいからずっと一緒にいようなんて言って、中途半端にすることもできなかった。
だから、ずっと彼からの言葉を待っていました。
結果的には中途半端にしていた気もするけれど。
今更ですが、これは滑稽な話です。どうか笑ってほしい。
しょうもないことをしていた女がここにいると嘲ってほしい。
緊急事態宣言中、彼の家で一緒に暮らしました。
私の大学はリモート授業に切り替わらず、通わねばなりませんでした。
当時実家だった私の家から、大学まで数時間。
しかも中心部の方なので、家族にうつすまいと、
それは建前で彼と一緒に暮らしたくて転がり込みました。
くっついて同じ本を読んだり、音楽を聴いたり、勉強をしたり、映画を観たり、美味しいご飯を食べたり。
これを書くにあたり、当時のXを引っ張り出したのですが、何でお前ら付き合っていないんだ?ってくらいの日々でした。
私は彼のことが大好きで、大切で、ずっと隣で手を取っていたくて一緒にいたけれど、なんの約束もない私たちが一緒にいるのには限界がありました。
名前のない関係に私は不安を覚え、彼に面倒臭いことをたくさん言った。
今思えば、「付き合おう」の一言が言えないばっかりにたくさん傷つけたし、傷つけられたし、傷の舐め合いもしました。
彼との日々を時々思い出しては、彼を適当に扱ったことと、私を適当に扱わせたことをずっと、ずうっと後悔していました。
傷つけることを恐れて、傷つける勇気もないまま結局傷つけて、何者にもなれなかった、何者にもしてあげられなかった自分の弱さをあの日々からずっと突きつけられていました。なんなら突きつけられています。
いつか、綴ったことがあるかもしれないけれど、私は誰かと生きることに対して、途轍もなく臆病です。
私にとって、「付き合おう」と言うことは一緒に生きようということです。
それは、
あなたがダメになってしまった時に、手を引っ張らせてほしいということで、
あなたの幸せそうなその顔を、頬杖をついて眺めさせてほしいということで、
私が生きることと、あなたが生きることを重ねて、許し合いたいということで、
傷つけても、挽回するから信じてほしいという誓いと、
傷つけられても、それでもなお、手を取ることをやめないからという誓いです。
それらを声に出して約束するのがどれほど怖かったか。
ひとりで生きていくことのできない自分と一緒に生きてほしいと、私の弱さを背負わせる訳にはいかなかった。
もう二度と、自分の弱さで大切な人を適当に扱いたくはなかった。
だから、いつまでも自分からは言えなかったし、
付き合ってほしいと言える人の強さが羨ましかった。
最近知り合った、少し生意気な男の子がいます。
ありがとうよりごめんが多くて、弱気な癖に出てくる言葉は強気で、私に嫌われることを恐れていて、私に向ける笑顔が優しくて、頑張り屋さんで、そんなところを尊敬していて、一緒に生きるならこの人と生きてみたいと思う人です。
絶対に適当に扱ってやるもんかと思っていました。
絶対に適当に扱わせてやるもんかとも。
一緒にいる時間がどんどん増えて、
終に、
これ以上、ずっとこのままの距離で一緒に居続けると適当に扱うことになる。私はそんな自分をきっと嫌いになってしまう。私は一生私を許せないかもしれない。というところまできました。
ダメだったら一緒にいることをやめるだけ。
私を適当に扱う人と一緒にいる理由なんてない。
そう思って、告白をしました。
多分、彼は私の恋人になりました。
いやちゃんと恋人なんですけど、そんな特別な感じはしなくてですね。
一緒に過ごす時間は今までと何も変わらないし変えるつもりもないけれど、彼を搾取せず、彼に搾取させていないこの関係を続けられたらと思っています。
そして、
握った彼の手を絶対に離すまいとも思っています。
私の何かを手渡しながら、彼の何かを受け取りながら、
いつか二人でいられなくなるまで、
とびっきりの当たり前を彼と過ごしたいです。
2024.07.20
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