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注目の初マラソン選手。10000m前日本記録保持者の村山紘太は2時間7分台が目標【別大マラソン2023プレビュー②】

 新人の登龍門と言われる大会にふさわしいメンバーになった。第71回別府大分毎日マラソン(以下別大マラソン)が2月5日、大分市高崎山・うみたまご前をスタートし、別府市を折り返してジェイリーススタジアム(大分市営陸上競技場)にフィニッシュする42.195kmのコースで行われる。
 前回は初マラソンの西山雄介(トヨタ自動車・28)が優勝。タイムも2時間07分47秒の初マラソン日本歴代2位(当時)とレベルが高く、世界陸上オレゴン代表にも選ばれた。
 今年期待が大きいのは10000m前日本記録保持者の村山紘太(GMOインターネットグループ・29)で、西山が昨年マークした大会記録更新も視野に入れる。

●キプチョゲの“2時間切り”をアシスト

 村山紘太が当時の10000m日本記録、27分29秒69をマークしたのが15年11月。その年8月の世界陸上北京は5000mで、翌16年のリオ五輪は5000mと10000mの2種目で出場した。トラックでは日本トップのスピードを持つランナーだった。
 その後はトラックの代表よりも、世界ハーフマラソン選手権の日本代表入りしたり、東京マラソンのペースメーカーを務めたりした(20kmを59分29秒のハイペースで通過したこともあった)。エリウド・キプチョゲ(ケニア・38)が、マラソンで1時間59分40秒を記録した19年の非公式レースでは、人類初の“2時間切り”をアシストした。
 学生時代には箱根駅伝予選会で日本人トップになった選手。トラックの走りが強烈だったが、ロードも苦手ではなかった。今年もニューイヤー駅伝1区の区間賞を取っている。フルマラソンに挑戦して不思議はない。
「一発でMGC(今年10月開催のマラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)出場権を取ることが目標です」と、GMOインターネットグループの亀鷹律良監督。
 MGC出場権は日本人3位までなら2時間10分00秒以内、4~6位なら2時間09分00秒以内、順位に関係なく2時間08分00秒以内なら得られる。「去年出た大会記録(2時間07分47秒)更新」も亀鷹監督は期待している。8月の世界陸上ブダペスト派遣設定記録の2時間07分39秒突破も、十分射程圏に入る。

●大迫型のマラソン練習で

 トレーニングは昨年の夏から「長い距離への取り組み方がよくなった」と亀鷹監督。
「以前は30kmとかのメニューをすごく嫌がっていました。嫌がるということは、スタミナがないことを本人が感じていたからです。そういった練習を積極的にこなせるようになり、スタミナを貯め込めるようになった」
 ただ、村山紘太のマラソン練習は定番メニューの40km走(距離走)は1本も行っていない。2時間20分くらいのジョグは行うが、ペースはまったく速くない。距離走としては32~33kmまでしか走らないという。
 これはGMOインターネットグループに大迫傑(Nike)が、Playing Directorとして参画した影響もある。「村山が大迫のプランの中で練習を組み立てるようにした」と亀鷹監督。「距離で追い込み過ぎないようにして、1マイル(約1609m)とか2マイルのロングインターバルを、トラックシーズンより少し落としたくらいの速いペースで行ったりします」
 村山がもともとスピードが日本トップの選手で、持久力もそれなりにあった。タイプとしては大迫と同じだったことも、その練習を可能とした。
 レース展開は、得意とするラスト勝負に持ち込むプランで臨む。ずっと先頭集団でレースを進め、誰がスパートしても食い下がる。そしてラスト1kmを切ってから、ここぞというタイミングでスパートする。「本人もそういうイメージで、それまでは余計な動きはしないと思いますよ」
 ペースメーカーは1km3分00秒、5km15分00秒で30kmまで先導する。昨年の西山は30kmを1時間30分31秒で通過した。そこから選手同士が牽制して、多少ペースが落ちても2時間7分台は出る。終盤が追い風になるという予報もあるが、そうなれば2時間6分台の優勝タイムも期待できる。
 残り1km地点で村山が先頭の選手に食い下がっていれば、初マラソン優勝と世界陸上代表入り(代表決定は全選考競技会終了後)が再現される。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト


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