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【TEALABO Channel_07】「いいものは絶対になくならない」土づくりから向き合うお茶づくり-下窪勲製茶 下窪健一郎さん-

鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。

日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから、「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。

第6回は、下窪勲製茶の下窪健一郎さんにお話をお伺いしました。

野球少年がお茶作りを始めるまで

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小学校から大学まで野球に打ち込んだという下窪さん。高校生のときは県大会で優勝するほどの実力で、福岡の大学に進学してからも野球漬けの毎日を送っていました。

「先輩が見えたら必ず挨拶をしないといけなかったし、部活中は水も飲めなかった時代でしたね。」と、野球少年時代のエピソードを懐かしげに話してくださいました。

大学卒業後は、家業であるお茶作りを継ぐために帰ってきます。当初はお茶畑での作業を体力作りの感覚で楽しんでいたそう。そんな下窪さんに心境の変化があったのはお茶の品評会でした。お茶に関する様々な専門用語や先輩たちの会話が飛び交う中、下窪さんは自分の知識の少なさに衝撃を受けました。

当時は、農大(静岡県立農林環境専門職大学)でお茶の栽培・製造を学んできた後継者が多く、下窪さんはさらに不安を感じたそう。お茶のことを学ぶためにもう一度大学へ通い直すことも考えましたが、最終的にはお茶畑で働きながらお茶のことを学ぼうと決心しました。

「他の後継者は、お茶の知識がすでにあるから製造の段階から入っていたけれど、自分は知識がなかったから、現場で働くことから始めた。それが逆によかったと今は思う。」

という言葉が印象的でした。

こうしてお茶作りに一層励むようになった下窪さんですが、現在はどんなことをしているのでしょうか。

「土から作る」お茶作り

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現在、下窪勲製茶が育てているお茶はなんと16種類。しかも品種によって土や肥料、育て方を変えています。下窪さんが特に力を入れているのが「土作り」。試行錯誤しながら肥料を作る過程が好きなのだそう。下窪さんを惹きつけた「土作り」のエピソードをお聞きしました。

下窪さんがお茶作りを始めた頃、視察でぼかし肥料を作ったり、牛糞を混ぜた肥料を作ったりしている農場に行く機会があったそうです。そこでは農作物や、牛などの家畜たちがすくすくと育っていました。その現場を見た下窪さんは、肥料作りに興味を持ち始め、有効活用されていなかった実家の堆肥場で肥料作りをするようになります。

そして数年前に出会ったのが「竹パウダー」。このパウダーを使うことで乳酸菌が作られ、根の張りが良くなったり、お茶の糖度が増したりするのだとか。しかも、自然由来の原料なので環境や人への悪影響もありません。

以前、センチュウという悪い菌の影響を受けて弱っていたお茶畑で、乳酸菌を混ぜた肥料を使ってみたところ、お茶畑の環境がよくなったと嬉しそうに話されていました。お話を聞いているこちらまで嬉しくなりました。

そんな下窪さんは竹パウダーをもっと有効活用できないか日々奮闘されています。

「人によって育て方が違うように、お茶も時期や状態によって肥料や育て方を変えるのは当たり前。基礎はしっかりした上でそれぞれの品種にあった多様なお茶作りをしていきたい。」

と、にこやかながらも熱く話す下窪さんの情熱にこちらも圧倒されました。

兄弟でお茶を作るということ

下窪勲製茶は現在、兄弟で経営をしており、兄である下窪さんは栽培・製造、弟さんは販売を主に行っています。そしてなんと、弟さんは元プロ野球選手。兄弟で会社を経営するのは難しそうですが、実際どうなのか兄弟事情を聴いてみました。

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「経営上の観点から、兄弟で経営するなとは言われていた。でも自分はお茶を作り、弟はお茶を全国各地に広めるという役割を分けているからうまくいっていると思う。弟の知名度には勝てないからね。」

と冗談っぽく言う下窪さん。兄弟で経営を始めた当初はうまくいかないと言われることもあったそうです。ですが、栽培・製造を学んできた下窪さんの技術と、知名度のある弟さんの影響力、この2つが相互に補い合いあっているからこそ、多くのお客さんに商品が届くのだと下窪さんは言います。大人になってもお互いを尊敬し合う兄弟の絆が感じられた瞬間でした。

また、下窪勲製茶ではお茶の販路拡大と同時に、お客さんの信用を失わない販売も模索しています。鹿児島のお茶を広めるのと同じくらい、下窪勲製茶を愛してくださっているお客さんと強い繋がりをもつこともお茶作りには欠かせません。

これからのお茶と人の育て方

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下窪さんが普段、お茶業界に身を置いていて思うこと、それは、挑戦心・向上心を持った作り手で居続けたいし、そういう想いを持つ作り手が増えて欲しいという想いでした。

現在、下窪勲製茶で働くフルスタッフは2人。フルスタッフ以外のスタッフもいますが、決して多いとは言えない人員でお茶作りをされています。それでも製造が滞りなくできているのは、各スタッフが自分の得意分野を見つけて働けているから。下窪さんの奥様もフォロー役として様々なことをサポートしているそうです。得意分野を仕事に生かせると楽しく働くことができそうですね。

そんな素敵な働き方を実践されている下窪勲製茶ですが、

「指示待ちをするのではなく、自ら考えて行動し、自分にしかできない仕事を見つけようとする人間を育てたい。いい物は絶対になくならないから、作り手がもっと情熱をもってお茶作りに取り組めばお茶業界はもっと盛り上がる」

と下窪さんは言います。もしかしたら、これからのお茶業界や鹿児島に必要なのは、技術でも人手でもなく「情熱」なのかもしれません。

生産量や生産者が減っていくお茶業界で、お茶にまっすぐ向き合ってお茶作りをする人たちがいること、下窪さんのような想いを持つ作り手がいること。それを知っているだけで、いつものお茶がちょっぴり特別に感じられる気がしませんか?

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【プロフィール】
下窪 健一郎(しもくぼ けんいちろう) 
有限会社下窪勲製茶 
1975年南九州市頴娃町生まれ。茶農家の2代目の家に生まれ、高校卒業後、福岡県の短大に進学。ホテル業界に就職後、Uターンして茶業者となる。現在は16種の品種を栽培し、土づくりから販売までを手がける。

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