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こんな所にマーケット?動物がもたらす熱狂


・動物雑貨が熱狂する理由 作家の体験談

  
 先日、クリエイターのみやかわさとこさん、鈴木ズコさん、福士悦子さんらとお話をする機会がありました。


(左)みやかわさとこさん:児童書・教科書・絵本・キャラデザインまで幅広く活動中。
(真ん中)福士悦子さん:イラストレーター/雑貨デザイナー。動物やキャラ雑貨を手掛ける。
(右)鈴木ズコさん:西荻窪を愛するイラストレーター。公私共に動物雑貨のイラストを多く手掛ける。

 三人は共通して動物を描いていて、彼女達からその動物雑貨のマーケットが熱いことを聞かされて、気づきがありました。 実は、この動物雑貨のマーケットは細分化されて広がりを見せているんですよね。 それを辿ると、深く人々の心理と紐づいていて面白いのです。SNSの追い風もあって新たなヒットの予感もあります。

  きっかけは、みやかわさんが「つい先日まで鳥フェスへ行って、出品してきたんですよ」の一言。それを聞くなり、福士さんが「今“とり界隈”が凄いんですよ」と言葉を添えた。

  「え?とり界隈?」と僕が言うと、鳥の作品だけを集めたイベントが結構な色々な場所で、行われているのだといいます。実際行くと分かるが鳥のイラストばかりずらりと並んでいるそうで、それをみやかわさんは教えてくれたのです。

  「だから鳥はうらやましいんですよ」と言っていたのは、いつもリスをメインに手がける福士さんで、リスのイベントなどにはよく出展している。こんな鳥の話題に「雀とかもいますか?」と興味津々で、会話に入ってきたのは、鈴木ズコさん。 鈴木さんは鈴木さんで鳥というより、猫をメインに描いているクリエイターです。ただ、動物そのものに深い愛着があって、他の動物も時に手がけ、そのイベントで動物がもたらすファンの力も実感しているようで、それで深い関心を示しているわけです。

 その証拠に、鈴木さんは、自ら個展をやった時の事を語っています。個展期間の半ばで『ねこまつりat湯島』が始まるようにギャラリーが予定を組んでくれたので、ねこまつりが始まったのを機に多くの方が個展に訪れてくれて、猫好きと猫イベントのパワーを感じたと驚いていました。

・動物が細分化されかつイベントが成立

 一方で、みやかわさんは「今週は、パンダのイベントで忙しくなりそうです」と話していて、彼女は逆にどの動物かは絞らないそうです。

 小鳥とハリネズミとフェレット、チンチラ、パンダ、そしてモルモットという具合に多彩に描き、だから様々な動物の情報に関して詳しい。
 それで、ここまで話してきて思うわけです。驚きだなと。その理由は、動物がこれだけ細分化されて、イベントが成立しているという現実です。

 キャラクターグッズというのは世の中に存在して、その数だけイベントは繰り返されているけど、生き物のグッズもそれ相応に存在しているわけなんですよね。しかも、ここ最近はSNSなどで共通の価値観が生まれやすいから、集まりも生まれやすく、イベントが成立するということになるわけです。

 現に福士さんはハリネズミやフェレット等、決まった動物に特化した作家さんに出会うなかで、同じものを手がけている人同士、リツイートしあった事で、それぞれのファンがハシゴで回ってくるという話をしていたのです。

 動物単位で(しかも小さく)コミュニティが形成される、というわけなんです、これは確かに発見ですね。

 加えて、彼女は「もしもこれが、キャラクターだったらある程度、絞られてしまうのだけど、動物モチーフに関して言えば、ファンはいろんな作家さんのグッズを買ってくれるんですよ」と。

 キャラのように固定されていないから、これは動物ならではの特権。確かにそうですね。
 同じ作家さんでも様々なテイストを書き分ける事で、色々買ってもらえるわけです。福士さんもリス然り、様々なテイストで描いていたりします。

・掘り当てれば大ブレイクもあり得る動物市場

 ユニークなのは例えば鳥にしてもモルモットにしても色々柄があるからファンの広がりも大きい。ただ、その分、それらをペットに持つ飼い主の中には「でも、うちの子の雰囲気とは違う」と言って見過ごされそうになることもあるといいます。

 だから、「動物作家さんの中には『その場で塗りますよ』と言って塗る方もいらっしゃるそうですよ。ねっ」と、作家仲間の皆さんから聞いた話として福士さんが話をすると、みやかわさんに話題を振るわけです。

 「イベントや百貨店で、その場で「うちのコ」として、同じ色・柄に着彩するサービスやオーダー受注を行っています(モルモットだけでなく、小鳥やフェレット、犬、猫等、色んな色彩のある動物対象に)」とみやかわさん。

 だから動物系にはキャラクターにはない、独特の要素を持っているから、逆にそれがキャラクターと結びついたら面白くなるのではないかと三人は口を揃えるのです。

 なるほどなあと。お恥ずかしい話、僕は知らなかったのですが、最近「プイプイモルカー」というキャラがブレイクしたそうで、それがそういう要素を取り込んでのヒットかもしれないと。

 モルモットのキャラクターというのが今まで存在しなかったから、テレビなどで放映されることで、影を潜めていたモルモットファンが一気に湧き立つのに合わせて、モルモットを知らなかった人もその良さに気づいて、熱狂が生まれるというわけです。

 またSNSなどの台頭により、同じ価値観である一定のコミュニティが生まれやすいからで、クリエイターにとってはそれが自らの才能に光を当てるきっかけになっています。

 たかが動物、されど動物です。最近は、ペットの多様化が進む世の中であり、認知されていなかった動物が思いがけず、ブレイクするなんてこともあり得そうです。この話、色々応用が効きそうなエピソードだなと思いました。

出典:2021.11.29 145MAGAZINE


ペンは剣より強しと言います。だから本気でここで書く一言、一言で必ず世の中は変わると思っています。そのあたたかなサポートが僕への自信となり、それが世の中を変えていくはずです。