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自宅作業に必要なのは、スーパーリラックス状態ではなく、リラックス状態。

 私は、フリーランスの英語講師という仕事柄、生徒と直接接する機会は週15〜20時間程度だが、授業以外の時間は暇というわけではない。

 教材作成、授業準備、添削、過去問研究、自己研鑽、などなど、生徒と対面しない業務の方がむしろ多い。しかし、そのような仕事をわざわざ職場に赴いてまでしなくても済むのも事実で、その点は、毎朝決まった時間に通勤している会社勤めの方より恵まれているのかもしれない。

 実は、このようなワークスタイルになったのは、数年前のことだ。それまで勤めていた大手予備校を辞めてからである。それ以前は、毎朝決まった時間に各校舎に出講し、朝9時から夜9時まで講義をしまくる生活だった。それが、急に今のようなフリーランスのワークスタイルになったものだから、当時は気持ち的にも生活習慣的にも戸惑った。なにせ、授業がない時間帯は家にいるという生活になったのだから。

 もちろん、一日中ボーっとしているわけにはいかない。新たな仕事のための教材作成や授業準備があるのだ。さらに、そのタイミングで、これまでも付き合いのあった出版社から、以前出版した参考書の改訂版を出したいから修正加筆をしてほしいとのオファーを頂いたのだ。教壇に立つよりもパソコンの前で作業をする時間が急増したのである。

 そのように急変した環境に置かれた、当時の私がフリーランス生活初日にしたことは、近所のスタバでコーヒー豆を買って、それを自宅でゆっくり挽きコーヒーを淹れ、そして、ステレオにお気に入りのCDを差し込み、ヘッドフォンで耳を覆い、完全リラックス態勢でパソコンに向かうことだった。コーヒーと音楽に囲まれ、原稿を書くのである。最初の1週間くらいは、それなりに手ごたえがあったと思う。

 が、実はそれは錯覚だった。「いやー、フリーランス最高!自由!コーヒーに音楽でスーパーリラックス!」なんて調子に乗っていたのだが、気づくと何かがおかしい。夕方になり、そろそろ娘を保育園にお迎えに行こうかと思い、作業を中断するときにその日の成果を確認するのだが、思ったよりも捗っていないのだった。パソコンに向かう時間は多かったはずなのに。

 それもそのはず、コーヒーと音楽に囲まれたスーパーリラックス状態では、ついつい調べものと称してSNSやネットサーフィンをしてしまったり、高揚状態のせいか理性的で客観的な文章が書けていなかったり、ステレオのCDを入れ換えるときにあれこれ悩んでCD棚の前で無駄に時間を費やしたり、コーヒーのおかわりのために何度もキッチンに行ったりしていたのだ。

 それから私は学んだ。リラックス状態を作り出すのは良いが、スーパーリラックス状態は作っては仕事は捗らないと。それ以降、様々な試行錯誤があったのだが、今は次のようなルーティンに落ち着いた。

朝、20~30分の海外ドラマをNetflixで観ながらストレッチ運動 → コーヒーを淹れ、パソコンを立ち上げる → Spotifyで音楽が途切れないような設定にして作業開始 → 昼食後は、「どこまで作業をするか」の目安を決めて、それを目標に作業再開 → 目標まで終わったら終了、あとは自由時間

  朝のNetflixタイムは、一見無駄のように見えるかもしれないが、自宅作業フリーランサーの通勤時間のようなものである。そこでまず、体のスイッチを入れるのだ。自宅作業をしているとどうしても同じ姿勢でいることが多く、運動不足になりがちで方も凝りがちになってしまう。そこで、まず作業を始める前に十分に身体をほぐすとその後、スムーズに作業が進むことが分かった。

 あとこのルーティンに従って仕事をする際に気を付けておくべきことは2つ。①スマホは脇に置き、SNSは見ないか通知があっても無視。自宅作業とは言っても、職場が自宅なだけで、就業中は私的なスマホいじりはすべきではないかな、と思ったので。②コーヒーは朝の一杯で終わり。おかわりはなし。コーヒー休憩からのだらだら時間が一番集中力を削ぐ原因だと、ある時気付いたので、それ以降は朝の目覚ましコーヒーだけで、リラックス用のコーヒーは飲まないことにした。あと、口さみしい時は、チョコレートが最適。糖分でエネルギーを補えるので。

 あと、意外と重要なのは、聞く音楽の種類。洋楽かインストものが良いと思う。個人的にはもともと洋楽中心に音楽を聴いていたので、特に問題はなかったが、たまに邦楽を聴いたりしながら作業していると、どうしても耳から入ってくる日本語情報が気になり、目の前の文字情報を処理しきれなくなり、文章を書いているときもタイポが目立ったり、文法がおかしかったりすることがよくあったので。

 というわけで、私のリモートオフィス生活は、朝の目覚ましコーヒー一杯とエンドレス再生のできるSpotifyが必須で、あとはいかに自分を律しながらルーティンに沿ったワークフローができるかに依っている。





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