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日本選手権⑤3日目速報&4日目展望

男子3000m障害で三浦が日本新。3位までが東京五輪代表内定
男子400mハードルでも優勝の黒川と2位・安部が代表入り

●100mハードルの寺田が11年ぶり、日本選手権最長ブランク優勝

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 日本選手権2日目(6月25日・ヤンマースタジアム長居)は9種目の決勝が行われ、男子3000m障害で三浦龍司(順大)が8分15秒99の日本新記録で優勝。残り2周の水濠を越えたときに転倒したが、すぐさま起き上がって150mも行かないうちに逆転。さらに後続を引き離す圧倒的な強さを見せた。2位の山口浩勢(愛三工業)、3位の青木涼真(Honda)も五輪参加標準記録を突破し、3人が東京五輪代表に内定した。三浦は5月のREADY STEADY TOKYOでの8分17秒46に続き自身2度目の日本新記録だった。
 男子400 mハードルは黒川和樹(法大)と安部孝駿(ヤマダホールディングス)が終盤でデッドヒートを展開。黒川が48秒69で逃げ切り、安部が48秒87で2位。2人とも標準記録突破者で、東京五輪代表を内定させた。3人目の代表は7月1日に世界陸連が発表する世界ランキングで、この種目の出場人数枠(40人)に今大会3位の岸本鷹幸(富士通)が入れば内定する。岸本が出場人数枠に入らなかった場合、標準記録突破済みの山内大夢(早大)が選ばれる。
 男子棒高跳は竹川倖生(丸元産業)が5m70の日本歴代5位タイで優勝。現在世界ランキング日本人最高位の山本聖途(トヨタ自動車)は5m60で3位タイ。この種目の五輪出場枠(32人)ぎりぎりの位置にいる。山本は「行けることを信じて、今日からオリンピックに出場するつもりで準備していきます」と力強く話した。
 女子3000m障害は地元・大阪出身の山中柚乃(愛媛銀行)が、9分41秒84の日本歴代2位で優勝。世界ランキングも、この種目の出場人数枠の45人以内に浮上した可能性がある。
 女子100mハードルは寺田明日香(ジャパンクリエイト)が13秒09(±0)で優勝。五輪標準記録の12秒84は突破することができなかったが、世界ランキングで出場人数枠(40人)以内の34位にいる。出場資格を得られれば、五輪代表に決まる。
 また、11年ぶりの優勝は日本選手権史上最長ブランク優勝。「私だけでなく、みんなの力があったから」と話した寺田。多くの人を引き込む魅力が寺田にあるから成し遂げられた最長ブランク優勝だった。
【三浦龍司】
「(転倒は)着地のタイミングがズレて、前に体が行ってくれなかった。転んでしまったことで焦りが出て、予定よりも早く、1周以上距離が残っていましたがスパートをかけました。他の選手との距離をスクリーンで見て、あまり離れていなかったので最後までがむしゃらに走りました。東京五輪は8分10秒台前半を出して、決勝に進むことが第一目標です。地元開催なので多くの人に自分の走りを見てもらい、3000m障害の認知度も上げたいと思っています」
【黒川和樹】
「アップ中は体にもけっこう来ていて、メンタル的にもきつくなってきていました。自分のレースをすればいいと周りから言ってもらい、自分のレースで勝ちたいと思ってスタートラインに着きました。最後、安部さんに並ばれそうになったところは、力まず、自分の走りをすれば勝てると言い聞かせ、冷静に走りました。400 mハードルは世界に通用する種目といわれています。自分が決勝に残って良い流れを作りたいと思っています」

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●サニブラウン欠場の200m、予選で村竹が標準記録突破した110mハードル

 最終日の4日目は、3日目に予選が行われた男子200mと110mハードルをはじめ、東京五輪代表選手が内定しそうな種目が多数行われる。
 残念ながら桐生祥秀(住友電工)は右アキレス腱の痛み、サニブラウン(タンブルウィードTC)は左太腿違和感のため200m予選を欠場。桐生の個人種目での代表入りは、辞退者が出ない限りなくなった。サニブラウンは200mの標準記録を破っているので、今大会で標準記録突破者や、世界ランキングで出場人数枠に入る選手が3人を越えなければ、200mで代表入りできる。
 予選では唯一の標準記録突破者となった小池祐貴(住友電工)、世界ランキングで出場人数枠内にいる飯塚翔太(ミズノ)と山下潤(ANA)が、順当に決勝へ駒を進めた。
 優勝争いは昨年優勝の飯塚を中心に小池、山下、100m2位のデーデー・ブルーノ(東海大)で繰り広げられそうだ。予選1組は山下と小池が同タイムで1、2位、2組は飯塚が、3組はデーデーが20秒76(-0.7)の自己新で1位通過。100mに続きデーデーが不気味な存在になってきた。
 盛り上がりそうなのが110mハードルだ。予選では2組(+0.5)の村竹ラシッド(順大)が13秒28の学生新で、13秒32の五輪参加標準記録を突破した。この種目の突破者は金井大旺(ミズノ)、髙山峻野(ゼンリン)、泉谷駿介(順大)に続いて4人目。
 金井、泉谷は予選を余力を持って勝ち進んだが、髙山は大会直前に背中を痛め、痛み止めの注射を打っての出場になった。2組で13秒63の3位。かろうじて予選は通過したが、苦しい戦いになりそうだ。
 標準記録には0.05秒届かなかったが、石川周平(富士通)が13秒37(+0.3)の自己新と好調。世界ランキングでも出場人数枠(40人)にあと少しの位置につけている。3位以内に入れば代表入りの可能性はある。
 金井、泉谷、村竹の3人は前半からスピードに乗るタイプ。唯一の後半追い上げ型が石川だ。実質的に4分の3を目指す戦いは、かなりの接戦になりそうだ。

●男子走幅跳・橋岡に日本新の期待

 4日目の女子5000mには、5000mの田中希実(豊田自動織機TC)、10000mの新谷仁美(積水化学)と廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)と、五輪代表に内定している3人がエントリーしている。だが2日目の1500mでも優勝した田中は、800 m決勝の35分後に5000mという過密スケジュールになる。
 田中は3日目の800 m予選を通過した後に、「5000mまで走れるのが理想ですが、体の状態が一番なので、800mのゴール後、トータルで考えて5000mを走るか決めたい」と話した。
 仮に出場できても廣中や新谷が、五輪標準記録(15分10秒00)突破を目指す萩谷楓(エディオン)らとハイペースで飛ばす。さすがの田中も先頭集団に付ききるのは難しい。東京五輪につながる走りをすることが目的になる。
 日本記録が期待できるのは男子走幅跳の橋岡優輝(富士通)だ。3月の日本選手権室内、4月の織田記念、5月のREADY STEADY TOKYOと、助走に苦しんでファウルを連発した。それでも日本選手権室内は8m19の室内日本新、READY STEADY TOKYOは8m07(+1.8)で2位に大差をつけた。そして6月6日のデンカチャレンジでは1回目に8m19(-0.2)、2回目に8m23(+1.3)と最初の2回で勝負を決し、ファウルの不安がなくなっている。
 8m40の日本記録更新は、5割前後の確率だろう。
 この種目は橋岡と城山正太郎(ゼンリン)、津波響樹(大塚製薬)の3人が五輪標準記録を突破している。3人が3位以内に入れば五輪代表に内定する。

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TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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