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King Gnu CLOSING CEREMONY @日産スタジアム(2023/6/4) 台風・物販・客席からの眺め、 残したい現場の記録

King Gnu、音楽に興味のない人にも名前は知れ渡っているレベルの知名度と言えよう。
それは野球に興味のない私でもニュースで話題にあがる有名な選手の名前はさすがに把握しているような具合で、King Gnuは世間の認知において「ああ、名前は知っているよ」の域に達しているように見える。

私は野球が嫌いなわけではない。むしろハマってみたかったりする。応援している球団がいるのとか絶対に楽しそう。勝ち負けがある分、負けを知っている分、勝ちの喜びのすさまじさって本当に最高なのだろうと思う。

音楽業界にもしばしば突出した人気を得るアーティストが現れるが、自分もその流れに乗って一緒にはしゃげるかというとそれは話が別である。趣味との出会いなんて自身の感性とタイミング次第だ。
世間で流行ったから、がそのタイミングにならない私はいつも困惑する。
流行は好きだからそれこそハマってみたい気持ちはあるのだけれど。


実は私がKing Gnuの素晴らしさを認識したタイミングは去年のサマーソニックでライブを観た時だ。
THE 1975やTHE OFFSPRING目当てで参加したものの、せっかくだしKing Gnuは観たいでしょって感じでしっかりと入場列に並んでアリーナで観た。

次元が違った。メンバーが出てくるだけで会場は半狂乱。常田氏の意外とパワフルなギタープレイや、好みの楽曲との出会いに素直にとても興奮した。

別会場で行われる目当てのライブへの移動のためにラスト3~4曲は観られなかった。今思えば多少無理してでも終盤に演奏された『雨燦々』は観ておきたかったが、仕方ない。フェスとはそういうものである。
11月の東京ドーム公演も行こうとは考えたが、日程が合わず断念。
今回の日産スタジアムは家から近場であることもあって参加する判断をした。

CLOSING SEREMONY @日産スタジアム (2023/6/4)

今回のツアーはアルバム『CEREMONY』を締めくくるというコンセプトで、大阪のヤンマースタジアム長居にて5/20~5/21、日産スタジアムにて6/3~6/4というそれぞれの土日に2Daysで開催されるものであった。
チケットは見事に全公演ソールドアウト。大阪の4万5000人2Daysと日産の7万人2Daysが売り切れとはバケモノである。

台風の影響

週末に向けて高まる人々を押しつぶすように、ひどいタイミングで台風がやってきた。金曜〜土曜午前にかけて線状降水帯とやらによる異常な大雨からの台風上陸。
ライブイベントへの参加を趣味とする友人が多い私のSNS上には交通網の混乱を不安視する声が溢れる。去年の9月にもこんなことあったななんて思いながら私も諸々を見守る。

悪天候が始まる前に、週末に静岡で開催されるはずだった野外フェス頂-ITADAKI-が中止を発表した。正しい判断、勇敢な決断である。
運営の方々の悲痛なステートメントに無関係の私も胸が痛む。

King Gnu運営の判断は、6/2(金)に行われる予定だった事前物販は13時頃で中止、6/3(土)は物販を全面的に中止、FC(ファンクラブ)ブースとFCガチャのみ予定通りに行うというものであった。
結局土曜は昼から見事に晴れたが、客の人数が人数ゆえに天気が回復したら物販をやりますなんてわけにはいかなかったことは容易に想像できる。
さらに日産スタジアムがある新横浜公園は鶴見川が増水した際に水を一時的に引き込む遊水地であるために一部エリアが使用できなくなったという説明もあった。なるほどそういう理由もあるのだなと。

こうしてライブ自体は無事に開催されたものの、土曜の昼頃まで東京〜名古屋間で新幹線が運休したことなどの交通網の問題からライブへの参加を断念することとなった方も多くいたようだ。遠くから足を運ぶということは相当な大ファンの方であろう。その無念を思うと勝手にこちらも苦しくなる。

