見出し画像

即興演奏とクラシック

(素敵なオブジェの写真をお借りしました。かわいい)

7/22に放送されたのを後から知り、8/12の再放送を録画していてやっと見ました。

クラシックTV
7月22日(木)放送「魅惑の即興演奏〜音楽で会話する〜」

清塚信也さんと鈴木愛理さんが司会をされていて、時間が合えばたまに見る程度だったのですが、この日のゲストは「あまちゃん」のテーマソングでもお馴染みの大友良英さんと…サックス奏者であり恩師の、平野公崇先生!

大学ではピアノや声楽のレッスンを受け、音楽療法に必要な臨床的即興技法も学びましたが、平野先生の授業「即興演奏講座」では、演奏としての即興や自分の音楽とは?表現とは?ということについて、4年間じっくりと教えていただきました。
教えてというか、考えさせてくれる機会を与えてくださいました。そこでのゲスト講師との出会いが、私が後にジャズボーカルを習い、自分の声とトコトン向き合う日々へと繋がっていくのも、これまたご縁。

そんな平野先生の演奏を、映像でも拝見できて嬉しかったなぁ。生で聴くのが1番ですが、なかなか難しい状況になってしまったので…

本当にどんな音大生やねんと言われそうですが、3歳からピアノを習っていたのに、クラシックのピアノ曲があんまり好きじゃなかった。合唱クラブでの伴奏にのめり込んでいきました。
中学生のときに音楽療法というものと出会ってしまい、「これだ!!!」となってから音大を視野に入れるものの、本当に心からクラシック曲を演奏することが好きになり始めたのは、大学入学後。平野先生のCDを聞いたこともきっかけのひとつでした。

バッハなんて(と言ってしまいますが)、昔の私には「退屈」でしかなかったのです。
ピアノをある程度まで習った人なら知っているであろう「インベンション」や「シンフォニア」。子どもの私には、これらの魅力が全くわからないのでした。
パズルみたいな機械的な音の並び。

なんやこれ、つまらん。バッハあんま好きじゃない。

…と、ほぼ食わず嫌い。でも、大学1年のときに「平野先生の演奏なら聴きたい」そう思って聴いてみたら、ほんと音楽観ひっくり返りました。


「う、うつくしい!!!」


今思えば、吹奏楽部でもなくオーケストラも無縁。
ピアノ以外の弦楽器と管楽器にほとんど触れたことがない私にとっては、このアルバムの楽器構成は新鮮そのもの。

そして、今思えば(その2)、おそらく私は「歌のない、ピアノ曲」をひとりで演奏しているときに、ほとんど息をしていなかったのだと思います。呼吸が浅いというべきか。
ピアノを弾くという動作のみをしていて、呼吸と、指や腕、重心をのせる動き、自分の気持ちや流れがチグハグ。楽譜の解釈が足りなかったと言えばそれまでだけど、そんな状態の身体で弾いてたらそりゃあ「退屈」だわな。合唱の伴奏が好きだったのは、歌があるからだったのでは?と予想しています。自分も心の中で歌いながら弾いてるから、まぁ〜楽しくて楽しくて。

人間の息には限界があるから、管楽器は物理的にフレージングや呼吸について考えないといけない。でも、ピアノは指で押せば鳴るので、息止めてても弾けちゃう。
不思議なもので、息を止めてるのと、しっかり曲のフレーズで息をしながら弾くのでは、まったく音が変わるんですよね。この感覚は大学生でやっと身につきました。

そんな経験をしてきて感じるのは、楽譜に歌パートがなくても、どんな曲でも「歌うように弾く」ことができるということ。
そして「即興演奏」では、恐ろしいことに自分のすべてがダダ漏れる。戸惑いや不安も、よろこびも。
だから、演奏家はもちろん、音楽療法士として意図的に音楽を使っていくためには、トコトン自分と、自分の音楽・表現と向き合うことが欠かせない。自分のアンテナや、訓練された主観を磨き続けること。
そしてこの修行には、死ぬまで終わりがない。

また平野先生の演奏が聴ける日まで、元気でいよう。