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2021年7月25日放送風をよむ「“五輪外交”のゆくえ」

コロナ禍の中、ついに始まった東京オリンピック。

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その開会式の前日には、海外からのVIPが次々に菅総理と面談。オリンピックを舞台にした、いわゆる“五輪外交”の光景です。五輪外交といえば、思い出されるのは、2018年、韓国で開かれた、平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック。

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「金正恩の妹がオリンピックの話題を独占した」(CNN)
北朝鮮の金正恩氏の妹、与正(ヨジョン)氏が、開会式に出席、大きな注目を浴びたこの大会。金与正氏が笑顔で文在寅大統領と握手する場面や、統一旗を掲げた  南北の合同選手団の入場行進は、朝鮮半島の雪解けを感じさせました。
開会式の観客席にはアメリカのペンス副大統領。その目と鼻の先には、当時の北朝鮮ナンバー2とされた、金永南(ヨンナム)氏。韓国側が目論んだ、米朝のナンバー2が直接会話をする場面は、見ることができませんでしたが、その4か月後・・・、

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世界をあっと言わせる、トランプ大統領と金正恩党委員長との歴史的な、米朝首脳会談が実現したのです。時に国際政治を大きく揺るがす、きっかけともなってきた、五輪外交。今回、コロナ禍という厳しい情勢の中で開かれる東京オリンピックで、苦境に立つ菅政権が、どんな動きをするか、注目されました。

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国内の世論調査などで、オリンピック開催中止の声も高まる6月、菅総理が臨んだ、G7=主要7か国首脳会議では、

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菅首相「(G7参加国の)全首脳から大変力強い支持を頂きました。こうした支持を心強く思うと共に、東京大会を何としても、成功させなければならない」
G7の全てのリーダーから支持を受けたとして、オリンピック開催・成功への強い意欲を示した菅総理。

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しかし、開会式が近づくにつれて、各国の動きが明らかになる中、強い同盟関係を掲げたアメリカからは、バイデン大統領本人ではなく、ジル大統領夫人が、開会式に出席することが判明。さらにカナダのトルドー首相は、無観客になったこともあり、欠席。

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結局、G7首脳の中で、実際に来日が実現したのは、2024年のパリ・オリンピックの開催国フランスの、マクロン大統領だけでした。

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また日本でも有名な台湾のデジタル担当閣僚、オードリー・タン氏や、イギリス・オリンピック委員会の総裁を務めるアン王女も出席を見送りに。主役クラスの名前が次々に消えていく中、伝えられたのが、

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韓国 パク・スヒョン国民疎通首席秘書官(19日)「文在寅大統領は、東京オリンピックをきっかけとした訪日を、しないことが決まりました」

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そもそも韓国政府は、文在寅大統領の開会式出席と、日韓首脳会談開催を呼びかけ、東京オリンピックを機に、日韓関係が改善する可能性も期待されたのですが、結局訪日は見送りに・・。その理由を韓国側は、首脳会談に向けた事前協議で、合意に至らなかったからといいます。

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コロナ禍以前には、100以上の国・地域、との想定もありましたが、東京オリンピックの開会式に合わせた首脳級の来賓は、結局、15人程度にとどまりました。しかし、水面下で五輪外交は、続いています。わずか半年後に開かれる、もう一つのオリンピックに向けた、外交上のせめぎ合いが、既に始まっているのです。

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来年2月に開催が予定される、北京での冬季オリンピック。世界では、そこに向けた五輪外交が、すでに始まっているのです。

米・ペロシ下院議長(5月18日)「私が提案するのは、外交的なボイコットです」
アメリカのペロシ下院議長は5月、新疆ウイグル自治区などでの、中国による人権侵害を念頭に、北京での冬季オリンピックへの、政府代表の派遣をひかえるよう、各国に提唱。

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6月には、アメリカ議会上院で、外交団の派遣を禁じる外交的ボイコットを求める法案が可決されました。またEU=ヨーロッパ連合の議会も、ウイグルの人権問題を理由に、加盟国に対し、政府代表らへの招待の辞退を求める決議を採択。イギリス議会下院も同様の動議を可決しました。

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こうした動きは、日本でも。火曜日には、自民党の外交部会などで「外交的ボイコット」を検討すべきとの声もあがりました。北京オリンピックをめぐり、中国に対し、包囲網とも言える空気が生まれつつあります。舞台裏で展開する五輪外交。世界をどこに導いて行くのでしょうか。


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