境遇は人それぞれ。私はこのチャンスを存分に楽しむしかない。

物販

物販好きの私にとって最高の眺めである。

アパレルに美学を投影しすぎると大衆的なものではなくなる。
ライブの物販はあくまでグッズだというバランス感覚がしっかりと意識された素晴らしいラインナップ。
Tシャツ類もUnited AthleやGildan等大手のブランクボディではなく、どれもこの物販のために企画制作されたオリジナルボディであろう。
独特な生地の切り返しのあるフーディーとか、すごい。
衣類のサイズチャートを見てみると広い身幅に短めの着丈という日本人体型に合ったオーバーサイズノリのやつだ。

ちなみに今回の物販のシステムは以下の通り。
・LINEで取得できる整理券が必要(当日でも申し込めるが、整理番号は当然遅い)
・その日のライブのチケットが必要(大阪・東京ともに金曜に行われる事前物販には土曜と日曜のいずれかのチケットを持っていれば参加可能)
・5/19~6/5の期間限定でオンライン販売あり(ただし届くのは8月)

さすがこれまでに大衆を捌いてきたプロたちによる最先端のシステム。
ここでは整理番号の進み具合がリアルタイムで確認でき、各番号ごとの大方の集合時間も多少の前後はあるものの大きな乱れはなく、売り切れ情報も素早く更新される。現場での混乱を最小限に抑えようという施策が素晴らしい。

整理券はこんな感じ
呼び出し時間になると入場のためのQRコードが表示される
下方に記された集合予定時間は現場の状況に合わせてちょくちょく時間が前後していた

買えたらいいな〜くらいな感じでゆるく物販に臨んだ結果、目当てのクリアケースは見事に全色売り切れ。気になっていたタイダイTシャツを購入。

カレッジレターのタイダイTシャツ
バンド名なし、黒プリントの渋さが最高に良い
サイズはXLで身幅62cm,着丈73cm
バンドロゴのタグをめくると
その裏には常田氏主催のクリエイティブレーベル
PERIMETRONのタグが

開演前

大規模ライブゆえに18時開演に対して開場は16時。
会場の外でお客さんを見渡すと、性別年齢層ともに幅広い。もちろん若年層が圧倒的多数ではあるが、客層が限定的になっていないところが美しいし望ましい姿だと思った。友達や恋人同士、親子、お母様同士、そして私のような単身って感じでいろんな人がいる。日々頑張る我々にはこういう日が必要だよな。

直前の入場は混み合うし座席探しで苦労したら困るので、17時頃に入場。

圧巻の規模
※ "ライブ中は"撮影禁止というアナウンスあり

日産スタジアムで音楽ライブを観るのは2回目で、前回は2016年7月のBUMP OF CHICKENの『Butterfly』期のスタジアムツアー最終日であった。
あの日はアリーナ席でその規模の大きさに圧倒されたが、今回スタンド席に入った際も当然圧倒された。でかすぎる。もうこれ国民行事でしょって感じで。まさにセレモニー。
私の座席は東側の2階席。ステージからの距離も遠すぎず、全体像もしっかり見える良い席であった。前方に行けたら最高だけど、でかいライブは全体像が見えた方が良いところもある。

開演30分くらい前に今回のライブの総合演出を手がけたOSRIN氏からの煽りの前説があり、歓声があがる。周囲のお客さんの声の上げっぷりを見るにノリは良さそうだ。
18時が近づきみんながスマホをしまったりして準備するも見事に10分押し。超大量のお客さんを捌くライブで定時スタートは難しいと思う。想定内、なんつって格好のつく自分ではない。緊張と興奮で落ち着かない。

空は曇り気味だが雨予報はなし。風も涼しく全てが整った。
18時10分 開演。

セットリスト

01. 開会式
02. 飛行艇
03. Tokyo Rendez-Vous
04. Teenager Forever
05. BOY
06. 雨燦々
07. 小さな惑星
08. 傘
09. ユーモア
10. Don't Stop the Clocks
11. カメレオン
常田大希ピアノソロ (『戦場のメリークリスマス』披露)
12. 三文小説
13. 泡
14. 幕間
15. どろん
16. Overflow
17. Prayer X
18. Slumberland
19. Stardom
20. 一途
21. 逆夢
22. 壇上
23. サマーレイン・ダイバー

En01. 閉会式 (常田大希チェロソロ)
En02. 白日
En03. McDonald Romance
En04. Flash!!!

