深掘り:お茶を淹れる際の浸出時間について

湯温と並び、お茶を淹れる際に難しいと感じられがちなのが浸出時間かと思います。
間違えてしまうと、お茶の濃度に大きく影響してしまうのは確かです。
ですがこれも湯温と同じく、様々な”遊び”をお茶に提供してくれる要素なのです。
浸出時間について、マスターしていきましょう。


1.浸出時間まとめ
まずは、浸出時間についてまとめてみます。

30~40秒:ほうじ茶、玄米茶、番茶、柳茶、新茶
この浸出時間は、90~100℃で淹れるお茶の浸出時間です。
高温のため、成分が茶葉からお湯に出るのが速やかですので、浸出時間はさほど必要ではないのです。
むしろこの温度帯のお茶は、高温で立ち昇る香りを楽しむお茶がほとんどですので、お湯が冷める前に淹れるという意味も含めて、浸出時間は短めです。

1分:煎茶
80℃で淹れるお茶の浸出時間です。
お茶の特徴が掴みにくかったり、適した温度で淹れているのにイマイチ美味しくない場合は、この温度と浸出時間で一度淹れてみましょう。
80℃で1分というのは、渋味・苦味の元であるカテキンが抽出されすぎるかどうかの境界線で、一つの基準です。
ですのでこの温度と浸出時間で淹れることで、そのお茶はどう淹れるのがベストなのか判断することができます。
この温度・浸出時間で苦い・渋い場合は温度を下げ浸出時間を延ばしたり、香りや味が薄い場合は逆に温度を上げたりします。

1分30秒:かぶせ茶
湯温の場合と同じなのですが、この浸出時間は上の煎茶と下の玉露の中間の浸出時間として、後から設定されたものです。湯温は70℃です。
理由も同じく「かぶせ茶」自体が、煎茶と玉露の中間の味わいを持つお茶として、両者の後に誕生したからです。
70℃で1分30秒ということで、渋味・苦味成分のカテキンよりも旨味・甘味成分のテアニンの方が感じられやすくなり始める浸出条件です。

2分~2分30秒:玉露
この浸出時間になると、湯温は60~50℃ということで、かなり低くなります。
湯温が低い分、成分が茶葉からお湯に出るのが緩やかですので、浸出時間が長くなります。
かぶせ茶や煎茶であってもこの浸出条件であれば、旨味・甘味はかなり強めに浸出できます。
渋味・苦味がまだ強ければ湯温を下げ、全体の味が薄ければ浸出時間をさらに延ばせば、最適な味わいを見つけることができるでしょう。

10~15分以上:水出し茶、氷出し茶
水出しであれば10~15分、もしくはそれ以上~1日浸出します。
氷出し茶の場合は氷が溶けるのに任せます。
じっくり待った時間に応えてくれるかのような、濃厚な味わいを楽しむことができます。まさに、時が溶け出した滋味と言えるでしょう。


2.浸出時間の様々な計り方
実は、浸出時間は時計を使わずとも計ることができます。

一つは、急須に茶葉とお湯を入れ、急須の蓋に湯温が伝わったら浸出するという方法です。
蓋は、湯温が高い場合は早く温まり、湯温が低い場合は穏やかに温まります。
そのため、この方法であれば時間を計らずとも、適した浸出時間でお茶を淹れることができます。
この方法の難しいポイントは、個々人の感覚に頼っているため、少し慣れが必要なことです。

もう一つは、急須を回す方法です。
茶葉とお湯を入れた後、浸出時間30秒当たり1~2回ほど、急須を回します。
例えば煎茶を淹れる場合は浸出時間1分ですので、3~4回ほど急須を回します。

茶葉を揺らすと雑味が出るという方もいますが、急須を回す方法は、昔から存在するれっきとしたやり方です。
この方法も難点としては、急須の形や回し方で浸出の具合にブレが出るため、やはり慣れが必要なことです。


3.二煎目で絞り切る
最後に、二煎目・三煎目を淹れる際の浸出時間について触れておきます。

二煎目・三煎目を淹れる場合、浸出時間は必要ありません。お湯を投入したら、待たずに注ぐことができます。
ですが例えば三煎目以降を淹れるつもりがなく、二煎目で残りの全ての成分を浸出したい時はどうでしょうか。
そのような場合は、一煎目よりも高い湯温で一煎目の半分の浸出時間、もしくは一煎目と同じ湯温で一煎目と同じ時間、浸出します。


いかがでしょうか。
お茶の浸出時間は、浸出されるお茶を最大限楽しむために心を整える時間とすることもできます。
待っている間、呼吸だけに意識を集中したりして、マインドフルネス瞑想を行うのもいいかもしれません。

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