散々と降るさくらよ君は

どうしても伝えたいことがあったんだ。

初めて君を心の中に入れたとき、

どうしようもなく錆びついた心の中に、

急速に電気が流れた様な熱量を感じた。

そうしてボクはまた一つ人間に近くなったこと。

時計の針が進むたびに、

周りの景色や風の匂いが変わっていくことが、

ボクにはどうしても耐えられなかったこと。

どうしても伝えたい言葉がたくさんありすぎて、

こんなにも時間がかかってしまったこと。

不器用にしか伝わらないボクの気持ちや見せたい景色が、

どうしてもごめんねとしか表せないこと。

でも、それでも忘れることでしか成せないことが多くて、

だからボクはそれを歌にしようと思った。

君を思い出す度に巡るのは君の笑顔と、綺麗な眼だけ。

本当にそれだけでよかったんだ。

他の誰にもわからなくとも、

変わらないのがボクだけでなかったことを信じたかったけれど、

そんなことあるはずもなくて。

だから、最期にボクの名前を呼んで欲しい。

空をみてもただ寂しいだけで、

どこにも届かないこの気持ちを、

なんと言いながら現わせばいいのだろうか。

優しくて、もったいほどに思うけれど、

またその色でボクの名前を呼んで欲しいとそう願って、

またボクは君の枯れたあの公園へ、

独り静かに歩いて出向く。

忘れることのないように、

またあの鮮やかな景色を抱いて。

さくら、ボクは君を忘れることはないけれど、

どうか、またいつかこの場所で咲いて欲しい。


あの日、

空を埋め尽くすほどの花びらを、

視界にいれていたボクの眼には、

今は青空と強い陽のひかりがうつっている。



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