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作:みそ


大きな大きな柱がある。柱は長くて、太くて硬い。柱は白くて、古くて冷たい。柱は静かで、きっと重い。そんな柱がここにある。

柱はよく外を見ている。見ていたって何もないけど、ただ夕日が沈むのを見ている。そして月が昇ってくると、柱はすぐ眠たくなる。しばらくウトウトとしたのち、柱はついに眠ってしまう。眠る時はもちろん横になる。周りの柱がこの大きな柱の寝姿を覗き込むたび、天井がグワグワとたわむ。

柱が目を覚ました頃には、もう太陽は昇っている。柱はゆっくりと起き上がり、背筋を伸ばす。柱はまた外を見ているし、周りの柱はこの大きな柱をチラチラと見ている。太陽は昇り続け、とうとう柱と同じ高さまでやってきた。柱は太陽を見ている。眠たくないので、太陽を見ている。

太陽が柱の高さでずいぶん長いこと止まっていると、とうとう月が昇ってきてしまった。周りの柱はそれぞれ大きな柱を見たり、太陽を見たり、昇る月を見たりとバラバラだ。こんなことは今までなかった、太陽にも月にも、周りの柱にも。ただこの大きな柱だけはいつものように太陽を見ている。

月はあっという間に周りの柱たちの高さを超え、グングンと太陽に迫っている。太陽はまだ動かないので、もしかするとぶつかってしまうかもしれない。大きな柱はまだ、ただ太陽を見ている。そしてついに月が柱の目の前にたどり着いたとき、世界は突然夜に包まれた。暗くて広くて、寒い夜に包まれた。

柱の目の前には今、黒い太陽が輝いている。柱は困惑していた。黒い太陽が左右に揺れるのを見ながら、柱は少しずつ眠たくなってきた。周りの柱も黒い太陽を見ていたので、天井がギシギシとうなった。その直後、大きな柱は倒れてしまった。大きな音を立て、無数のヒビが入り、ボロボロと崩れながら。地面を揺らし、粉塵を巻き上げ、ついにはコナゴナになりながら。大きな柱は倒れてしまった。黒い太陽が小さく円を描いて動いているが、もう誰もそれを見ていない。周りの柱はあの大きな柱の亡骸に近づき、今まで支えてきた屋根が壊れるのも全く気に留めることなくむせび泣いた。立ち込める土埃はゆっくりと空へ昇り、黒い太陽に吸い込まれていく。小さな柱たちは涙が枯れるまで泣き、そして皆で一斉に眠った。小さな柱たちは初めて眠った。皆が大好きだったあの大きな柱はもう壊れてしまったのだ。地面にはこれほどの瓦礫が積もっているのに、空にはまるで初めからそうだったかのように、当たり前の顔をした夜がある。この夜がいつまで続くのかはわからないけれど、小さな柱たちは朝がくればきっと目覚めるだろう。黒い太陽は食事を終え、ゆっくりと沈んでいった。

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