ライブのレポート、感想等

アルバム『CEREMONY』の冒頭の『開会式』が鳴り響く中メンバーが登場すると、自身も周囲も一斉に壊れる。
ライブ映像とかを観ると聞こえる歓声の内訳は奇声や絶叫なのだ。凄まじかった。

聖火が灯り、『飛行艇』で本格的にライブがスタート。
勇敢な彼らの演奏によって会場全体が巨大な怪物のように唸りを上げる。
その後問題がないレベルまで巻き返すが、正直最初の段階では音が非常に悪く、リズムや音が細かい曲だったら何をやっているのかほとんど分からなかったであろう。
そういう意味では冒頭に大きなリズムの楽曲を演奏することは諸々の確認にもなるのかもしれない。

お客さんに合唱を促すことで大衆の緊張を解いてみせた『Tokyo Rendez-Vous』、井口氏の予定外のMCでの「この先何度も思い出したくなるような伝説の日にしよう」という言葉からの『Teenager Forever』『BOY』というポップな楽曲連発で好調に滑り出す。『雨燦々』で大舞台を存分にいかして恍惚をもたらし、続く『小さな惑星』では先ほどまでの幻想から現実に立ち返ったようなシリアスな空気感を作り、『傘』で少しクールダウンする。
改めて振り返ってみてもいい流れだ。
ライブの序盤は観客もまだノリ方を今ひとつ掴めていないため、段階を追って盛り上げるというのは大事な考え方だと思う。
観ている側のリアルなテンション感を察知するセンスがあると同時に、よく考えていてくれている。

MCではタバコを吸ったり常田氏から軽く下ネタが飛び出るほどリラックスした雰囲気で愛嬌もしっかり伝えてみせる。
彼らの結局のところ楽しいお兄ちゃん達な感じはとても魅力的だ。

アコースティックアレンジされた『ユーモア』と『Don't Stop the Clocks』、続く『カメレオン』と落ち着いた楽曲達で日没の時間を彩る。
バンプのライブの際もそうであったが、夕暮れ〜日没の時間を意識した演出は美しい。音楽は元来プリミティブなものだ。自然と一体にだってなれる。

日が落ちて暗くなり始めたところで常田氏によるピアノソロ。SNSでも話題となったが、彼はここで『戦場のメリークリスマス』を弾いた。
今年三月に亡くなった坂本龍一氏への追悼。
ここから彼らはいよいよ神秘的な領域へと進み出す。
『三文小説』『泡』で明快な盛り上がりとは別次元の繊細な緊張感を作り出し、観客を一気に引き込む。

、、、

正直このあたりからブッ飛んでしまって記憶がない。
ホーン隊とストリングスの紹介をしたのっていつだっけ?
スクリーンの映像がノイズまみれのチカチカで視覚からこちらを壊しにかかってきたのはどの曲あたりだっけ?
まあそのへんはいつかリリースされる映像で確認すればいい。
大事なのはその場の全身全霊である。

『Stardom』あたりから少しずつ記憶が戻ってきた。もうわけわかんなくなって、イントロ聴いてもこの曲なんだっけってなったのとか思い出した。楽曲の最後に巨大な液晶いっぱいに「STARDOM」と表示されたあたりで、意識が戻った。
続く『一途』まで、とにかく映像も照明もやばすぎてオールナイトのイベントの朝4時くらいに迎える無敵モードみたいになってしまった。
大衆を迎え撃つライブにしてはとにかく攻めている。
終演後にSNSを見るとこのライブが人生初ライブだったという人がチラホラいたが、刺激が強過ぎたのではないだろうか。慣れているはずの私から見ても容赦なかったもの。

美しい『逆夢』では先ほどまで狂気の中にいた私もライブの終盤の空気感を嗅ぎつけて少し寂しくなってきた。この日最初に泣いたのはこのあたり。

いよいよ『壇上』だ。この文章の序盤で話したようにKing Gnuにハマったのが最近の私はこの曲の持つ意味合いをそこまで認識していなかったが、ファンの方々の言葉を見る限りあれはバンドにとってもお客さんにとっても重い意味合いを持つものだったようだ。
そんな私にだってあの場にいたから分かる。この曲は覚悟のようなものが違った。

