お金を貯めると言って貯められない人への支援は?(支援力UPクイズ8)
【支援力UPクイズ8】お金を貯めたいと言いつつ、持っていると使ってしまう人に対しての、1週間のやりくり支援は?ということで、最初から1番がダントツ1位でしたね。他の意見に入れてしまった人は、躊躇したのではないでしょうか?
まず状況をイメージしたいと思います。
この人は、1週間分のお金を手にしていますが、毎週、何の理由か、お金を貯めると言っているのでしょうね。何か大きなものを買いたいのでしょうか?お金が少なくなってきているのでしょうか?貯めるということで職員からがんばっていると見られたいのでしょうか?
貯めたいけど、持っていると使うので、貯まりません。気持ちは貯めようとしていますね。でも、手にすると無理なようです。
この人は自分でできると思っているのです。
支援は不要と考えています。
自分が困っていることに、うっすら気づいているのかもしれません。でも、がんばることでできると信じているようです。
では、解説をしていきましょう!
1.貯めたい金額を最初に差し引く提案をする
状況を想像してみましょう。
貯めたいお金を最初に差し引く提案をしているのですから、一度お金を手にしています。その人は、いつもと同じ状況で、手元にあるお金に対し、残すことができると信じています。ですから、自分でがんばろうとします。その、がんばろうとしている人に対して、「(残せないのだから)差し引こう」と提案をするのは支援者です。
ご本人の気持ちがそこにない人に、提案をして「そうだね」と納得し、今持っているお金を差し引き、どこかに貯めておくというのは、なかなか難しいことです。つまり、自分のお金が自分から奪われるような不安を抱えてしまうからです。
手放したくはないので「こんどこそ、がんばる!」など、ご本人は、言うでしょうし、「やっぱりできなかったね」という結果になります。
できないのは、自分の努力がたりないからだと、もっともっと全額を手に入れることに固執しかねません。
この支援は、やりたくなってしまいますが、ご本人不在になります。
SOSを感じきっていないご本人と、よかれと思ってするおせっかいな支援者の構図です。
提案型ではありますが、支援者の顔色を見て、支援者のためにがまんして、差し引くことに賛成したとしても、納得していない分、あとで、「自分はできるのに、支援者に言われたからしかたなくしている」と、支援者に管理されているかのよう思ってしまうことにもなりかねない方法です。
もしそういう方向にするのであれば、ゆくゆくは銀行から降ろす額を自分で決めて減額できるよう考えられるとよいと思いますので、最初にやる支援ではないのです。
2.自分が残したい額を残せなかったら、怒る
その人がうそを言っているような感覚に陥るのは支援者です。
だから、叱ってしまうのでしょう。
実はその人は、うそを言っているわけではありません。
その時は、貯める・貯められると思ったのです。
でも、もともと手元にあるお金を残して使うというのは、知的障害がある人には、かなり難しい方法です。
ですから、一人ではできないことも多く、怒ったらできるようになるということではないのです。
どうやったら残すような使い方ができるのか?を支援者は説明できますか?もし、「持っているお金を残すためのつかい方」でもあるのであれば、その人にその方法を伝えることです。
怒ることによって、正しい方法を考えだし、実行できるものでありませんし、事後に支援者が動くのは、効果的ではありません。
3.貯めるのはできないこととあきらめてもらう
実は、私の正解はこれです。
私自身がいろいろやってきて、失敗もしつつ、ここまで行きつきました(笑)
支援者は、できないことに対して支援をします。そこが基本です。ですから、まず、その人に、「自分は持っていると使い切ってしまい、貯めることができない」と知っていただかないと、支援が始まりません。
もともとできると思っているわけですから、自分ができないことを支援者に支援してもらう必要性を感じていただかなければ、支援を受けようとは思わないのです。
その際、できないことが悪いわけではなく、できないことをがんばっていた自分を感じていただき、その上でどんな支援があるかを提案していく形になります。
つまり、支援者からは、まず、自分一人ではできないことであると一旦あきらめていただき、いままで一人でがんばろうとしていたことをねぎらい、これからは、支援が入ればできる(貯められる)ことだから手伝いましょうか?と持ち掛けることです。
そこから、積極的にご自身の意見も言えて、支援者とご本人の役割も明確になっていき、結果として今まで以上の努力という形ではない、できることをしつつ、貯めることにシフトできるのです。
もちろん、自尊心を傷つけないよう、できないことではなく、できることを確認してご自身のしたいことの実現のために、夢を語り前に進むことです。
実際には、何を買うのか?
そのために何か月かけて、いくらずつ貯めるのか?
貯めるために何をするか?
などを話し合って、その人が実現したいことを実現するために、支援者が介入しつつ、貯めていきましょう!
4.買うものをがまんするように話す
残らないのは、買いすぎであるというイメージで、買うものを減らせば残るよね?というアドバイス。
ありがちですね。
支援者は、「残らない=買いすぎ」と思っているようですね。
もともと、使ってしまう人に、自分で自分をコントロールをすることは、ハードルが高いのです。
持っていてがまんをするというあいまいな方法は、精神論です。
「がまん」というやり方は、知的障害がなくても、なかなかできないことであると思うのですが、いかがでしょうか?
不安なく生活をしてこそ、その人のできることが発揮できるというものです。
5.おわりに
持っていると使ってしまうとイメージするのは支援者です。
それをご本人の強みという部分から見ると、持っているお金は全部使えるという視点になります。
実際は、持っているお金を全部使えるのであれば、銀行に残しておく提案や、不安であれば、1の最初に差し引いてという方法も有効になっていきます。
あくまでも3の自分ができないことと知っていただいてから、1につながることです。
そこを飛ばして、1を最初にやろうとすると、「管理してほしくない」「自分のお金なのになんで口出しをするのか?」という感情が強くなりやすいので、お気をつけください。
お金のやりくり支援は、どんどん、必要な支援になってきています。
ご自身のお金ですから何に使ってもよいことが前提となります。でも、計画的には使えない人も多いので、権利擁護事業などの金銭管理サービスも使いますが、そのうえで、日々のやりくりの支援があるともっときめ細やかな支援となります。
お金というデリケートな部分ですので、自分のものをとられるのではないか?との不安を持ちやすく、グループホームや相談支援の仕事をされているか職員は、相手から頼られるような、いわば、待ちの姿勢が大切だと思います。
支援は長く続きます。
心配したとしても、支援者の思い通りには行きません。
繰り返し、同じ支援や切り口を変えた支援をし続けることにもなります。
ご本人にとって心地よい状態を生み出し、隠し事なしのオープンに相談される支援者をめざしましょう!
なお、特定非営利活動法人サポートひろがりでは、利用者の皆さんのお金の勉強会の見学会を開催しております。また、やりくり支援ができるようになりたい方へのセミナーも今後開始する予定です。情報は、メルマガ「ひろがり通信」からも流していく予定です。ご利用ください。
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