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IT業界未経験の社員を採用する「渋谷のベンチャー」の”心意気”とは ― 2007年卒業から現在までの道のりとその先にあるもの:YC talks 2024

青地 崇雄さん(2007年・環境情報学科)が、横浜キャンパス ホームカミングデーの企画である、「横浜キャンパストークライブ YC talks」に登壇し、自身のキャリアの軌跡を振り返り、現在までの経験や学びを語りました。青地さんは2007年に環境情報学部環境情報学科を卒業し、現在までにいくつかの企業を経て、数々の重要な役割を担ってきました。本講演では、彼のキャリア選択の理由、これまでの経験、そして今後の展望が赤裸々に語ってくださいました。

1. 就職活動の基準 ― 自分に正直であること

青地さんは、就職活動を振り返り、特に三つの基準が自身の選択を左右したといいます。

  1. 楽しいだけではなく、苦しい仕事を避けたい

  2. 大きなことに挑戦したい

  3. お金を稼ぎたい

卒業後に選ぶ仕事には、楽しさだけではなく、苦しさが伴うことも避けたいという強い思いがあったといいます。「辛い仕事をずっと続けるのは難しい。自分にとっての働き方の基盤は、楽しいけど苦しくない仕事を見つけることだった」と、青地さんは振り返りました。そして「自分にはできないような大きなことに挑戦したい」という思いで、様々な企業を見ていきました。また、率直に「お金を稼ぎたい」という動機も彼のキャリア選択の基準の一つでした。車など自分が憧れるライフスタイルを実現するために、収入が得られる企業にも注目していました。

2. NECへの入社とその決断

そんな青地さんが最終的に選んだのはNECでした。その決め手は、当時のNECが環境問題への取り組みを強化し、バイオプラスチックを活用した製品開発を進めていたことにあることでした。環境情報学部で学んだ知識がそのまま活かせると感じたことが、NECを選んだ理由の一つだそうです。
NECに入社後、青地さんは研修の自己紹介で「3年後に主任になり、最終的には社長になります」と宣言。そんな青地さんに期待して、さまざまな話が回って来たともいいます。それでも「大きな目標を掲げてチャレンジし続けることが大切だ」と語り、自身の挑戦心を奮い立たせていました。

3. DeNAでの挑戦と営業力の強化

しかし、NECでは、年功序列が厳しい企業文化に苦労したといいます。地方支社では同期に昇進する話があったりしたものの、自分には回ってこない。上司に話を聞くと、あと3年は待って欲しいと言われてしまいます。それでは、同期より何周も遅れてしまう、そんな状況に嫌気がさしてNECを離れる決断をしました。
その後、DeNAに転職し、青地さんは主にタクシー配車アプリの営業職を担当することになります。DeNAでは、若くして事業部長や社長になる可能性があることに惹かれたと話します。営業というフィールドで自分の能力を磨きたいという強い意志を持って取り組んだものの、業界再編により営業の役割が薄れたことから、次のステップを模索することになりました。

4. SHIFT社での成長と業界未経験者へのチャンス

その後、ソフトウェアテスト企業のSHIFTに転職。SHIFT社では、業界未経験者を採用し、育成するプロジェクトに力を入れており、青地さんもその取り組みに深く関わりました。特に「業界未経験者に再チャレンジの機会を与えることは、ビジネスチャンスだ」と強調しました。その経験が、自身でto Be tech社を起業するきっかけになったといいます。
そこにいた業界未経験の社員たちの多くは、「自分はIT業界にチャレンジできない」と思っていたことです。しかし、社会的にはITエンジニアが不足していて、現在もその状況は同じ。そんな子たちに人生再出発のチャンスをプレゼントしたいと思って2020年7月に起業したのが、渋谷のITベンチャー、to Be tech社で現在130名の社員と過ごしています。

5. 起業と今後の展望

そんな会社にやってくる社員のうち、7割〜8割の社員は「人生をやり直したい」と語るという。なぜかというと、「やりたかったことができなかった」「祖父母の介護をせざるを得なかった」など、多種多様だった。そんなさまざまな理由から、彼らは自己肯定感が低いまま生きて来てしまった。すぐ「僕なんかが…」とマイナス思考になってしまうので、そこを変えたいという思いを強く思ったそうです。
そんな、IT未経験の社員たちには成功体験を積ませ、自己肯定感を高めることを目指して、ITパスポートの取得を促すなど、社員が自信を持つためのサポート体制を整えました。また、新年にはおせちを食べたり、フットサルやダーツ、社内イベントを通じてコミュニティを形成し、社員同士の絆を強化する取り組みも積極的に行っています。
青地さんは、会社の拡大を目指しつつ、社員が成長する姿に大きな喜びを感じていると述べます。「今まで成功体験がなかった社員が、資格を取得し、自信を持ち始める瞬間に立ち会うことができるのは、本当に嬉しいことです」と語りました。
また、将来的にはさらに多くの社員を採用し、事業を拡大していきたいと、今後の意気込みを語りました。現在130人を超える社員数を、今後さらに増やし、500人規模まで成長させる計画があるとのことです。

6. 結びに ― 関わった人々すべてに幸せを

講演の最後に、青地さんは「関わったすべての人に幸せになってほしい」という願いを語りました。それは、家族や友人だけでなく、会社の社員に対しても同様です。彼の経営者としての視点は、「お金を稼ぐこと」や「社員の幸せ」を同時に追求することにあり、それが彼の経営哲学を支える根本的な考え方であると強調しました。

まとめ

青地さんの講演では、キャリア選択の基準や転職を通じての成長、そして現在の経営に対する考え方が非常に具体的に語られました。特に、自分自身の挑戦心と、社員の成長をサポートする姿勢が印象的でした。今後も、彼が掲げるビジョンの実現に向けて、さらなる飛躍が期待されます。

(文:楷の木会 荒井)

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