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2021年8月1日放送「風をよむ~選手たちのメッセージ」

実況「日本フェンシング界、悲願の金メダル~!」

連日、日本のメダルラッシュに沸く東京オリンピック。そうした中、競技の勝敗とは別に、アスリートたちが発するメッセージが大きな注目を集めています。

サッカー女子、なでしこジャパン2戦目となるイギリス戦。キックオフ直前、両チームの選手全員がピッチに片膝をついたのです。

なでしこジャパン・キャプテン熊谷紗希選手「人種差別について考えるきっかけになり、全員で話しあって決めた」

このポーズは、人種差別への抗議を示すもので、今大会、イギリスの代表チームが始めると、対戦相手が同調。共感した他国のチームへと次々その輪が広がったのです。

他にも、こうした「差別」への抗議を表明する様々な動きが、これまでの大会期間中、見られました。

同じくサッカーでは、オーストラリアのチームが、試合前、差別に苦しむ先住民族アボリジニの民族旗を掲げて、試合に臨みました。

また体操の女子予選では、コスタリカのアルバラド選手が、床の演技の最後で、膝つきに加え、拳を突き上げるようなポーズを組み合わせて、話題を呼んだのです。

アルバラド選手「全ての人が同じ権利を持っているのは、とても重要です。
私たちはみんな同じ、みんなが美しいのですから」

実は1968年のメキシコオリンピック、男子 200mで1位と3位の黒人選手が、表彰台で拳を突き上げて人種差別に抗議。コスタリカの選手はその姿にならったのです。

しかし、当時、抗議した2人の選手は、大会から追放…。その訳は「オリンピック憲章50条」。「いかなる種類のデモンストレーションも、あるいは政治的、宗教的、人種的プロパガンダも許可されない」とされていたからです。

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それなのに、なぜ今回、こうした行動が頻繁に見られるのか。それはIOC=国際オリンピック委員会が、先月、50条を巡る新たなガイドラインを示し、「国や組織、人を標的にしないこと」などを条件に、一部規制を緩和したからです。

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こうした変化の背景にあるのが…
2020年5月、アメリカで黒人のジョージ・フロイドさんが警察官に拘束され死亡した事件をきっかけにして、全米に広がった抗議デモ。そこでは膝をつくポーズが、抗議の象徴となりました。

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その後、こうした人種差別や不平等への抗議運動は世界中に拡大。オリンピックもまた、そうした動きと無縁ではいられなくなったのです。

さらに今回の大会では、「人権」を抑圧するような行為についても、抗議ともとれる動きが見られました。

フェンシングで、香港がチームとして、中国返還以降、初の金メダルを獲得。表彰式では香港の旗が掲げられる一方、中国国歌が流れると…

香港市民「私たちは香港!私たちは香港!」

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中継映像を放送していた香港のショッピングセンターでは、市民たちから「私たちは香港」という声が湧き上がり、中国国歌はかき消されたのです。

また、バドミントンの男子シングルスの試合では、香港代表の選手が、独自の黒いウエアで出場。すると香港の親中派関係者が、「黒は民主派を連想させる」と批判するなど、物議をかもす事態も起きました。

今回、大会のビジョンとして「多様性と調和」を掲げた東京オリンピック。開会式では、男女1人ずつの旗手が、各国選手団を先導。また、参加する女子選手の数や、男女混合種目の数も史上最多となりました。

さらに、「LGBTQ・性的少数者」であることを公表した選手も、170人以上。史上最多にのぼっているのです。

重量挙げ女子では、男性から女性に性別を変更し、トランスジェンダー  を公表した、ニュージーランドの選手も史上初めて、出場します。

人種、民族、あるいは性的な差別を巡る問題と、向き合い始めたオリンピック。

しかし、大会前には女性蔑視発言や、演出を巡り、女性の容姿を侮辱する発言が出るなど、数々の騒動も起きました。

男子シンクロ高飛び込みで、自ら同性愛者であることを公表したイギリスの選手は金メダルを獲得した試合後の会見で、こう語っています。

トーマス・デーリー選手「若いLGBTの皆さん。たとえ今、どんなに孤独だと感じても、あなたは一人じゃない。あなたは何だって達成できるということを 知って欲しい。僕は自分がゲイであり、オリンピック・チャンピオンであると 言えることに大きな誇りを感じています」

熱戦が続く東京オリンピック。「多様性と調和」とは何か、改めて問いかけています―

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