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いまさら聞けない、クラファンの選び方 ~D2C×クラウドファンディングの相性とは~

あけましておめでとうございます! TCOのミカミ・リョーです。早くWarby Parkerブランド体験の完結編をお届けしたいのですが、続報もありまして…… もう少しお待ちください。なので、新年一発目は、別の話題からお届けします。 

最近、テレビの報道番組や情報番組で、クラウドファンディング(以下、クラファン)の話題をよく目にしませんか? クラファンのテレビCMもありますね。SNSで見るのは多かったですが、いわゆる「マス」への露出が増えたなと、ミカミ的にも思っていたわけです。 

クラファンを使って商品を販売しているD2Cブランドもあります。でも、クラファンのプラットフォームもさまざまです。「どこのクラファンが自分たちのD2Cビジネスに合っているの?」と感じている方もいるかもしれません。そこで、ミカミ的にD2Cブランドの観点からクラファンを調べてみようと思います。

そもそもクラファンの定義とは?

みなさん、クラファンの定義を明確に言えますか? まずはそこからはじめましょう。各プラットフォームでもクラファンについて説明していますが、第三者が客観的に説明しているほうがいい。で、調べたところ野村証券の「証券用語解説集」でクラファンを見つけました。

群衆、人々(crowd)と資金調達(funding)をつなぎ合わせた造語。あるプロジェクトを実行するため、インターネットを通じて不特定多数の人から比較的小額の資金提供を募る活動、または資金集めのために利用できるサービスのこと。
出典 https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ku/a01857.html

とあります。端的にまとめると、「ネットを通じた人々からの資金調達」が辞書的な意味ですね。これをふまえたうえで、プラットフォームの比較を見ていきましょう。

2大クラファン Makuake vs. CAMPFIRE 独自調査で比較!

まずは「2大クラファン」プラットフォームとして人気のMakuakeとCAMPFIREについて調べてみましょう。

①公式データによる全体像から比較

まずはMakuakeです。知名度としては、ナンバーワンかもしれませんね。ネット広告会社大手のサイバーエージェントが運営しています。

現在、Makuakeでは、クラファンという言葉を積極的に使っていません。彼らは「応援購入」というコンセプトで展開。上に引用したサイトには、次のように書かれています。

完成された商品やサービスを扱う一般的なショッピングサイトとは異なり、Makuakeでは これから生まれ、世の中に広がっていく商品やサービスを扱っています。

プロジェクトを支援する=そのプロジェクトから生み出される製品を購入する、そんなイメージです。

そして、CAMPFIRE。こちらは、日本におけるクラファンの先駆者です。

サイトにも大きく「誰でも挑戦できる安心のクラウドファンディング」とあるように、学生や個人事業主から、中小企業や大学まで、ありとあらゆる方が利用しています。キーワードは、「挑戦」です。

両社が公式に発表しているデータから、全体像を比較してみます。

なるほど、大きな数字が並んでいます。さすが大手2社です。自分たちのブランドを訴求していくうえで、これだけユーザーがいるのは魅力的です。支援資金の総額を見ても期待がふくらみます。が、実際に活用することを考えると、全体像だけではなく、もう少し細かな情報がほしいところ。そこで、ミカミ的に視点を変えて、この大手2社を比べてみました。 

なお、これ以降紹介するデータは、すべて2021年12月16日現在、ミカミ調べです。その点、ご承知おきください。

②直近で終了した30件のプロジェクトを比較

両社の直近で終了した30件のプロジェクトをピックアップして、カテゴリー、商品単価、募集金額、購入者数、達成金額、達成率をまとめてみました。

ここからぞれぞれの平均値を抽出して比べてみましょう。

Makuakeの平均達成率が803%というのはスゴイですね。達成金額も募集金額の約3倍です。一方、CAMPFIREは平均商品単価が低い割りに、募集金額の平均が高くなっていますが、これは一部高額に設定されているプロジェクトが影響しているようです。しかし、こちらも平均達成率は99%と高確率になっています。

直近で終了した30件のプロジェクトの平均値からも、Makuake、CAMPFIREともに成功を納める確率が高いことはうかがえます。ただ、カテゴリーがさまざまです。扱うものによって、当然差は出てくるはずです。もう少し細かく見ていきましょう。

③「プロダクト」のデータを比較

この30件から、ミカミが一番D2Cブランドに近いものとして注目したのが、カテゴリー「プロダクト」です。「プロダクト」だけを抜き出してみました。Makuakeが7件、CAMPFIREが3件あります。

