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LINE研究パート6 ~メッセージを活かしてユーザーの考えや行動を読み取る~

こんにちは! TCOのミカミ・リョーです。これまでの「LINE研究」はミカミの考える、“LINE ID”マーケティングの考え方を中心にお届けしてきました。前回のパート5では、実践に向けた知識とスキルの習得を目的に、LINEキャンパスの受講者インタビューをお届けしました。

これが割と好評で、より具体的な取り組みについて研究を進めていくべきと思った次第。ミカミ自身、実際に「やってみる」を重視するタイプなので、頭デッカチになりすぎないように、いろいろ試しながら引き続き、この「LINE研究」を続けていこうと思っております。
 
で、今回は、LINEで配信するメッセージに着目しました。LINEのベースは、個人間のコミュニケーションツール。1対1の使い方だったものをビジネスにも活用して、企業とその顧客、つまり1対nでの情報発信も行われるようになったのは、ご存じのとおりです。さらに、それを突き詰めていくと、企業と顧客一人ひとり、個別のコミュニケーションへと進化するのですが、一旦それは置いといて、ベーシックな企業のメッセージ配信をミカミ的に考察します。基本機能ですが、ちょっと視点を変えることで、ユーザーの考えや行動がわかるデータが取れるポイントが見えてきました。

とある高級室内ゴルフ練習場でのエピソード

実践派のミカミとしては、机上の空論に陥らないように、日々ユーザーとしてLINEを使い、LINE公式アカウントを活用している企業や店舗の方と会えば話を聞いています。そんな中、とある高級室内ゴルフ練習場の事例を聞く機会がありました。ミカミ的に、メッセージ配信にまつわる発見があったので、整理して紹介したいと思います。
 
そのゴルフ練習場、少し前にオープンしたらしいのですが、予想以上の人気だったそうで。しばらくすると予約が取りにくい状況に。人気なのはいいですが、せっかく会員になってもらったのに「予約取れない」「練習できない」という状態が続くのはマズイ。で、放置するのはよくないと考えて、会員にLINEでメッセージを一斉配信することに。実は、初回の無料体験は、LINEの友だち登録をしてからなので、基本的に会員とはLINEでつながっていたのが、功を奏したとのこと。

ゴルフ練習場の会員申し込みのステップは、まずLINE友だち登録から

これ、なかなかいいですね。会員との接点は、基本LINEという考え方。以前も紹介したように、LINEはもはや生活インラフ。これがあったから、メッセージ一斉配信につながったわけですね。
 
で、何を会員にメッセージで送ったのか、こっそり教えてもらいました。それは、「謝罪」と「対策」だったそうです。
 

[謝罪]
・予約が取りにくい状況が続いていることをダイレクトに謝る。
[対策]
・予約が取れずチケットが無駄にならないよう、有効期限を延長する。
・2店舗目のオープン予定を告知。分散化で予約状況を改善する。

 謝るだけでなく、対策としてユーザーに対する価値の提案があるのは正解だと思います。ま、その中身も大事ですが、ミカミ的に着目したのは、このメッセージ配信後のことです。
 
あるユーザー(既存会員)から、チケットの有効期限延長について、「ホントですか?ありがとうございます!」と返信があったそうです。そのとき、担当者は気づいたわけです。ユーザーにとっては、そのメッセージが一斉配信なのか、個別配信なのか、あまり関係ないことに。

一斉配信のメッセージも、ユーザーからしたら「自分宛」のメッセージ

ミカミ的には、LINE公式アカウントから来る情報は、感覚的にも一斉配信だと「わかる」ので、そんな発想はありませんでした。広告業界のデジタル領域で長く仕事をしているので、「先入観」というか、「裏側を理解している色眼鏡」で見ていたかもしれません。ユーザー視点の気づきでしたね。
 
さらに一斉配信によって別の変化も起きたそうです。それは、なんと会員増です。先ほど、「初回体験のためLINEの友だちになるのが前提」と紹介しましたが、実はLINEの友だちになっても「体験に来ない」「そのまま放置」という人もいたそうです。ECで言えば、カゴ落ちみたいものですね、あと一歩のお客さま。「見込み客」とも言えますが、ホットになっていない。
 
そんなユーザーにも、一斉配信のメッセージは届きます。すると、「予約困難」や「2店舗目オープン」などの情報から、ゴルフ練習場の「人気」に気づいたようで、初回体験の申し込みが増えたそうです。メッセージがきっかけで、ホット化したんですね。担当者は、LINE公式アカウントのメニューに「初めての方」として、体験ユーザー向けの導線を追加したそうです。

メッセージ一斉配信が、休眠ユーザーを呼び起こす効果も

このエピソードからミカミが感じたのは、メッセージひとつで、そのリアクションから「ユーザーの考えや行動がわかるデータが取れるポイント」が見えてくるってことです。つまり、LINEのメッセージ配信も、逆算的に仮説を立てて、ユーザーのリアクションを誘発するように設計する視点が重要だとミカミは考えています。

LINE公式アカウント事例からの考察

では、どんな情報や画像をメッセージ配信すると、ユーザーのアクションにつながるのか。そして、そこからどんな反応が得られるか。という視点で、LINE公式アカウントのメッセージ配信方法を事例から考えてみましょう。公式のLINE for Businessで紹介されている事例から、ミカミがピックアップして独自に考察したものです。その点、ご了承ください。

