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2020年6月14日「風をよむ ~レイシズム~」

・黒人男性暴行への抗議デモが”記念碑撤去の動き”に

・「母が作ってくれた、若い黒人が従うべき暗黙のルール」とは・・・

・悲劇終幕の手がかりとなる書籍「レイシズム」=人種差別主義

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イギリス西部の街、ブリストル。デモ隊に引き倒されたのは、17世紀、奴隷貿易会社を運営した幹部の銅像です。その後、川に突き落とされました。

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アメリカでの黒人男性暴行死への抗議デモは、こうした記念碑を撤去する動きとなって、各地に広がっています。

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ロンドンでは、奴隷を使い、砂糖のプランテーションを経営した商人、ロバート・ミリガンの銅像が、撤去されました。

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また、オックスフォード大学では、学生らが19世紀、イギリス領だった、現在の南アフリカでダイヤモンドや金を採掘し、巨万の富を築いた、セシル・ローズ像の撤去を要求。

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学生「この像が示すのは、植民地主義や奴隷といった、暴力的な負の遺産であり、その価値観は我々が大学で讃えるべきものではない」

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さらにオーストラリアでは、先住民もデモに参加し、少数民族が不当な扱いをされる現状を改めるよう警察に要求。

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参加者「世界各地で少数派の民族が、多数を占める民族や、資本主義制度、堕落した警察制度のもとで人種差別を受けている」

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そしてアメリカでは、アメリカ大陸の発見者として知られるコロンブスを、先住民の虐殺者として糾弾、その像を破壊する動きも起きました。

歴史上の人物への怒りは、現代史に名を残す人物にも、向けられました。

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抗議運動による破壊を防ぐために、金属版で覆われた銅像…。この中にあるのは・・・第二次世界大戦中の指導者、チャーチル元首相の銅像でした。

生前、チャーチル元首相が、インド人に対する人種差別的な言動をしていたとして、抗議の声が高まったのです。

デモ参加者「これまでは白人目線の歴史ばかりが語られてきたことが問題だった」

振り返れば16世紀以降、スペインやイギリスなど当時の列強が、国家的事業として、競うように推進してきた「奴隷貿易」。

これにより、アフリカの多くの黒人が、南北アメリカ大陸に送りこまれ、奴隷として、鉱山や大農園で酷使される差別構造が作られました。

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その後、リンカーン大統領の奴隷解放宣言や、1960年代半ばの、キング牧師を中心とする公民権運動により、法律上は黒人にも、白人と同等な権利が保障されてきました。

しかし、法制度は変わっても、実態はどうだったのか・・・今回の黒人男性暴行死を受け投稿された、ある動画が注目されています。

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タイトルは「母が作ってくれた、若い黒人が従うべき暗黙のルール」。そのルールとは?

キャメロン・ウェルチさん、18歳。彼は幼い頃から、母親に、次のようなルールを守るよう教えられてきたと言います。

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キャメロン・ウェルチさん(18)「手をポケットに入れてはいけない。パーカーのフードをかぶってはいけない。シャツを着ないまま、外に出てはいけない。遅い時間まで、外を出歩かない。買わないものを触らない。白人の女性を、じっと見てはいけない…」 

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母親から息子に伝えられた16項目もの、こまかな生活のルール。そこには、今なお、厳しい人種的差別や偏見にさらされ、不安を抱えて生きることを強いられた、アメリカ社会における黒人の現実がうかがわれます。

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現に、アメリカでは黒人男性の1000人に1人が、警察官による銃撃などで死亡。また、黒人が警察官に撃たれて死亡する確率は、白人の2倍以上にもなっているのです。

こうした悲劇を終わらせるためには、どうすればいいのでしょう? それを考える手がかりとなる、一冊の本があります。

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「レイシズム」。レイシズムとは、人種差別主義をさします。

著者・ルース・ベネディクトは、太平洋戦争後、「菊と刀」という、日本人論を発表、日本でも、注目された文化人類学者。

彼女は、この本の中で、こう書いています。

「差別の口実が人種であろうと、それ以外の要因であろうと、社会としてあらゆるマイノリティへの差別の撤廃に向かっていくことこそ健全というべきではないだろうか。これは単に、人種差別をなくすだけの プログラムではない。少数派の生活を保障することは、マジョリティの側、つまり、今のところ迫害する側に立っている人も、将来の生活について、安心できるよう、仕組みを作ることである」

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多数派、少数派のどちらかではなく、双方が安心して暮らせる仕組み。そんな社会こそが、目指すべき道だというのです。

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ベネディクトが、こう書いた時から、100年後の今世紀半ばには、アメリカの人口に占める、白人の比率は半数を割るとされています。

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宗教、民族、移民・難民、経済格差など、至る所で、分断・差別が生み出され、全てが混沌としていく中、世界は、人々の不安を和らげる道を、見つけられるでしょうか?

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