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リレー小説 No.10 『赤くない赤鉛筆・チカチカ』

こんにちは、ギギです。リレー小説No.10の担当になりましたので、小説とそれに対する振り返りを書かせて頂きます。

今までのリレー小説はこちらです。

テーマ: 赤くない赤鉛筆・チカチカ

執筆時期: 2021/1/31 ~ 2021/2/13

鉛筆の持ち手が黒色だから使ったのに、引かれた線は赤色だった。
そんな、稀有で言葉に窮する落胆があった。
どちらでも文字や絵は書ける。線は努力とともにいくらか整ってもいくだろう。
でも、違うのだ。
新卒二年目のある夏の夜、僕は自身の描いている軌跡が赤い事に気づいた。
そして、そんな折にふらりと寄ったバーで、黒い軌跡を描くあなたと出会った。
初めは憧れだった。
僕が描きたい軌跡を描いているあなたに近づきたかった。
だって、赤よりも黒の方が芯が硬そうでかっこいい。
少しずつあなたの言動や考えを真似れば僕が描く軌跡は黒に近づくと思った。
だが、いつまで経っても僕の描く軌跡は赤いままなのだ。
僕とあなたの違いはどこにあるのだろうか...
少しでも近づくために、バーにいる時の姿勢にも真似てみた。ダメだった。どんなに頑張っても、使っているペンでは、あの黒く美しい線が引けなかった。
あるとき、テレビで、静動脈に流れている血の色が赤黒いことを知った。
血は苦手で、見るとチカチカしてくるけど、僕は、あなたが使っている黒に、それが似ていると感じた。
赤とか黒とか赤黒いとか、色彩の差にめまいがしてくる。
どうしようもなくなった僕は、恥も外聞もかなぐって悩みをそのままあなたに伝えた。
あなたはほろ酔い姿まで真似し始めた時はどうしようかと思ったなんてひとしきり笑った後、
恥ずかしさに沈む僕に「昔のわたしとそっくりだ」なんてことを伝えてくる。
そんなことはないとムキになってからの話は、僕がただただ浅はかだったことに気づかせてくれた。
僕は自分の軌跡を今に見て、あなたの血の滲むような努力と時間によって変化した過去の軌跡と比べていた。
僕は過去のあなたの軌跡を見てただただ驚いた。
今あなたが引いている軌跡とは似ても似つかない歪な曲線。
線の太さも均一ではなく方々に飛び散ったような跡もあった。
これがあなたが今まで描いてきた軌跡なのだと改めて気づかされた。
僕は僕のやり方で軌跡を描こう。
例えそれが黒い軌跡に近づかなくても僕だけの軌跡を描いていこう。
誰の為でもない僕だけのために...
~完~

感想など

鉛筆の持ち手が黒色だから使ったのに、引かれた線は赤色だった。

こんな感じで始まる本文です。赤ペンだと思ったら黒かった、あんまんだと思ったのに肉まんだった…。500円玉だと思ったら、タイの10バーツで払いかけて焦る。時に現実は、我々の期待を大きく裏切り、稲妻の衝撃の如く我々を驚かせます。

そんな状況に対して、登場人物は

稀有で言葉に窮する落胆があった。

だったり

あなたの言動や考えを真似れば僕が描く軌跡は黒に近づくと思った。

と随分と冷静だなーと感じで

血は苦手で、見るとチカチカしてくるけど、僕は、あなたが使っている黒に、それが似ていると感じた。

こういう流れになっても、物語が淡々と進んでいくのが、意外でした(これもある種の衝撃ですかね…)。

結局、赤くない赤鉛筆って何でしょう…?赤色の芯で手持ち部分が赤色でないか、もしくは物語のように芯が赤いのか。もしかすると、「赤くない赤」鉛筆で考えると…紫みたいな鉛筆になるかもetc…と結局なんだ!みたいな無限ループに入りそうですよね。
ちなみに元ネタはハム太郎です。そこに出てくるトンガリくんというギターリストハムが歌っていた歌の歌詞に「赤くない赤鉛筆のように~」みたいな部分あり、そこから来てます!

はい、なんやかんやで、何が出てくるんだろうと楽しめた作品でした!
ご覧いただきありがとうございます!次回もお楽しみに!

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