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2020年9月13日「風をよむ~抗議するアスリートたち」

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2年ぶり、2度目の全米オープンテニス制覇を成し遂げた大坂なおみ選手。彼女が準々決勝でつけたマスクに記されていたのは…

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5月、白人警察官に暴行を受け死亡した黒人男性・ジョージ・フロイドさんの名前でした。

大坂なおみ「名前入りマスクは7種類ありますが、7枚では足りないのが悲しいです。決勝まで進んで全員の名前を見せたいです」

大坂選手は、人種差別に抗議するため、黒人犠牲者の名前入りマスクを7枚用意し、決勝にまで勝ち進んだのです。

このフロイドさんの事件を巡っては、アメリカ各地でデモが行われ、
抗議の声はスポーツ界にも広がりました。

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Black Lives Matterのデモ「黒人の命も大切だ!」

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6月、NBA=アメリカ・プロバスケットボールの八村塁選手はチームの選手とともに抗議デモに参加。

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アメリカ・メジャーリーグの大谷翔平選手や、テニスの錦織圭選手が、SNS上に投稿した黒い画面。抗議に賛同の意を示したのです。

さらに…

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8月23日、アメリカ・ウィスコンシン州で黒人男性、ジェーコブ・ブレークさんが、警察官に背後から銃撃され、重傷を負った事件。

この事件に抗議するため、8月26日、ウィスコンシン州を本拠とするNBAの「ミルウォーキー・バックス」は試合をボイコット。それを受けNBAは、この日行われる予定の試合すべてを延期したのです。

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ミルウォーキーバックス ジョージ・ヒル選手(8月26日)「ジェーコブ・ブレーク氏の事件を法廷で裁き、彼を撃った警官に責任を問うよう求める」

またアメリカのメジャーリーグでは先月27日のマーリンズ対メッツ戦で  試合前、両チームが黙とう。ホームベースには、「BLACK LIVES MATTER(黒人の命も大切だ)」と書かれたTシャツが置かれます。

選手たちはこのあと球場を立ち去り、試合をボイコット。メジャーリーグ全体でも抗議のため、先月26日からの3日間で11試合が延期されたのです。

スポーツ選手が、人種差別などの政治的・社会的状況に抗議して、行動に示すといった行為は、実はこれまでにも見られました…。

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2016年、ブラジル・リオデジャネイロで開かれたオリンピック・男子マラソン。銀メダルを獲得したエチオピアのリレサ選手は、ゴールの際、両腕を交差させるポーズを取り、大きな話題となります。

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当時、エチオピアでは、最大民族のオロモ人が、政府による弾圧を受けており、オロモ人のリレサ選手は抗議の意思を示したのです。しかし、この行動は物議を醸します。

実はスポーツ界は、これまでこうした行動について、きわめて厳しい姿勢を見せたことがあったのです―。

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1968年のメキシコオリンピック。男子200mの表彰台に上がった1位と3位の黒人選手は、黒い手袋をはめた拳を突き上げ、黒人差別に抗議するパフォーマンスを行います。

しかし、この行為によって、両選手はIOC=国際オリンピック委員会の 処分を受け、大会から追放されたのです。

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背景にあったのがオリンピック憲章50条。そこには、競技会場などにおいては「いかなる種類のデモンストレーションも、あるいは政治的、宗教的、人種的プロパガンダも許可されない」と書かれているのです。

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実際、2020年1月、IOCは50条を巡って、2016年、アメリカ・プロフットボール=NFLで人種差別に抗議し、国歌斉唱の時に、選手が行ったような「膝つき行為」は認めないとしたのです。

ところが、今年全米で広がった抗議デモでは、この膝をつく行為が、抗議の象徴となります。
  
そこで6月、アメリカオリンピック・パラリンピック委員会のアスリート諮問委員会は、オリンピック憲章50条の撤廃を要望。

こうした要望に対し、7月に開かれたIOC総会で、バッハ会長は今後の議論を見守る姿勢を示しました。

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IOC(国際オリンピック委員会)トーマス・バッハ会長(7月17日)「表現の自由と互いを尊重するといった二つの価値観を調整するために、IOCの委員会ではアスリート間での対話を開始した」

人種差別などの問題に強く声を上げ始めたスポーツの世界。それを巡って揺れるスポーツの祭典・オリンピック。

スポーツと、社会的・政治的行動との関係はどうあるべきか。その問題が今、改めて問われています。 

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