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満月と近鉄 / 前野ひろみち

 奈良を舞台にした4つの話。森見登美彦風の物語。

 中学生の男の子たちが一人の女の子に告白する話、「佐伯さんと男子たち1993」。この4編の中では一番普通の話。普通ではあるけれど一番普通に面白い。

 よくそんな話を思いつくよなと感心してしまったのが「ランボー怒りの改新」。ベトナム帰還兵のランボーが蘇我入鹿を殺し、いわゆる「大化改新」を成し遂げた話。バカバカしくもカッコいい。

ナラビアン・ナイト 奈良漬け商人と鬼との物語」は、「千一夜物語」を奈良風に語った話。こういう話が昔からあったんじゃないかと思ってしまう。

満月と近鉄」は上記の作品を書く作者の話。六畳一間のアパートで作家を目指す不思議な青春小説。

 どの物語も風変わりで魅力的。そして奈良。奈良愛が満ち溢れている。
 



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