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8月30日(日) 入学式の校長式辞全文

新入生の皆さん、保護者の皆様、東京音楽大学付属高等学校へのご入学、誠におめでとうございます。
また、この季節外れの入学式の実現に尽力して下さった皆さん、お忙しい中駆けつけて下さったご来賓の皆様、本当にありがとうございます。

やっとここで、この100周年記念ホールで皆さんともう一度出会い直すことができました。「入学式」と言う儀式は、新入生の皆さんにとってはもちろん、我々教職員にとっても大きな意味を持っています。5か月ほど遅れての邂逅ですが、今日、この機会を持てたこと、大変嬉しく思っています 。

皆さんご存知のように新型コロナウィルスの流行でわれわれは甚大な影響を受けました。多くの不都合が生じています。

対面で授業を行うことができず、オンライン授業、オンラインレッスンを余儀なくされました。誰にとっても初めてのことですから、準備をする学校側、教職員側でも戸惑いがありました。それでも懸命な努力、先生方の努力と生徒の皆さん双方の努力で、ここまでやってくることができました。先生方も頑張ってくれましたが、生徒の皆さん、とりわけ新入生のみなさんは、新しい環境に飛び込み、仲間達とリアルで時間を共に出来ない寂しさの中、本当によく頑張ってくれたと思います。この皆さんの頑張りがこの高校の未来を作ってくれています。

今生じている不都合、それに対する不満やフラストレーション、皆さんに不便をかけている事は大変申し訳なく思います。学校で真摯に音楽に取り込むみなさんが、不利益を被らないよう、問題が一刻も早く片付くよう、今後も最大限の努力をして行きます。引き続き、生徒と保護者の皆さんのご理解、ご協力をお願い致します。

新入生の皆さんは、すでに本校での学びを始めておられます。音楽に伴われて高校生活を過ごせるという事、僕はとても羨ましく思います。 

僕自身は高校2年の文化祭で、ヘルパーとして関わった音楽部の部活がきっかけで声楽と出逢いました。サッカー部員としてトレーニング中に大声を上げていなければ、音楽部員からスカウトされることもなかった。この偶然には今でも感謝しています。

でも、僕よりずっと早く、高校に入学する前に、すでに音楽との運命的な出逢いを既にもち、時間をかけて音楽と向き合う機会を得ている皆さんのことは本当に羨ましく思います。

常に音楽が傍らにある。悩んでいるときも楽しいときも。もっと言えば、音楽が楽しさを与え、また悩みや苦しさも与え続ける毎日ですね。その悩みや苦しさも、未来の皆さんの栄養になっていきます。

そして、この常に音楽が傍らにある生活を存分に使って、使い倒して、もっともっと僕をうらやましがらせて下さい。

その為にはどうしたら良いんでしょうか。それは「遊ぶ」事です。

ちょっと難しい話になりますが、ドイツの文豪、フリードリヒ・シラーは、やはりドイツの文豪として知られるヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテに宛てた「美的書簡」という手紙の中で、人間の衝動を三段階に分けています。
その第三段階が「遊戯衝動」、つまり遊ぶことです。遊んでしまえば人間は自由です。そこでシラーは「人間は遊んでいるときだけ、完全に人間でいられる。そして本当の意味で人間でいるときだけ、遊ぼうとする」と書いています。

ここで気付いて欲しいのですが、遊ぶ、と言う事は演奏する、と言う事なのです。英語ではPlay。ドイツ語ではSpielen。演奏するという動詞はドイツ語でも英語でも「遊ぶ」という意味で、スポーツをするという動詞と一緒です。

みんな、存分に遊んで下さい。人間らしくいきて下さい。あらゆる事を楽しんで下さい。机で勉強することはもちろん大事ですが、良い子でお勉強するだけでなく、自由でいて下さい。そして、その自由さを演奏に持ち込んで下さい。堅苦しくならないで下さい。マストで、つまり義務感で演奏しないで下さい。wantで、自分の自発的欲求から演奏して下さい。そうすれば自由になり、人間的な音楽を奏でる事が出来ます。

僕はこの後歌うのですが、こんな事を言っておいて矛盾するようですが、自由に音で遊ぶこと、音と戯れることは簡単じゃないです。でも、遊べたときは本当に自由で楽しい。この後の演奏で、そう言う音楽の自由さを感じてもらえるように、頑張って遊ぼうと思います。

この三年間。一緒に遊びましょう。楽しく遊べる様に、真面目に遊べる様に。

音楽と共に生きて下さい。

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東京音楽大学付属高等学校の校長として。日々の中で教育、音楽に留まらず、豊かな高校生生活、音楽に寄り添う、音楽が常に傍らにある高校生活について、またその未来について。綴っていこうと思います。
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