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演出が苦手なデザイン初心者は形とレイアウトの表現手法、心理作用を学ぶべき、という話

元WEBデザイナーが、デザインについてつらつらと書いていきます。今回はデザイン初心者が演出を上手くできない理由、注意すべきポイントについて語ります。職業訓練、スクール等でデザインを学んでいる人、デザイン初心者に読んでいただければ幸いです。


欧文がかっこよく見えて、和文がもっさりして見える造形的な理由

英文が「かっこよく」見えるという理由で、デザイナー、特にWEBデザイナーは装飾要素的なあしらいで、見出しやキャッチコピー等に英文を多用しがちですが、なぜ英文は「かっこよく」見えるのでしょうか。

その理由は、アルファベットの画数が少なく、字面が洗練された印象を与えるからだと言われています。

一方和文はというと、ひらがなは構成要素として曲線が多く、文章として記述する時は画数の多い漢字との混植になるため、文字を構成するエレメントが複雑になりがちで、英文よりも垢ぬけない印象を与えてしまいます。

文字の画数が多いという事は、文字という図形・視覚情報を脳が認識する際に、より多くの処理が必要になるということでもあります。さらに漢字は表意文字でもあるため、一文字に込められた情報量は表音文字のアルファベットよりもさらに多くなります。

また、文字の画数が多いと、字間に出来る余白、文字の中に出来る余白が複雑な形状になるため、余白のコントロールと文字組みのバランスが難しくなる傾向があります。

形と印象・心理作用の例:「わくわく」なのか「ワクワク」なのか

「わくわく」という言葉を表記する時、「わくわく」とひらがなで表記するか、「ワクワク」とカタカナで表記するか、たったそれだけの違いでも与える印象は変わってきます。「わくわく」だと曲線が多く、女性的でやさしいイメージ、「ワクワク」だと直線が多く角ばっていて、男性的で力強いイメージになります。

さらに、綴る書体を明朝にするかゴシックにするか、文字のウェイトを細くするか太くするか、文字の形状、外観といった要素によっても印象は変わってきます。

また、字間、ベースラインを変えたり、文字(図)に対する周囲の余白(地)の割合を変えることでも印象を変える事ができます。

このように、形や空間が与える印象、心理作用、効果はデザインにおいて無視できない重要な要素の一つです。形状、空間の些細な違いで、印象が変わって見える事があります。デザイナーが細部の作りこみまでこだわる理由は、些細な違いで与える印象も変わってくるという事を良く知っているからにほかなりません。

デザイン初心者は造形、レイアウトの心理作用を見ていない

デザイン初心者、学習者にとって、色彩理論、色彩心理は理解しやすく取り組みやすい、また、ネット上でも情報が多数で回っており、学習ノウハウも整っているので、デザインを構成する要素のなかでも学びやすく理解もしやすいのではないかと思います。

一方で、デザインを構成する要素の中でも特に造形的要素、レイアウトに関する表現手法、心理作用については、ネット上で出回っている情報も少なく、学ぶのもなかなか難しい領域であり、初心者が見落としがちな部分でもあります。

しかし、デザイン初心者が「プロっぽく感じる」要素は造形的要素、レイアウトに関する表現手法、心理効果にあると考えられます。ゆえに、デザイン初心者がプロの仕事に近づくためには、そういった要素を学ぶ必要があると言えます。

それらの情報は、大型書店の美術・デザインのコーナーや、美術館、芸大・美大の図書館に行けば比較的容易に手に入りますが、中小規模の書店、ネットの情報、デザイン初心者が手に取りそうなデザインテクニック、ノウハウ本からでは、深い部分を学ぶ事ができません。

デザイン四原則だけでは「演出」「心理効果」が不足している

デザイン初心者のなかには「デザイン四原則さえ押さえていればOK」という情報を鵜呑みにしてしまい、「デザイン四原則だけ」で制作物を作ってしまう人がいるようです。

しかし、そういった人達が作る制作物は大抵の場合、「構成要素を見栄え良く並べただけ」で終わってしまい、味も素っ気もない、ユーザーに何の印象も与えない、感情をもたらさない、効果の無いデザインになってしまいがちです。

そもそもデザイン四原則は、情報の伝達と整理のための基本原則であり、人の感覚や感情に訴えるような演出や表現手法といった領域にまで踏み込んでいるものではありません。

広告、ビジュアルデザインにおける「リッチなユーザー体験」を作り出す要素は、情報設計よりも演出効果や心理効果といった、表現手法に多く含まれていると見て良いでしょう。

デザインの仕事として制作物を作る際、デザイン四原則はやって当たり前、できて当たり前の大前提事項として押さえたうえで、ユーザーの感覚、感情、興味に訴えるような演出、心理効果を上乗せしていかなければなりません。

書籍「巨匠に学ぶ構図の基本」のご紹介

最後に、視覚デザイン研究所が出版している「巨匠に学ぶ構図の基本」という書籍をご紹介します。

いわゆる名画、傑作と呼ばれる絵画の構図の説明と解析がメインですが、レイアウトが及ぼす心理効果、構図を使ったストーリーテリング等の手法について詳しく説明されており、デザインする際のレイアウトや、動画撮影の際のレイアウトにも応用が利く内容となっています。

この書籍のように「デザイン」という分野、領域の外にある情報からも、デザインに必要な事や気付きを得る事ができます。デザインを学ぶ際はデザイン関連の情報、ノウハウ、テクニックばかりを収集するといった、狭い視野・行動に陥らず、見識を広めるために、デザイン以外の分野にも目を向けてみましょう。


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