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回想日記 ~畑仕事~

日曜日の朝、ガラケーの目覚ましが鳴る。
ちょっと憂鬱な気分で目を覚ます。
暑い、そして、だるい。
いや、身体のほうはだるくないけど、精神的にだるい。
布団から出たくないけれど、うだうだしてても埒が明かないから、ふぁ~っと大きなため息のようなものを出して、ちょっとだけ自分の頭を覚醒させながら、布団から出る。
お手洗いに行ったり、顔を洗ったり、歯磨きをしたり、いろいろ済ませてから、学校の体操着に着替える。小学校や中学校指定の体操服はめちゃくちゃダサかったけど、高校のはだいぶマシだ。
やっぱり眠いな、と思いながらつっかけを履いて、勝手口のぺらっぺらの戸を引く。
ガラガラ。
レールに砂利が溜まってるな。
あとで掃除しようか。
ボロッボロの、だけれども取っ手だけはちゃんとしている小屋の戸を開けて、右手にいくつかぶら下がっている鍬の中からいつものを選ぶ。
これがいちばんうちやすいんだよね。
それから、乾いたちょっと高めの、畑をうつ音が聞こえる、祖父と父親のいる畑に向かう。
こっちの畑はわりとマシだ。
別の、粘土質の畑のほうは、かなりやりにくい。
畑をうつにしても、なかなか鍬が深くまで入らないんだ。
よくあんなとこで植物は根を張ってるな。大したもんだ。
なんてことを思いながら、やや砂の目の粗い畑に向かって、祖父と父におはようと言って、で、つっかけを脱いで裸足になって、畑に入る。
畑に入って、父の横に並べるところまで歩いていって、畑をうち始める。
勉強はどうだとか、将来どうするのとか、今日はなにしようかとか、雑談をしながら、畑を耕す。
鍬を振りかぶって、うちおろす。
土を自分の足元に寄せる。
ひんやりとした土が、私の足を覆う。
また振りかぶって、うつ。
すでに耕したところから、3 cmぐらい先までうつ。
たまに、鍬に土がこびりついて、振りかぶったときに私の頭の上に落ちてくる。
うっとうしいけど、毎度のことだ。
ちょっと中断して土を払ったら、また再開する。
自分が立っているところから70 cmぐらい先まで耕したら、掘り返したところに生ゴミを入れる。
生ゴミといったら聞こえが悪いな。堆肥。まあウチで出た生ゴミに違いないんだけれど。
それで、生ゴミがちゃんと埋まるように、鍬で押し付けたり足で踏んだりしながらかさを減らして、生ゴミのすぐ側に立って、その上に土をかけるようにしてまた畑を耕し始める。
畑をうってる間、けっこう虫にかまれるけど、まあこいつらも必死だろうし、ちょっとぐらい、血、あげてもいいよ。

そんなこんなで1時間半ぐらいか、父と祖父と、話したり黙ったりしながら、畑をうって、やるべきところまでを耕し終える。
けっこう汗かいたな。
おつかれさんって言って、畑から出て、つっかけを履いて、鍬を小屋に戻す。
外にある水道で足を洗うときに、あ、ブユに刺されたな、と気づく。
ショックだ。
あいつにだけは刺されたくなかったのに。
あいつに刺された翌日には、足がパンパンに腫れるんだ。
畑うちして指が太くなることもそうだけど、こんな野生児みたいな足してて、お嫁にもらってくれるところあるのかしらん、なんて、現状では大して問題だと思ってもないことを、頭の中でわざとつぶやいてみる。

母がつくる朝ごはんの匂いがただよう。
いい匂いだな、と思うと同時に、疲労感を感じ始める。
天候の期待値込みで、今日の仕事は時給10円ぐらいだろうな。
そんなことを思いながら、勝手口にかかっているぞうきんで足をふいて、浴室に行ってシャワーを浴びる。
なんだかんだで、目覚めたときはだるく感じるけど、朝から畑仕事するの気持ちいいな、と、いつもおんなじことを思う。
朝ごはん食べて、コーヒー飲んで一息ついたら、数学でもしようかな。
シャワーを浴びながら、適度な疲労感とすっきりした頭で、私はその日の予定を練り始めた。

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