未達はそれぞれ1件だけです。Makuakeは、「応援購入」を打ち出しているだけあって、購入者数と達成金額はCAMPFIREよりも高い数字になっています。いずれにしても、未達がこれだけ少ないという点でも、プロダクトを提供するD2Cブランドとクラファンの相性は悪くないように思います。 

ちなみに未達のデータだけを比較したのが以下です。

未達のプロジェクトもけっこうありますね。全体像を紹介するデータでは、大きな数字が並ぶ2大プラットフォームですが、この未達のデータはなかなか見えてこない部分です。クラファンを使ったからといって、プロジェクトは必ずしも成功するとは限りません。D2Cブランドのプロジェクトを立ち上げる際も、プラットフォームの特性を理解して、どこを選ぶか見極める必要がありますね。

達成上位プロジェクトを比較

クラファンで気になる点は、「いくら資金を集められるか」ではないでしょうか。D2Cブランドを立ち上げる際、今後のビジネスを占う大きな指標になりうるデータです。そこで、先ほどの2大プラットフォームに加えて、ガジェット系に強いGREEN FUNDINGS(TSUTAYAのCCCが運営)を加えて、過去に目標達成した上位プロジェクトを一覧にまとめてみました。

なお、実際は、何パターンか商品があるため、購入者数は達成金額を商品単価で割った「見なしの人数」です。

①トップ10すべてがプロダクト! | Makuake

Makuakeは、上位10プロジェクトのすべて「プロダクト」でした。達成率がハンパないですね。金額もえげつないです。「応援購入」というスタイルは、プロダクトととの相性は抜群ですね。D2Cブランドも、「応援購入」の文脈を活かした、打ち出し方をしっかり研究すれば、こうした高額な資金調達も夢ではないかもしれません。

②「チャレンジ」の文脈なら勝機あり! | CAMPFIRE

CAMPFIREは、「挑戦」を応援するプラットフォームだけに、「プロダクト」は上位10位中3つでした。しかし、その3つの達成率が高いですね。D2Cブランドの打ち出し方次第では、CAMPFIREでも多くの支持を得ることも可能です。その際のキーワードは、CAMPFIREらしさを考えれば、「挑戦」「チャレンジ」です。D2Cブランドとしての戦略立案上、「これまでにでないモノづくり」「まったく新しい概念のブランド」などのストーリーがあれば、CAMPFIREとの相性は悪くないかもしれません。ランキング入りしている事例でも、「世界最小」「日本で公開」「エコなライフスタイルを実現する」などのコピーが目を引きます。

③高額ガジェットなら断然こちら | GREEN FUNDINGS

GREEN FUNDINGSは、出版・ガジェットを中心としてしているですが、注目は商品単価が比較的高い点。結果的に達成金額も多くなり、こうした上位では達成率も「異常値」のような数字をたたき出しています。ガジェット系のD2Cブランドで、「ちょっと商品単価が高くなりがちで心配」という場合、選択肢としてGREEN FUNDINGSはアリかもしれません。

ミカミ的まとめ

 今回は、D2Cブランドの観点で、クラウドファンディングをどう活用するか、それを考えるために独自調査に基づく比較記事をお届けしました。クラファンのプラットフォームを、公式発表の数字とは違った角度で見ると、違った事実が見えてくるのではないかと考えてのことです。いかがでしたでしょうか。

以前、ECプラットフォームの選び方で、”すべて「手段」です。大事なことは、D2Cビジネスをどう展開するか”と書きました。

クラファンも同じ「手段」です。クラファンを利用するなら、自分たちのD2Cブランドの打ち出し方とプラットフォームの特性をふまえて考える必要があります。もちろん、クラファンを使えば、資金調達が約束されるわけではなく、そのポテンシャルを活かすための地固めとして、情報の発信やファンの獲得、PR施策なども戦略的に行わなくてはなりません。ミカミ的にも、「これをつかえばバッチリです!」とご案内したいところですが、そんな魔法のツールはありません。

ただ、こうしたプラットフォームやツールを調査したり、比較したりすると、自分たちなりの「とらえ方」ができるようになります。思考を巡らせて、どういうことか整理して、自分なりのとらえ方を作りあげる。そんな「目」を持つと、ビジネスに向かう姿勢も変わっていく気がします。

クラファンは、これからも進化していくでしょう。D2Cに活かせるクラファンのあり方は、引き続き研究していきます。いつか続編をお届けしたいですね。

ミカミ・リョー@今年もよろしくお願いいたします


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