辛いことも結構あるよ! キラキラだけじゃない、WEBデザインの職場のハナシ
元WEBデザイナーが、WEBデザインの仕事に関する事をつらつらと書いていきます。今回は筆者が会社員として実際にデザインの現場で体験した事、同業者から聞いた話を語ります。キラキラ輝くユートピアな職場もどこかに存在するのかもしれませんが、大多数は「現実は甘くない」を体現するような環境かと思います。職業訓練やスクールでWEBデザインを学んでいる人、就活中の人に読んでいただければ幸いです。
激務でも給料は安い
原因はWEBサイトの制作案件の単価の安さにあります。高単価案件を受けられるだけの力が会社にあれば良いのですが、そうでなければ会社を維持できる位の売り上げを上げるために「数をこなす」必要があります。
そうなると必然的に一人当たりの仕事量が増えます。とはいえ、さばける量にも限度はあります。いくら数をこなしても、案件単価が安いので売上げは大した額になりません。
なお、安いのは「デザイン」の単価であって、「システム開発」等に関わるエンジニアの単価はフロントエンド、バックエンド共に高額です。コンサルやシステム開発も手掛けている会社にいると、それらとの売上げ額の格差に毎月ヘコまされる事になります。その格差は給与ベースにも顕著に現れることになります。
デザイナーが手にする給料は仕事量、内容に対して見合っていないと感じる事もあるかもしれません。時給換算するのは精神衛生上よろしくないのでやらないことをおすすめします。
職場がピリついている、疲弊している、雰囲気が悪い
若い世代が中心の職場は平和な場合が多いようですが、かつてのデザインの現場は、新人はディレクター&先輩デザイナーから徹頭徹尾フルボッコのダメ出しをされる、パワハラ、モラハラ当たり前の酷い扱いを受けながら成長していくという過酷な環境でした。そのようなところで立派?に成長した古株さん(昭和世代)がいらっしゃる現場は、事あるごとにピリつく可能性が高いです。
後述の広告業界との取引がメインの制作会社は、仕事量、スケジュールのコントロールが上手くいかずに現場が疲弊、雰囲気が暗い職場があったりします。コロナ渦でリモートワークが定着する以前は、「寝具完備」「仮眠室完備」等、冗談ではなく本気で求人に記載している(もしくは面接の際に説明がある)制作会社もありました。
残業手当ェ・・・
現在ではお役所もうるさくなっているので減って来ていると思いますが、2000年代のITベンチャー全盛期、まだ「ブラック企業」という言葉が存在しなかった頃、IT業界界隈は「残業手当を支払わない」が当たり前のように横行していました。ちなみに筆者は残業時間「月平均90時間」で残業手当一切なし(名目上は管理職扱いにされていた)という制作会社で働いていたことがあります。
今もひょっとすると、中小規模のIT企業、制作会社では残業手当の踏み倒しが、「無い袖は振れない」「出世払い」「こらえてつかぁさい」等の理由で行われているかもしれません。
残業手当がみなし残業の名目で固定給の中に内包されている場合、よくよく見ると基本給がものすご~く安く設定されていたりすることがあるのでご注意を。
なお、「みなし残業時間」にも要注意。時々想定時間45~60時間と結構長時間で設定されていることがあります。それだけ残業が多い環境であるということを暗示しているかもしれませんよ?
IT業界なのにリモートワークNG
意外な事に、テック企業でも出社を強制、リモートワークNGの会社は多いです。業務システムの運用担当エンジニア等がセキュリティの関係上、出社して仕事をしなければならないというのはわかりますが、デザイン職であればリモートでも特に問題はないはずです。しかし、なぜか事務所に人を集めたがる会社が結構あります。
前述のような出社しなければならない社員に合わせて、全社員出社を義務づける謎の平等思想、勤怠管理や業務指揮・管理上の理由で、出社を強要されているのかもしれません。IT企業というと先進的な思想の会社をイメージしがちですが、意外と企業体質、思想は古いまま、などということも多々あります。
コンビニかっ!
