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2021年11月21日放送 風をよむ「壁再び・・・」

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国境付近の森

一面、闇に覆われた森の中。照らし出されたのは、有刺鉄線のそばで座り込む多くの移民の姿。

ベラルーシのポーランド国境周辺に多くの移民が押し寄せている問題で、新たな動きがありました。

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15日、ポーランド政府は、ベラルーシとの国境に「壁」を建設すると発表。来年夏までの完成を目指すとしています。

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国と国、あるいは異なる民族による争いが起きるたびに、しばしば築かれてきた「壁」。人類の歴史は、常にこうした「壁」とともにありました。

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紀元前3世紀、秦の始皇帝が大増築した「万里の長城」。異民族や外敵の侵入を防ぐために建設され、全長2万キロを超えるとされる長大な壁です。

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ヨーロッパでも、ローマ帝国の時代、やはり外敵の侵入を阻止するため、様々な「壁」が築かれました。

そして現代になって、私たちの記憶に深く刻まれた「壁」と言えば…

冷戦の時代、ドイツを東西に分断した「ベルリンの壁」。1961年、東ドイツは西ドイツへの亡命を阻止するため、155キロにも及ぶ壁を築いたのです。

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朝鮮戦争

さらに朝鮮半島では1953年、朝鮮戦争の休戦協定で「軍事境界線」が引かれ、非武装地帯が設けられました。

そして、1989年・・・

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ベルリンの壁崩壊

冷戦終結に伴ってベルリンの壁は崩壊。しかし、それで壁がなくなることはありませんでした。

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以降、目立ったのは、宗教や民族の対立による壁の建設です。

壁に石を投げつける市民

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2002年、イスラエルは「パレスチナ過激派のテロ対策」を理由にヨルダン川西岸に「分離壁」の建設を開始しました。

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さらに、近年、移民・難民対策としての、「壁」の建設も相次いでいます。

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2015年、中東などからドイツを目指す難民の通り道となっていたハンガリーが、セルビアとの国境沿いに全長175キロのフェンスを建設。

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難民「なぜゲートを開けてくれないんだ。生きるためにただ通りたいだけなのに」

さらに、移民対策としての「壁」として、波紋を広げたのが…

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トランプ大統領「壁なしには国境の安全は得られない!」

当時のアメリカのトランプ大統領が、メキシコとの国境に不法移民を防ぐ狙いで「巨大な壁」の建設を行ったのです。

当時のアメリカ市民の声「不法移民は自分の生活の問題。誰かが国境を越えてくれば、逮捕するのにもカネがかかる」

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世界の分断の象徴だった「ベルリンの壁」崩壊から32年。ところが、壁の数は減るどころか、実は増えているのです…

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なぜ、世界各地で今なお「壁」が建設されているのでしょうか?

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カナダ・ケベック大学が行った調査によれば、ベルリンの壁が崩壊した当時、世界の国境などの境界線に存在した壁は20以下。ところが、その数は、現在、75にまで増加しているといいます。

調査に当たったケベック大学のエリザベト・バレーさんは…

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カナダ・ケベック大学 エリザベト・バレー所長「グローバリゼーションに対する不安が壁建設の根底にある。国家の安全保障というよりは、国家としてのアイデンティティに対する不安。為政者にとって、壁は道具。選挙の時にもアピールしやすい。 今後も壁は間違いなく増える」

世界に増えつつある「壁」。それは物理的なものに限りません。

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米・ヘイトクライム

例えば人種やジェンダーによる差別といった、見えない心の壁。今も世界中で多くの人々が身のまわりに壁を築き、排除と分断に走っています。さらに…

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エリザベト・バレー所長「今後、気候変動によって、移動を余儀なくされる人々が増えるはずです。壁の建設では、問題解決にならず、国際的な連携が生まれない限り人々の間に分断をもたらします」

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去年行われた、壁が崩壊し、東西ドイツが統一して30年の記念式典。年内にも政界を引退する予定のメルケル首相は、近年相次ぐ移民排斥などの動きについて、こう語りました。

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ドイツ・メルケル首相「違いを本当に克服するための勇気、社会全体の団結を目指して、それに取り組む勇気が必要」

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しかし、その言葉とは裏腹に、政治的な駆け引きを背景に、ポーランドとベラルーシの国境沿いに壁の建設が決まるなど、改めて壁をなくす難しさが私達に突きつけられています。

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