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ロスジェネの逆襲/Another side

ビックコンテンツとなった「半沢直樹」シリーズ。

映像化されたのは4作品。(最新刊は5作目の「アルルカンと道化師」)

このうち僕が最も気になっているのが三作目にあたる「ロスジェネの逆襲」です。子会社に下った半沢が、IT企業のM&A劇を舞台に活躍する作品です。

表題のロスジェネはロストジェネレーション、つまり氷河期世代です。その代表としてこの作品では半沢の部下である森山がもう一人の主人公としてストーリーに絡んできます。

ロスジェネの逆襲 半沢の提言

作中、バブル世代の半沢と氷河期(ロスジェネ)世代の部下の森山との対比が随所にでてきます。そして世の中に対する問題意識、バブル世代が残してしまった課題を解決するカギを最後に森山に託します。

「簡単なことさ。正しいことを正しいといえること。世の中の常識と組織の常識を一致させること。ただ、それだけのことだ。ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価される。そんな当たり前のことさえ、いまの組織はできていない。だからダメなんだ」
お前たちには、社会に対する疑問や反感という、我々の世代にはないフィルターがあり根強い問題意識があるはずだ。世の中を変えていけるとすれば、お前たちの世代なんだよ
戦え、森山。そしてオレも戦う。誰かが、そうやって戦っている以上、世の中は捨てたもんじゃない。そう信じることが大切なんじゃないだろうか

そうして、作品はロスジェネもバブル世代も、世の中を変える希望をもって仕事をしていくことで幕を閉じます。


ロスジェネの逆襲 バックグラウンド

さて、舞台設定に戻りましょう。

森山は東京中央銀行の子会社である、東京セントラル証券の社員でした。確かにロスジェネ世代になりますが、正社員として証券会社に勤め、役職も持っています。

現実のロスジェネの中でどのような位置づけになるのでしょうか。下記の記事は限定公開ですが、973万人/1691万人=57.5%が正社員です。

子会社とは言えメガバンクの傘下です。証券会社での30代の平均年収は696万円となっています。

2020年度の平均年収433万円に比べてかなり高い水準にあることがわかります。

つまり作中の冷遇されているロスジェネの森山ですら、ロスジェネ世代の中ではかなりのトップ層という生存バイアスがかかっているのです。


ロスジェネの逆襲 Another side

半沢の提言は既存社会に対する、既存のルールに従ったまっとうな「逆襲」でした。その一方でそのまっとうな逆襲はロスジェネの一部にしかできないものであることがバックグラウンドからわかります。

ではまっとうでない逆襲はどのように起こりうるのか。

選挙の放棄

若年層の投票率は低かった今回の衆議院選挙ですが、その背景には政治に対する諦めがかなりあるとおもいます。果たして渋谷でハロウィーンの仮装をした若者たちのどのくらいが同日の選挙を済ませていたのでしょうか?

引き起こされる犯罪

同日、24歳の若者が京王線での事件を起こしました。

また社会復帰できないことで、家庭内で悲劇が起こることも。

そして負担は増える

社会保険料の増加により、得られた収入の中の可処分所得はさらに減ります。こちらは今後も上がり続けることがすでに決まっています。

厚生労働省の考え。75歳までは働けってさ。今これを決めてる世代が動けなくなった時、ロスジェネがおとなしく言うことを聞くと思うなよ?


バブル世代よりも数は少ないとは言え、以降では最大の世代集団となる氷河期世代。すでに手遅れかもしれませんが対策を講じなければ、その反動としての「逆襲」はまっとうなものである保証はないのです。

急激に姥捨て山が始まるのかもしれません。自己責任のもとに切り捨てられてきたルサンチマンは根深い。


違う視点からみている、こちらの方もご参考まで。





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