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リレー小説 No.9 『底抜けの明るさ・汽車』

 おはこんばんにちは。Team:Clutch のかめです。
 リレー小説 No.9 の記事担当となりましたので、小説とそれに対する振り返りを書かせて頂きます。

本文

執筆時期: 2020/01/04~2020/01/31

「なんて綺麗な青空なの!今日という旅立ちの日にぴったりだわ!」
眼前にはどこまでいっても世界の一部でしかない広がる草原。
これからの未来を見据えると彼女の気持ちは弾むばかりだ。
そう...彼女は今日生まれ育った街を旅立つ。
街の誰にも挨拶はしていない。言葉を交わすと今までの臆病な自分がでてきそうで嫌だったからだ。
そこは、緑色と空色の風景に白いワンピースの彼女がぽつんといるだけだった。ここにきたのは、空から降りてくる汽車を待っているためだった。汽車の旅をしつつ、そこから世界の大きさを実感したい、是非、絵描きである自分がそれをキャンバスに収めたいという夢に心が踊っていた。
ふと、遠くから汽笛の音が聞こえてきた。
彼女がつつがなく乗車手続きを終え、汽車のステップに足をかけた時、最低限の身銭と画材、そして穴あき切符だけがその手元に残っていた。
未来と夢だけが印字された切符。弾む気持ちの原動力。
彼女にとって、切符の意味はそれだけで十分だった。
けれども、そこに振り切るべき鈍色の意味が加わる。
きっかけは、友である女の声。
「逃げるように出ていくのね」と、その女は言った。彼女の背後に影のように立っていた。
友の声によって忘れたかった臆病な自分が顔をだす。
いつまでも悩んでばかりで前に進めなかった自分。
夢ばかり語り行動を起こせなかった自分。
きっと、友にも呆れられていたことだろう。
だが、夢のために今までの自分とは変わると決意したのだ。
背後を振り返って、かつての友や自分と決別する為の一言を発する。
「私、絵描きになるよ。絶対、キャンパスに世界を収めるんだから!」
ようやく思いの丈を声に出すことができた。過去のことが吹っ切れたと言わんばかりの彼女のその表情は、とても輝かしいものだった。
車内で画材を取り出す彼女、窓から見える景色に筆を走らせる。世界の絵描きとしての一歩を踏み出した瞬間だった。

振り返りなど

 最終的に『自身の弱い心に折り合いをつけ、絵かきが一人空飛ぶ汽車で旅を始める』物語となりました。

 私にリレーが回ってきた時、初節と第二節が書かれている状態だったのですが、皆さんはそこまでを読んでどの様に話を繋ぐでしょうか。

 私は、主人公が目を背けようとしている臆病な自分と向き合あえるよう話を繋がなければと思いました。弱さから逃げたままでは、きっと底抜けの明るさとは無縁の臆病とのふたり旅になるでしょう。

 その上で絵描き、空飛ぶ汽車の舞台が用意された時、これらがもたらす視覚的な面白さも織り交ぜたいと思ったわけです。ちょっと変わった、心地よい描写ができそうだと感じたんですよ。

 ということで第三節を書き始めたのですが、二兎を追う者は一兎をも得ずといいますか、これらを混ぜようとして盛大に失敗してしまいました。

 そも空飛ぶ汽車を書こうと思ったら、主人公はもう汽車の旅に出ている事になってしまうのでその時点で臆病な自分との対峙は保留です。
 そして、リレー小説は3人のメンバーが最大2順でまとめ上げるルールなので、旅先での描写をするには節が足りません。

 上手く第一節、第二節の舞台を使わせてもらわないと取り留めのない弱い話になってしまう予感有り。でも雲の上の描写はしたい、揺れる車窓からの風景に想像を巡らせたい。

 そんなこんなで試行錯誤の果てに、脳のバグった私はこう思ったわけです。

 彼女を汽車に乗せて、旅先で臆病な自分と折り合いをつけ、街に戻ってきて、憂いの元凶と対峙すれば良いと。

 一節の間にです。案の定、自分の力量不足と相まって読み手どころが後続メンバーすら理解出来ない文章が出来上がってしまいました。

 自分と後続メンバーの間で、解説、?。解説、?。解説、?なループが生まれ、果てはメンバーが理解に妥協しかけてしまい、悔しいけれどこれはだめだなとなり、結果として本文のような形に書き換えました。

 臆病な自分と向き合あえるよう話を繋ぐという目標の手前、メンバーが節への理解を妥協するというのはもう、大、大、大失敗だったわけでした。

 ただ、試行錯誤の中で下のような個人的に好きな文章も出来上がったりしたのでチャレンジは間違ってなかったです。

 過ごした日々を車窓から見下ろして。思い出はすぐに雲に紛れる。
 思い出の断片は彼女のキャンパスを埋めたが、それもまた現地に残した。
 代謝するように画材を買い替え、随分と見目の変わった道具とともに彼女は今も汽車に乗っている。

 以上になります。
 ではでは、次のリレー小説をお楽しみに。

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