2021年3月21日放送 風をよむ「世界のワクチン事情」
バイデン大統領(18日)「あす、政権発足から58日目にアメリカ人に1億回のワクチンを投与するという目標を達成できて誇りに思う」
バイデン政権は19日、政権発足からのワクチン接種が一億回に到達したと発表。政権発足時、100日以内で一億回とした目標を、60日足らずで達成したことに自信を示したのです。
とはいえ、新規感染者はといえば、会見当日の18日だけでも、1日で6万人を超えており、まだまだ沈静化したとはいえない状態。
一方で、世界最速でワクチン接種を進めてきたイスラエルは、接種率がおよそ6割に、新規感染者もピーク時の1日1万2000人から1300人へと減少しています。
さらに、このイスラエルを上回る速さでワクチン接種を進めてきた国が。南米の国・チリです。チリではワクチン接種が2月初めには5万7000人でしたが、一ヶ月半後の現在では、544万人とおよそ100倍に急増。
これまでに1回でも接種した人の割合は、28.4%と、人口の4分の1を越え、接種率では世界第3位。
また人口100人当たりの1日の平均接種回数では、今月初旬に、世界最速といわれたイスラエルを抜き、世界1位に躍り出ました。
こうしたワクチンの成果を背景に、この3月から、およそ1年ぶりに、初等・中等教育の対面授業が再開されています。このような事が可能になった背景には、全方位外交がありました。
チリはこれまで、FTAなどの貿易協定で、アメリカ・中国など、30以上の国や地域とのネットワークを構築。その関係を使って、ワクチンを調達してきたのです。
チリ・ラフロリダ市・カーター市長(3月)「政府はワクチン購入でとても良い仕事をしました」
さらにアジアでは・・・。接種者が3200万人に達し、アメリカに次ぎ世界第2位のインド。実はコロナ禍以前から、世界で流通するおよそ6割のワクチンを製造。その実績からアストラゼネカのワクチンを、早くから製造できたのです。
駐日インド大使(1月)「生産コストが非常に安い。1回300円ほどです」
現在、新規感染者は1日4万人以上と接種の効果はこれからのようですが・・こうした中、国連のグテーレス事務総長は・・
国連・グテーレス事務総長(2月17日)「国際社会はワクチンに関してモラルを試されている」
イギリスなどの国際研究チームは、供給可能なワクチンの70%が、世界人口の16%にすぎない高所得国に買い占められていると、ワクチン格差に警鐘をならしました。
こうした格差を解消するための仕組みが、コバックス。世界全体の感染を抑えるには、途上国への支援が不可欠として、WHOを中心に途上国へのワクチン供給を目指してきました。
これまでは、資金不足で思うに任せない状態でしたが、先ごろ、G7=主要7カ国が、75億ドルおよそ8100億円もの支援を表明しました。
しかし、世界で接種が進む一方で、感染者数は再び増加傾向に。
フランスでは、1日の新規感染者が17日に3万8000人を超え、パリなどが3度目のロックダウンに入りました。新規感染者の7割が変異ウイルス感染者だといいます。パリなどが3度目のロックダウンに入りました。新規感染者の7割が変異ウイルス感染者といいます。
日本で、ワクチン接種が始まってから1ヶ月。接種者は医療関係者らおよそ55万人で人口の0・44%です。
世界の接種状況をまとめた「アワ・ワールドインデータ」によると、日本がワクチンを接種した回数は、G20=主要20カ国中、下位に甘んじています。なぜ、こんな事になったのでしょう。
かつては水疱瘡(みずぼうそう)の原因となる水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルスのワクチンを世界に先駆けて開発するなど先進的な存在だった日本。
しかしその後、いくつかのワクチンによる健康被害が発生。人々の中に、ワクチンに対する不信感が広まりました。
また、製薬会社にとっても、健康被害で集団訴訟が起きた場合の、多額の補償金などリスクが大きく、ワクチン開発に消極的になりました。
こうした歴史が、ワクチンは輸入で、という空気の一因となりました。
今回のコロナワクチンについても、アナフィラキシーなど、様々な副反応の症例が報告され、また変異ウイルスの中にはワクチンの有効性が下がるものもある、という研究結果も報告されています。
激しいワクチン争奪戦の中、EUが囲い込みの動きを見せたことで日本への供給が心配された時期もありました。
しかし、ここにきて、日本にもEUの承認が得られ次第、6月末までに、 およそ1億回分のワクチンが確保される見通しとなりました。
コロナ禍の下、日本社会はワクチンにどう向き合っていくのでしょう。
街の声(女性)「副作用が心配なので、ぜんそくなので、いろんなことが心配」
街の声(男性)「できるだけ早く打てればいいなと。もうちょっと長生きしたいから」