クライアントによっては、デザイナーは24時間365日フル稼働していると
勘違いしているんじゃないかと疑ってしまうようなムーブを見せる事があります。
広告業界は特にこの傾向が顕著です。
筆者は広告業界から距離を置いて久しいので、現在はどうなのかはわかりませんが、広告業界に関わりがあった頃は夜中の10時11時位に「今から新規案件の打ち合わせをしたいのでそちらに伺います」と突然連絡が入ったり、土日祝日関係なく仕事の連絡、進捗の報告を要求されたり等々の事が普通にありました。
今も格安超特急・わがまま満載案件が横行しているのではないでしょうか。
某大手広告代理店は過労が原因で亡くなる人を定期的に出して騒がれますが、1人の影に30人の法則で、発注元で1人の被害者に対して、下請け・孫請けの業者の受けた人的被害はいかほどのものなのか、想像に難くありません。
エンジニアだらけの環境では不幸になる
システム開発を基幹事業にしている会社にデザイナーとして入ってしまうと、肩身の狭い思いを経験することがしばしばあります。そのような現場ではデザイナーの立場は非常に弱いものになる事があります。システム開発のおまけみたいな立ち位置、「食玩付きお菓子のお菓子の方」みたいな感じですね。
周りを見渡してもエンジニアだらけでデザインの話など通じることもなく、デザインの必要性、重要性を理解してもらえず、事あるごとにデザイナーをエンジニア化しようとしたり、デザインについて学ぶ機会、学ぶ費用を与えられない事すらある(デザインよりもプログラム言語を勉強しろ云々)ので、デザインに関する勉強、情報収集、スキルアップ等は、独学・自費で黙々と孤独にやり続けることになります。
UXは夢物語
エンジニアの発言力、権限が強い現場では、UX、ユーザーファースト、人間中心設計、どれも反故にされる事があります。(エンジニアがそれらの重要性を認識している場合はその限りではありませんが。)
エンジニアの権力が強すぎると「開発効率」「システム上の仕様と制約」「納期と工数」等々の「開発側の都合」を優先して、エンドユーザーを無視した設計、開発をしてしまいがちです。あなたの身近に人間が機械様に合わせろ!的なシステム、ツールがありませんか?
特に古株のエンジニアが権力を持っている環境、業務システムをメインに作っている環境でそのような傾向が見られます。業務システム界隈はIT業界の「生きた化石」と揶揄されるレベルで設計思想が古く、業務内容的にも保守的な傾向が強いため、最先端の設計思想を取り入れるのに消極的な人、環境に行き当たる可能性が高いです。
デザイナーがどんなに世の中のトレンド、UX、ユーザーファースト、人間中心設計について力説しても、彼らの心に届くことはありません。時にクライアントの苦情すら届かない場合もあります。
はやく人間になりたい!
このフレーズ、心の中で叫んでしまう人が今もどこかにいるのではないでしょうか。(筆者は徹夜作業になるたびに心の中で叫んでました。)
うかつにデザイナーになってしまったが故に、人並の幸せすら享受できない生活に陥る可能性も多分にあります。
WEBデザインの現場ではメンタル的にクラッシュして辞めてしまうという事案が度々発生します。(筆者の実体験では10人以上の事案がある。うち3例は自身の上司、先輩デザイナー。残りは同期、後輩、新人。)どうやら年を取ると体力だけではなく、精神的な耐久力も衰えるようです。
今現在、心が壊れそうな状況にあるそこのあなた、後先考えずに逃げた方が幸せかもしれませんよ?
最後に
筆者が美大の学生だったころ、教授に「好きな事を仕事にすると、好きな事が一つ減ることになる。(それ位に芸事を仕事にするのは過酷な事。)」
と言われたことがありました。
「好き」を仕事にしたら人生がキラキラ輝きだすとは限りません。
「必ず不幸になる」とは限りませんが、これからデザイナーを目指す人は「過酷な道を辿る可能性も大いにある」という事を頭の片隅にでも入れておいてください。