『サマーレイン・ダイバー』。
会場中の全員がスマホの灯りをつける。会場にいる7万人の中の1人1人の存在証明のような灯り。
みんな綺麗だった。
この煌めきが嘘じゃなく、確かな現実であることは救いだ。

あまりにも壮大な音像と光景に骨抜きにされた私は座席に座り込んでアンコールをかけた。
大きな液晶に「ライトを消してくれよな」的な緩い語尾のアナウンスが表示されて少しほっこり。なんだそれ。

常田氏が一人でステージにあがり、一人椅子に腰掛けてチェロで『閉会式』を振り絞るように弾く。7万人の観客の前で演奏しているとは思えないほど、彼はひたすら没頭していたように見えた。

続く『白日』。
ヒット曲の宿命的にネタにもされがちな曲とMVだが、我々のやるせなさを投影した現実的な一曲だ。励ますわけでもなく一緒に沈む。そういう優しさの曲だ。
個人的な境遇もあり、どうしようもなく染み渡って、私は泣いた。

いよいよ終わりという空気感。
『McDonald Romance』は全編演奏をギターのみにして会場の全員で大合唱。
メンバーも煽り、ともに歌う。
下から上に少しずつ迫り上がってくるような、呪詛のようなメロディをみんなが歌えるポップ性のあるものにしてしまうのはとても面白い。
個人的に好きな曲だが、やっぱりみんなも好きなんだなって。
音楽的には合唱向きの曲ではないが、そこが痛快なのである。

いよいよ最後の『Flash!!!』
あとはもう騒ぐだけ。『McDonald Romance』の大合唱含め、日本一壮大な打ち上げであった。
ラストには花火がバカスカ上がってみんなで空を見上げる。
ステージからタオルやらタバコやらライターやらを投げて、大舞台から4人は去っていった。
観ているだけのはずの我々にも達成感があったほどのライブだ。メンバーも最高に清々しい気分だったのではないだろうか。

終演後のステージ


ユーモアを交えたアナウンスによる規制退場に従って外に出て、新横浜駅の方へとぞろぞろ歩く。
近場に住む私は一緒に会場を彩った同志達の群れを途中で抜けた。

大きなイベントの後、いきなり一人になってしまった時の寂しさはどこか心地良い。
感受性なんて社会では役に立たないどころか不要に思えることだってあるが、こんな日ばかりは自身のそれを嬉しく思う。

帰り道の途中Twitterを開くと、台風で中止されたあのフェスの会場で出演予定だったアーティストが配信ライブを行ったり現地でカンパありのフリーライブを開催したという知らせがあった。
少しでも報われたなら、よかった。


最後に

King Gnuの4人、殊に常田大希氏は何かと天才という言葉で語られる。
確かにその通りだ。そのセンスや行動力や努力の才能はうっかり自身と比較などしてしまった瞬間途方に暮れるほどのものである。
しかし彼らの才能にただ圧倒されるだけというのはとても勿体無い。
King Gnuの表現や行動に感銘を受けたのであれば、我々も彼らに続かなければならない。バンド名もそういう意味だもんな。
音楽をやれということではない。それぞれの日々でやるべきことやもっとやれること、それをやるということ。

私が今回こうして文章を書いたのも、彼らに突き動かされたからである。
小さくていいから何かしたい、そう思ったのだ。

実はここから先、King Gnuのライブをきっかけに私の中で考えた音楽的な内容の文章を書いていたのだが、内容が思いの外膨れ上がってしまったためそれは別枠で後日投稿しようと思う。
(→2023/6/18追記 こちらの内容は試行錯誤を重ねた結果、内容を大幅に変更した文章としました。King Gnuの話題ではなくなりましたが、こちらも是非。
https://note.com/tcd_93/n/nce1439c216d3 )

お読みいただきありがとうございました。
また何か書いた際にはよろしくお願いします。

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