2019/6/2 風をよむ「無差別殺傷事件」
・多発する「無差別殺傷事件」
・多くの動機は「誰でもよかった」
・「拡大自殺」とも呼ばれる事件、犯人に見られるのは深い絶望感や孤独感
街録「どうしたら良いのか、私も今本当に分からなくて…そんなことに遭遇したら多分自分でも防げない」「解決できない憤りを結局は他人にぶつけて…自分勝手っていえば自分勝手だけど」
火曜日、川崎市で小学生ら20人が包丁を持った男に襲われ、2人が殺害された事件。犯人は現場で自殺したこともあり、今のところ、詳しい動機の解明には至っていません。
またしても起きた、「通り魔」による無差別殺傷事件。こうした事件はこれまでも幾度か繰り返されてきましたが、その中でしばしば耳にする言葉があります。それは…「誰でもよかった」。
今から20年前の1999年、東京池袋の繁華街で白昼、男が包丁と金槌で通行人を襲い、2人の女性が死亡、6人が重軽傷を負った事件。犯行に及んだ造田博死刑囚は、「誰でも良かった」などと供述。社会を震撼させたのです。
さらに…2008年3月、茨城県土浦市で、男が民家で人を刺し、その後
刃物で次々と人を襲い、2人が死亡、7人が重軽傷を負った事件。金川真大元死刑囚は「誰でもよかった、死刑になりたかった」などと供述。
またこの年の6月には、東京のJR秋葉原駅近くの交差点にトラックが突入。男は通行人を次々とはね、その後、無差別に人を刺して7人が犠牲に。
犯行に及んだ加藤智大死刑囚は「世の中がいやになった。誰でもよかった」などと供述したのです。
こうした事件について、犯罪心理に詳しい影山氏は…
影山任佐・東京工業大学名誉教授(犯罪精神病理学)
「‘誰でもよかった’っていうのは近年目立つ犯行動機の大量殺人事件なんですけれども情報化社会の人間関係が希薄なところで、孤独感、孤立感が含まれていたというところが大きな要因になっている。アメリカの銃乱射事件も近年頻発しているが、やはり誰でもよかったという、大量殺人同時型の典型的な例、現代的な犯罪の一つの類型」
アメリカでも多発する無差別殺傷事件…
1991年、アメリカ・テキサス州キリーン市で、お昼時、混み合うカフェテリアに男がトラックで突入し、およそ200人の客に銃を乱射し、23人を殺害。その後、犯人は自殺しました。
また1999年には、アメリカ・コロラド州のコロンバイン高校で、少年2人が同級生らに銃を乱射し13人を殺害。少年2人は犯行後に自殺しています。
さらに日本時間のきのう早朝…
現地時間の5月31日午後、アメリカ・バージニア州、バージニアビーチ市の庁舎敷地内で、職員の男が銃を乱射。男は駆けつけた警察官と銃撃戦となり射殺されましたが、市の職員ら12人が死亡しました。
市の職員「警察が駆けつけるまではオフィスにとどまるようにと言われた。部屋には20人くらいいてみんなでバリケードを作ったんです」
こうした無差別に多くの人の命を奪う事件の動機を巡って、ここ最近、よく聞かれる「拡大自殺」という言葉があります。
自殺願望を持った者が、道連れとして複数の人を殺害するなどし、自ら命を絶つか、死刑になること、あるいは警察に射殺されることが分かっていながら犯行に及ぶような行為などとされます。
「拡大自殺」とも呼ばれるこうした通り魔事件で、犯人に見られる深い絶望感や孤独感。さらにそれを深めるような、気がかりなデータがあるのです―
2018年、イギリスのエコノミスト誌などが日米英3か国で18歳以上を対象に行った「孤独」に関する意識調査があります。
「孤独は自己責任」であると考える人が、アメリカでは23%、イギリスでは11%だったのに対し、日本では44%と高い値に。
また、孤独を感じている人が、家族や周囲と会話する頻度も、アメリカやイギリスに比べ、日本は低いという結果が出ています。
孤独はあくまで自分の責任。周囲との会話も乏しい中、絶望感を深め、自殺願望まで抱いた者が大きな犯罪に至るとしたら…。
今回の川崎市の事件。容疑者は80代の伯父、伯母と同居していましたが、会話はほとんどなかったといいます…。