ちぐま

フランスはナントに暮らして22年。フランスでの育児、仕事、生活のなかで感じたことや考え…

ちぐま

フランスはナントに暮らして22年。フランスでの育児、仕事、生活のなかで感じたことや考えたことなど。大学生の長男、中3の次男、おかしな夫と平和に暮らしています。インスタグラムでは食べものとワインが多め → https://www.instagram.com/tchiguma/

最近の記事

じぶん次第が一番難しい - tuとvousの話

フランス語には二人称、つまり英語の you にあたることばが二種類ある。tu と vous である。君とかあなたとかいう意味になり、一般的に tu はタメ口、vous は敬語での会話・文章で使うと習うと思う。 tu と vous の使い分けは日本人にとって難しい。私もなかなか苦戦した覚えがある。どっちを使っていいかわからないから一生懸命二人称が複数形になるようにして話したり(tu も複数形にすると vous になる)二人称のないフレーズに言い換えて話したり、涙ぐましい苦労も

    • 15歳の息子とはたらくことについて考える

      ある夜、宿題にうんざりしている高校生の息子が言った。 なんでママは働いてお金をもらえるのに僕はもらえないの?と。 フランス語で「働く」と「勉強する」は同じ単語、「travailler」 である。僕もママも travaillerしているのに不公平だ、というのだ。 日本語のように二つが違う単語だったらこういう発想はなかっただろう。彼の疑問(というか不平?)はフランス語で思考する人ならではの問いだったと思う。さらに言えばなんにでも損得勘定がはたらきがちな若者ならではだったとも。

      • 親になるということ、とプリン

        子どもが生まれ親になって経験できる素晴らしいことはたくさんある。だけどその中でも一番、私にとって衝撃的だったことがある。 それは、自分自身の人生において、自分が二番手になるということである。自分自身よりも大切な存在ができるということだ。 私の人生において主役は私のはずだった。というか誰が主役とかそんなこと考えたことすらなかった。なのにやってきたその小さな存在を前にすれば、主役のはずの私は簡単に二の次、三の次になってしまった。彼らに比べれば自分なんてとるに足らない。 人生

        • ボケてボケて、つっこまない。

          外国に生きることは、ときとして辛い。辛さのポイントはひとによって様々あるだろうけど、言葉の問題は母国語圏外で暮らす人みんなが一度は感じたことがあるのではないだろうか。 その土地での言葉をだいたい話せるようになったとしても、言いたいことがとっさに言えなかったりする。気持ちがうまく表現できずにもどかしい。すばやいレスポンス、機知のきいた切り返し、豊かな語彙、などなど求めるものは多く、語学習得の道は長くけわしい。 言葉の壁は、大阪に生まれ大阪で育った生粋の浪速っ子である私にとっ

        じぶん次第が一番難しい - tuとvousの話

          あなたの匂い、わたしの匂い

          旅と鼻スイッチ どこかを旅するとき、その土地土地の匂いというものがあると思う。温度や湿度もひっくるめ、それら空気を媒介として感じる「匂い」。はじめて見る景色、本場で食べる料理・・・。旅から帰って語られるのは概して視覚や味覚の記憶ばかりで、匂いは旅の思い出として重要視されていない気がする。鼻で、あるいは肌でしっかり感じているはずなのに意識されにくいのはなぜだろう。写真に記録できないからだろうか。 意識的に記憶にとどめられなくても、同じ場所を再び訪れてその土地の匂いをかいだ途端

          あなたの匂い、わたしの匂い

          絶好のタイミングなんか、たぶんこない。

          いつだって「今じゃない」仕事を辞めたら、note をはじめようと思っていた。編み物をしたり、手の込んだ料理を作ったり、散歩にでてたくさん写真を撮るんだと思っていた。 したいことはたくさんあるのに、スタートの笛が鳴らないのだった。辞めたいと思っている仕事は、相変わらず続けている。 ふたり目の子どもが欲しかったころ、私はまだ幼かった長男の育児と二度目の大学生生活との両立にてんやわんやで、地を這うように過ごした学生生活をようやくの思いで終えたあとも、ふたり目を迎えるにはまだ早い

          絶好のタイミングなんか、たぶんこない。