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「い〜れ〜て〜」って言ってごらん?

新年度、新学期が始まって約一ヶ月。
我が家の三男もこの春から高校に入学しました。

一学年320人。地元の中学校の倍の人数。
しかもその高校に同じ中学から進学した子はたったの4人。

小中学校はずっと地元。9年間、なんなら保育時代から一緒の気の知れた友達とワイワイ過ごしてきた三男にとって、ほとんどが知らない子ばかり。
「新しい友達を作る」というのも正直どうしたら良いかわからない。
かなり緊張するようで、この一ヶ月毎日ぐったりして帰ってきていました。

そんな息子を見ていて、随分前にあるお母さんから聞いた経験を思い出しました。
そのお母さんの了承を得て、以前別の媒体のために書いたものを書き下ろしました。

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皆さんがお子さんと公園に行ったとしましょう。
そこでもし、お子さんが公園で遊んでいる子ども達の輪に入りたそうにしているのに入ることができずにいたら、どうしますか?

「い〜れ〜て〜」って言ってごらん。

きっと、そんな風に声をかけるのではないでしょうか?

海斗君(仮名)のママも公園で友達の砂遊びの輪に入りたそうにしながらなかなか入れないでいる海斗君に、 声をかけました。

「ねえ、海斗。『い~れ~て~』って言ってごらん?」

でも、海斗君は聞こえないふりをしてそのまま一人で砂遊びをしていました。

「『い〜れ〜て』って言ってごらんよ。きっと一緒に遊んでくれるよ。」お母さんはもう一度言ってみました。

ところが、海斗君は 「やだ!」と言って、ブランコの方へ走って行ってしまいました。

「海斗ももうちょっと積極的だったらいいのに。。」
お母さんは、子ども達の輪になかなか自分から入っていけない我が子のことをちょっと歯がゆく思ったそうです。

そして、別のある日。

河川敷の遊歩道を海斗君とお母さんが散歩していると、芝生で数人の女性達が輪になってバレーボールを楽しんでいました。

「あら、見て。バレーボールしてる。楽しそうね~。」
お母さんが何気なくそう言うと、それを聞いた海斗君がこう言いました。

「ママも『い〜れ〜て〜』って言えば?」

その言葉にお母さんは思わず、
「そんなことできるわけないでしょ!」

とちょっと大きな声で海斗君に言いました。そして、ハッとしました。

息子に公園で同じことを言ってた自分。
そのたびにきっと息子も心の中で「そんなことできない」と思っていたのでは。。。 

大人の自分が見知らぬ人達に仲間に入れてもらうのと同じくらい、
息子も公園の知らない子どもの輪に入ることはとても勇気がいること。

「『いれて』って言えばいい。 言うのは簡単だけど、
実際はどんなに難しいことかがわかり、心が掴まれたような気持ちがしました」

と、海斗君のお母さんは少し恥ずかしそうに笑いました。
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毎日を楽しく過ごしてほしい。

そんな思いからついついあれこれアドバイスしてしまいがちですが、
子どもたちはあれこれ考えたり思ったりしながら頑張っている。

だから、まずは子どもがほっとしてゆっくり休める環境を整え、
そして、子どもの話に耳を傾けることに注力したい。

高校生の息子を見ながらそんなことを思ったのでした。