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人体の見方

 東洋医学は西洋医学と違い、独特な考え方で人体をみていくことになります。一つ一つをしっかりと理解していくことは大切ですが、本当に深く理解していくのは難しい傾向もあります。

 東洋医学は、東洋哲学がもとになって作られているので、東洋医学の人体の見方の特徴も何となく分かるけど、自分でしっかりと説明するのは難しいのではないでしょうか。

 今回は、簡単に紹介していきます。

1.整体観

 整体観は過去の国家試験でも出題されたことがあります。「整体」と聞くと無資格を考えてしまいがちですが、東洋医学の重要な概念の一つです。

 どういったことを言っているかというと、「東洋医学の独特の概念で人の身体は整っている体である」という考え方になります。

ちょっと分からないですよね。国家試験だけであれば「整体観」は東洋医学の考え方であると覚えておくといいです。

 人は解剖していけば、様々な物が含まれているのが分かりますよね。身体の中に入っている、組織や器官は誰に指示を受けるわけでもなく、それぞれが働くだけではなく、連携して「一つの生命体」を成り立たせています。

 この全体が協力して「一つの生命体」として「整っている体」として見ていることを「整体観」といいます。

2.天人合一思想

 天人合一思想(天人相応)は、人体の形と機能が天地自然と相応している、人と自然は一体であることになります。

 人が生きていくためには食事を取って、呼吸をしなければいけませんが、この活動は自然と関わります。

 人体にはたくさんの組織、器官がありますが、全体として統一されて存在しています。自然も同様に海、山、木など様々な物があって全体として統一された自然として成り立ちます。

古代中国の儒教思想では「天人相関(天人感応)」という考え方があり、人と自然は一致しているのを前提として、天子の悪政が災害になったりするという考え方もあった。

3.陰陽学説

 東洋医学の重要な思想となってくるものの一つで、物事を陰と陽に分けるという考え方になります。この分けることで、人体の構造、機能、病気、診断、治療にも役立てることになります。

 陰陽については別記事がありますので、そちらを参照してください。

東洋医学の陰陽論って何?

4.五行学説

 五行学説は東洋医学では重要な概念の一つになります。物事を5つに分ける考え方と、5つが相互に関わっているという相克・相生という関係があります。

 五行については別記事があるので、そちらを参照してください。

五行学説

5.人体は小自然

 一般的に自然と言われるのは、東洋医学でいうと「大自然」になります。人は「大自然」の中で生活していますが、人体も大自然と同じように、様々な器官や組織が相互に関係しあいながら成り立っています。

 この多くの物が相互に影響し合いながら成り立っているのは、「大自然」のようですが、小さい存在でもあるので人体は「小自然」と言われます。

6.有機的な統一体としての人体

 有機的というのは、多くの物が緊密な関係をもって全体像を作っていることを言い、人体は多くの器官、組織が緊密な関係をもって、人という全体像を成り立たせているので、「人体は有機的な統一体」と言えます。

 これは東洋医学の独特な概念の一つでもあり、どこかに問題があれば、それが全く関係ないと思われるところに症状が出ても、全てが繋がりを持っているので、当然のことになります。

7.虚実

 東洋医学では、生命力という見えない力が満ち溢れている物という考え方があり、この生命力が弱くなってしまったり、外からの影響や身体の中に停滞してしまったりすることで病になると考えていきます。

 この考え方のことを虚実といいます。虚は不足した状態、実は余分がものが外からきたり、中で停滞して悪さをしてしまったりすると考えていきます。

プレゼンテーション1

 虚実は治療においても重要な考え方であり、「虚の場合は補い、実の場合は瀉す」ことになります。この考え方を補虚瀉実と言います。

8.標本

 標本は診断していくために重要な概念の一つになります。

・標:表、急性、症状

・本:裏、慢性、体質

 身体の体質や病の本質的なことを「本」と呼び、結果として出てきている症状を「標」になります。

「68歳の男性。数日前に風邪をひいて、発熱は落ち着いたが、咳が続いている。60歳を超えてから体力の衰えを強く感じるようになり、体調が悪くなったり、風邪をひくことが増えた。」

 例えば、この文章から分かるのは、「身体の衰えがあった」というのが「本」であり、現在、辛く感じている「咳」「標」になります。

 治療においては、標本同治(ひょうほんどうち)、急則治標、緩則治本があり、標と本を同時に治療する場合、急性の場合は標治を中心にする場合、慢性の場合は本治を中心にする場合と分けて考えることがあります。

 東洋医学の考えでは、「本を重視する」というが重要なのですが、実際の臨床では「標もしっかりと対処する」というのも重要になります。

私自身も「本」を中心として「標」も変えるのだという気持ちで最初はやってきましたが、患者さんの気持ちになったら「標」の方が重要という気持ちも分かるようになってきたので、「標本同治」をすることが多いです。

9.個に対する医療

 現代医学的な治療では、まず「症状」があって、「症状」に合わせて診療科を選び、治療を受けますが、東洋医学では、「症状」はあくまで一つのものであり、「症状」が集まって「症候・証候」という一つの身体の状態になり、これが病の本質である「証」になります。

 「証」に合わせた治療をするので、「随証療法」といいます。

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