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クロスカントリー日本選手権展望⑤ 前日会見&学生選手

学生で優勝争いに加わりそうな三浦と川瀬
「この大会を3000m障害につなげて東京五輪を目指して行く」(三浦)

 日本選手権クロスカントリーは2月27日、福岡市の海の中道海浜公園で4部門が行われる。前日会見には、シニア男子選手では三浦龍司(順大1年)が出席。3000m障害で東京五輪代表入りを狙う三浦は「クロスカントリーは苦手。20位以内が目標」と言うが、昨年10月の箱根駅伝予選会や、11月の全日本大学駅伝1区で見せた勝負強さから、優勝候補の一角に挙げられている。
 大学生では全日本大学駅伝2区区間賞の川瀬翔矢(皇學館大4年)への期待が大きい。日本選手権5000mでは4位と、すでに日本トップレベルの実績を残している。本気で優勝を狙いに行くだろう。

●三浦と長門監督が話すクロスカントリーと3000m障害の共通点

三浦龍司は大会前日の26日に行われた記者会見で、「ここでしっかり結果を出し、トラックにつなげていきたい」と、大学入学後初めてとなるクロスカントリー出場の目的を話した。
 昨年7月のホクレンDistance Challenge千歳大会3000m障害で、高卒直後ながら8分19秒37の日本歴代2位をマークし、長距離・駅伝ファンを驚かせた。世界陸連が新型コロナ感染拡大を考慮し、東京五輪参加標準記録の適用期間外としていた時期だが、標準記録の8分22秒00を上回った。
 今大会出場は練習の一環であり、三浦自身も「20位以内。記録は30分半」と、大きな目標は立てていない。だがルーキーながら全日本大学駅伝1区で区間賞を取った勝負強さは、多くの関係者が認めるところ。
 青木涼真(Honda・23)、滋野聖也(プレス工業・24)と3000m障害で日本トップレベルの選手が他にも出場するが、順大の長門俊介駅伝監督は同種目の選手には「負けてはいけない」と話す。
「クロスカントリーは集団が密集するので体がぶつかり合う種目です。コースに起伏があってペースの強弱もあるところが、3000m障害でも起こる部分です」
 三浦も「3000m障害で東京五輪を目指していく」ための今大会と認識している。
「3000m障害もハードルがあってフラット種目ではありません。後半に脚力や瞬発的なスピードを残せるかどうか、というところは似ています。そのための練習をしてきたので、そこは意識して走りたい」
 順位よりも3000m障害につなげるため、自分の走りに集中する。結果的にそれが良い走りとなれば、優勝争いに加わる可能性は十二分にある。

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●夏に三重県内の試合を連戦して強化した川瀬

 川瀬翔矢(皇學館大4年)を指導する日比勝俊監督は、「ここで優勝することで5月の日本選手権10000mの参加資格を得られます」と、優勝に意欲的なコメントをした。
 昨年12月の日本選手権は、5000mと10000mにエントリーできたが、同じ日に2種目が行われるため5000mに絞った。昨シーズン前半のプランでは、10000mの方に重点を置いていたが、日本選手権は10000mの出場選手が多く、川瀬は持ちタイムの低い選手が走る組になりそうだった。
 そういった事情で「本当の勝負ができる5000m」にターゲットを変更した。そこで順位(4位)も、記録(13分28秒70)も、しっかりとることができた。
 ただ、五輪イヤーで重点的にやりたいのはやはり10000mだ。5月の日本選手権標準記録はすでに突破しているが、出場人数を絞るために今後、標準記録が上げられる可能性がある。日本選手権クロスカントリーで資格を取っておけば、シーズン序盤を標準記録の変動に左右されずにすむ。
 皇學館大は東海地区の大学のため、箱根駅伝に出場することはできない。関東の大学に比べ選手の持ちタイムは低く、川瀬は実業団の合宿に参加することが多かったが、昨夏は新型コロナ感染の社会状況で、以前のように県外への移動ができなくなった。そこで考えたのが、三重県内の試合に練習代わりに出場することだった。
 7月25日からの三重県選手権は1500m2本と5000m1本、8月8日の伊勢度会選手権は1500m2本、さらには同じ日に練習でも1500mと計3本を走った。その2日後の8月10日には、名張市競技会(第1回)で800m・1500m・3000m・5000mと4種目を走っている。さすがにタイムはよくないが、同23日の名張市競技会(第4回)は1500m3分55秒35、3000m8分19秒59と実際の試合に近いタイムで走った。
 4月からHondaに入社する川瀬が、地元へ恩返しする意味合いもあった。
「高校生たちも県外への遠征が禁止になっていました。高校の先生方とも相談して、今回川瀬がとった方法でも、秋にしっかり走れるところを見せられれば、高校生たちのモチベーションになる」
 9月の日本インカレ5000m2位、11月には全日本大学駅伝2区区間賞と10000mの自己新(28分10秒41)、そして12月の日本選手権5000m4位と快進撃を見せた。箱根駅伝でひと休みするケースもある関東の学生と違い、練習をしっかり継続している。
 クロスカントリーの実績はないが、川瀬が良い流れで日本選手権クロスカントリーに臨もうとしている。優勝争いに間違いなく加わってくるだろう。

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●箱根で好走した池田の恩師は「弱くはない走り」を期待

 箱根駅伝で活躍した選手たちも多数出場する。その代表が2区で区間3位(区間日本人トップ)の池田耀平(日体大4年)や、1区区間2位の塩澤稀夕(東海大4年)である。
 池田は箱根駅後にひと息ついたところがあり、練習がしっかり継続できてきたわけではない。玉城良二監督との話し合いでも、明確に順位やタイムを狙える状態ではない、と話している。「今の状態でベストを尽くして、きっかけにできれば」と玉城監督。
 ただ、3年時までは不得意だった上りの走りを、箱根駅伝2区対策の合宿などでしっかり行ってきた。その結果、2区で日本人トップと快走している。その成果はクロスカントリーでも出したいところだろう。
 12月の日本選手権10000mでも27分58秒52と、27分台をマークした。日本選手権で快走した選手の多くが、正月のニューイヤー駅伝や箱根駅伝に調子を落としてしまったが、池田は駅伝でも結果を出した。
「狙って走れる強さのある選手です。今回もしっかりまとめて走れば、次につながるはず。強さは見せられなくとも、弱くはないところを示してほしい」
 池田がどんな走りをするかに注目だ。
 塩澤稀夕も箱根駅伝で1区区間2位と好走した。区間賞こそ逃したがトラックでも駅伝でも、どの大会でも上位に入り続けてきた。その塩澤が4月には富士通に入社する。
 実は富士通に入社する直前の大学4年生は、過去2年連続で今大会に優勝しているのだ。2年前が当時法大4年だった坂東悠汰(24)、昨年は國學院大4年だった浦野雄平(23)で、今年のニューイヤー駅伝では坂東が3区(区間6位)、浦野がアンカーの7区(区間賞)で富士通の優勝に貢献した。
 池田と同じで塩澤も練習がしっかり積めているわけではないようだが、駅伝優勝チームの新戦力から目を離すわけにはいかない。

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TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

明日午後3時30分 TBS系列
『クロスカントリー日本選手権』


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