AnotherADdressの場合

「AnotherADdress(アナザーアドレス)」は、大丸松坂屋百貨店が手がけるサブスクプリション型ファッションレンタルサービスです。ユーザーとのフラットなコミュニケーションを目指して、LINEのMessaging APIを用いたメッセージ配信を行っています。メッセージの開封率も高いようで、「毎週金曜日に配信する新着アイテムに関するメッセージの開封率は7割を超えて」いるそうです。

ミカミが、この事例記事を読んで、着目したのはAnotherADdress CRM担当 窪川有咲氏による以下に引用する発言です。

「いきなり有料会員に登録いただくのは、なかなかハードルが高いと感じます。まずは興味関心のあるお客さまに『無料会員』や『友だち』になっていただき、コミュニケーションが取れる状態になることを重視しました。その後、サービスの情報などを継続的にお届けし、徐々に有料会員化できればと考えています」

お客さまから送られるLINEチャットでは、オーダーや集荷時間の変更のほか、『こういうブランドを増やしてほしい』といった要望が寄せられます。LINEスタンプ付きでLINEチャットが送られてくることもしばしばあり、こうしたフラットなコミュニケーションは日常に浸透したLINEならではの特徴です。LINEを活用することで、お客さまの顔がよく見えていると感じています」

まずは入り口をLINEにして、コミュニケーションの取れる状態をつくること。7割というメッセージ開封率も含めて、ユーザーとのつながる基礎固めをLINEで行っていますね。

そして、チャットで寄せられるユーザーの要望、スタンプの返信などがある点も重要です。事例記事から運用の詳細まではわかりませんが、AnotherADdressでは、Messaging APIを用いてメッセージの自動配信を行っています。一斉配信のメッセージも多いと考えられますが、そこにユーザーはチャットでリアクションする。窪川氏が「お客さまの顔がよく見えている」と語っていますが、ここから得られる情報はかなり大きいとミカミは見ています。先ほどのゴルフ練習場の事例にも通じるポイントではないでしょうか。

琴平バスの場合

琴平バス (香川県琴平町)は、1956年創業の老舗の観光バス・タクシー会社だそうです。こちらもメッセージを活用した興味深いケースです。導入の目的はLINE通知メッセージで乗車予約前日のリマインド配信を行うことでした。リマインド配信は、交通系に限らず、店舗予約でもよくある話です。しかし、事例記事を読み進めると、さらなる広がりを感じました。

ミカミが、この事例記事を読んで、着目したのは琴平バスの専務取締役・西川晋平氏が話した以下の内容です。

「2022年4月時点でLINE公式アカウントの友だち数は8,000人を超えています。関心の高いユーザー層を一通り取り込んだことで増加ペースは鈍化していますが、3年間で200人しか友だちが増えなかった以前の運用時と比較すると、段違いの成果です」

「当社の利用者は、閑散期は30代以上のお客さまが多いのですが、年末年始や長期休みの時期には、学生を中心とした20代の方が急増します。それぞれの時期に合った年齢や属性に対してメッセージを配信することで、お客さまのニーズにより適した情報を効率的に届けられるのではないかと期待しています」

まず、通知メッセージの導入で友だち数が急増した点ですね。公式アカウントはあっても、ユーザーとの接点になっていなかったのでしょう。リマインド配信目的の通知メッセージの導入で、そこが大きく変わった。自分がユーザーの立場だとしても、想像がつくポイントです。

そして、配信効果を高めるためにセグメント配信を検討している点です。年齢層やタイプに合わせたメッセージ配信で、ユーザーにピッタリな情報を届ける。ここからはミカミの予測ですが、きっとピッタリな情報を受け取ったユーザーは、何らかのリアクションをしてくれるはずです。そこから見えてくるものもあるでしょう。メッセージ開封率、告知した情報(キャンペーン)からのコンバージョン率など、定量的に計測できるものに加えて、ユーザーのリアクションから、思わぬ発見、ニーズの発掘があるのではないかと想像しています。

ミカミ的まとめ

2つのLINE公式アカウント事例を取り上げて考察してみましたが、いかがだったでしょうか。どちらもよく考えられていますが、スペシャルなことをしているわけではありませんよね。でも、ユーザーがアクションを起こしたくなる「文脈」があるように感じました。これは想像ですが、きっとメッセージ配信から得られたデータを活かす体制や仕組みがあるのでしょう。ただの配信で終わっていないのがミソですね。
 
仮に100通のメッセージを送ったとして、100人のユーザーに対して態度変容を促すのは難しいかもしれません。でも、行動を起こす仕掛けと、データが取れる環境が整備されていれば、だんだんと精度が上がっていくはずです。

仕掛けと言っても特別なことが必要なわけではありません。ユーザーの立場で考えたコミュニケーションを考えることが重要。たとえば、メッセージ配信内容に配信先の名前を追加できる基本機能があります。メッセージの本文に「○○さま」とあるだけでも、自分に向けたメッセージと受け取ってもらいやすくなりますよね。ちょっとしたことが、ユーザーのアクションを誘発するトリガーになると思うのです。

また、冒頭に紹介したゴルフ練習場のように、メッセージの一斉配信から、発見や想定外の効果がわかるかもしれません。そんなLINE活用の「糸口」を見逃さない「目」も養いたいですね。
 
ミカミ的には、LINEのメッセージ配信は、ユーザーとのコミュニケーションの「はじまり」です。メッセージ配信からデータをためていくのが、LINEらしい使い方です。ユーザーの考えや行動がわかるデータが取れれば、ミカミの考える“LINE ID”マーケティングにつながるはずです! たかがメッセージ、されどメッセージ。ミカミのLINE研究、まだまだ続きます!
 
ミカミ・リョー@お会計はLINE Payで!

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