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自ら学ぶ「動機づけ」の真実~自己決定理論③教科・内容別の動機づけ

これまで自己決定理論について扱ってきました。

  • 外発的動機づけには「外的調整」「取り入れ的調整」「同一可的調整」「統合的調整」の4つがある。

  • 統合的に近づけば近づくほど、だんだん自律性が高まってくる。

  • そしてその延長線上に内発的動機づけがあるのだ、ということでした。

この自己決定理論を用いて、様々な教科や内容の動機づけが研究されております。
例えば、体育での外的調整とは?同一化的調整とは?…のようにです。
これらの研究を知ることで、自分が関わっている内容の動機づけがより具体的にイメージできるのではないでしょうか。

ちなみにですが、多くの研究では「統合的動機づけ」は省略されています。
これはあくまで推測ですが…
「統合的動機づけ」というのは「自分の価値観に完全にマッチしている」というもので、「こうするのが自分らしさなんだ」「当然自分はこうするのだ」といった、もうわざわざ意識しなくても自然とやっちゃうんだよ~レベルの動機づけなんですね(外発的動機づけの中で一番自律性が高い)。
ですので、アンケート調査なんかで調べても、あまりはっきりと意識していないので回答に現れてこないのではないか、なんて思っております。

全教科はまだ見つけられていないのですが、まずは現時点で見つかったものからご紹介します(見つけ次第、追記していきます)。


”理科の動機づけ” 西内 舞, 川崎 弘作(2017)理科学習の意義の認識が動機づけに及ぼす影響に関する研究

「理科は感動だ!」という言葉もあるように、
理科には実験・観察など夢中になれそうな要素がたくさんありますね。

【外的調整】
やらされているから
先生がいろいろ言ってくるから
学校で理科の勉強をしなければならないことになっているから

【取り入れ的調整】
先生からほめられたいから
周りの人についていけなくなるのが嫌だから
理科を勉強しておかないと不安だから

【同一化調整】
将来、働く時などいろいろなことに役立ちそうだから
将来、仕事をするうえで必要になりそうだから
自分の考える力や問題を解決する力を高めることになるから

【内的調整】
わくわくして興味を感じるから
考えたり、頭を使ったりすることが楽しいから
実験をすることがおもしろいから

”社会科の動機づけ” 福谷 泰斗, 皆川 直凡(2022)自己調整学習の理論に基づく振り返り活動が中学生の学習動機づけに与える影響

【外的調整】
社会科を勉強しなさいと言われるから
社会科を周りの人たちが勉強するから
社会科の勉強で先生や親に叱られたくないから

【取り入れ的調整】
社会科の勉強で先生や親に褒めてもらいたいから
社会科の勉強で周りの人に認めてもらいたいから
社会科の勉強でかしこいと思われたいから

【同一化調整】
社会科の勉強は大切なことだから
社会科の勉強は自分のためになるから
社会科の勉強は社会に出てから役立つから

【内的調整】
社会科で勉強する内容が知りたいから
社会科の勉強でいろいろなことを知ることが楽しいから
社会科で考えることが好きだから

”体育・運動の動機づけ” 藤田 勉(2010)自己決定理論に基づく運動に対する動機づけの検討

これは大学生の調査なので、例えば小学生だと少し違うのかもしれません。

【外的調整】
運動をしないと、自分の居場所がなくなりそうだから
他の学生と同じことをしないと、さびしい感じになりそうだから

【取り入れ的調整】
運動が下手だと格好悪いから
練習や試合で失敗して、他の学生に迷惑をかけたくないから
他の学生ができることを自分ができないのは恥ずかしいから

【同一化調整】
運動をしないと、体力が落ちてしまう感じがするから
必要最低限の体力はつけたほうがよいから
体力が落ちて病気にかかりやすくなると困るから

【内的調整】
夢中になって運動をするときの感覚が心地いいから
運動をするとさわやかな気分になれるから
運動ができたときの喜びを味わいたいから

”学習そのものの動機づけ” 西村 多久磨, 河村 茂雄, 櫻井 茂男(2011)自律的な学習動機づけとメタ認知的方略が学業成績を予測するプロセス

これは学習そのものの動機づけですね。

【外的調整】
やらないとまわりの人がうるさいから
周りの人からやりなさいといわれるから
成績が下がると怒られるから

【取り入れ的調整】
勉強で友達に負けたくないから
友達よりいい成績をとりたいから
周りの人にかしこいと思われたいから

【同一化調整】
将来の成功につながるから
自分の夢を実現したいから
自分の希望する高校や大学に進みたいから

【内的調整】
問題を解くことがおもしろいから
ことが楽しいから
勉強すること自体がおもしろいから

”登校の動機づけ” 五十嵐 哲也, 茅野 理恵(2018)小中学生における登校への動機づけ尺度の作成

なるほどなーと思いました。「不登校」「投稿しぶり」を考えるうえで、この「登校への動機づけ」は重要ですよね。

【外的調整】
行かないと親が起こるから
親が行けというから
行かないと親や先生に理由を聞かれるから

【取り入れ的調整】
ずる休みしていると思われたくないから
休むと友達に会いにくくなるから
学校を休むのははずかしいことだから

【同一化調整】
学校に行くことは自分のためになるから
勉強することは将来のためになることだから
学校で友達といろいろな活動をすることは大切なことだから

【内的調整】
学校が楽しいから
クラスが楽しいから
勉強がおもしろいから


”友人関係の動機づけ” 岡田 涼(2005)友人関係への動機づけ尺度の作成および妥当性・信頼性の検討

友達関係も動機づけの視点で見るとおもしろいですねー。
人間関係でぎくしゃくしやすい子どもの中には、「取り入れ的」に動機づけられていたりすることもあるかもしれません。

【外的調整】
一緒にいないと、友人が起こるから
友人関係を作っておくように、まわりから言われるから
友人の方から話しかけてくるから

【取り入れ的調整】
友人がいないと、後で困るから
友人がいないと不安だから
友人がいないと、恥ずかしいことだから

【同一化調整】
友人と一緒に時間を過ごすのは、重要なことだから
友人関係は、自分にとって意味のあるものだから
友人のことをよく知るのは、価値のあることだから

【内的調整】
友人と話すのは、おもしろいから
友人と一緒にいるのは楽しいから
友人と親しくなるのは、うれしいことだから

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