2020年4月26日「風をよむ ~新型コロナとプライバシー~」
札幌市内のドラッグストア。ここではAI=人工知能が「客同士の距離」や「店の混み具合」などから「3密」の状態に近づくと、出入り口のモニター画面で注意を呼びかけます。
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。その対策に今、世界各国で様々な「デジタル技術」の活用が行われています。
韓国では、携帯電話のGPS機能と、クレジットカードの履歴をもとに感染した人の移動経路などをわずか10分で把握。接触した人を監視カメラで確認するほか、感染した人の行動を詳細に緊急速報で市民に届けています。
韓国人男性(40代)「個人情報侵害の憂慮もあるけど、このご時世では行動経路を知らせるのは公共の利益のため、早く知らせるのが良いと思う」
さらに、感染の疑いで自宅に隔離されている人の無断外出を防止するため、スマートフォンを使って、違反者の行動を把握する電子リストバンドを明日以降導入すると発表。事前の世論調査で賛成する人が8割に達したといいます。
またシンガポールでも、スマートフォンの近距離無線通信の技術を使って、感染した人の2メートル以内にいた人を特定するなど、デジタル技術による監視が、感染抑止に功を奏したとされます。
また、アメリカでも、IT大手のアップルとグーグルが協力して、本人の同意を得た上で、過去2週間で感染した人の近くにいたスマホのユーザーに警告する技術の開発を発表しています。
さらに・・・。
ドローン音声「そこの自転車に乗っている人!マスクを付けて下さい」
中国では、警察がドローンを使って市民を監視し警告。こうした徹底した対策などが、感染拡大の歯止めになったといいます。
そして、日本でも・・・
竹本直一IT担当大臣(4月14日)「個人が推定されるような状況になるとまずい。非常に気を使いながらやらないといけないと思いますが、非常に有力な方法だと思う」
14日、竹本IT担当大臣は、感染経路を追跡するアプリの実証実験を始める方向であることを明らかにしたのです。
ところが、その一方で・・・。
今年1月に公開された映画「AI崩壊」。AI=人工知能によって管理された「監視社会」の恐ろしさを描いており、こうした「監視」については、懸念の声も挙がっています。
イギリスでは、警察のドローンが、公園で犬を散歩させている人に「不要不急の外出」だと注意を促しますが、「やりすぎだ」といった批判が殺到。
また今月2日、アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体は、「デジタル監視技術を活用する際は、人権が尊重されなければならない」とする共同声明を発表したのです。
ところが、今年3月、世界30か国を対象に行われた国際的な世論調査で、「ウイルスの拡散防止に役立つならば、自分の人権をある程度犠牲にしてもかまわない」かどうか、聞いたところ・・・。
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。その感染拡大を防ぐために、今、世界各国でITを使った「監視」や、一定の「私権の制限」が行われています。
こうした状況の中、今年3月、世界30か国を対象に行われた国際的な世論調査。
その中で、「ウイルスの拡散防止に役立つならば、自分の人権をある程度犠牲にしてもかまわないか」と聞いたところ、「そう思う」と答えた人の割合は、平均で75%にも達したのです。
非常時には多少の人権の抑圧も致し方なしとする意見が大勢を占める中、疑問を投げかける専門家もいます。
イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、こう語っています。
「数カ国の政府が新型コロナウイルス感染症との戦いで、新しい監視ツールをすでに活用している。だが、一時的な措置には、非常事態のあとまで続くという悪しき傾向がある。何かしら理由をつけて、監視体制を継続する必要があると主張するものが出てきかねない」
非常時を乗り切るために導入された“一時的措置”である市民の「監視」。それが非常時が終わったあとも残されて、政府の都合の良いように利用されてしまう懸念を語ったのです。
新型コロナの感染拡大を防ぐために世界中で強まる市民のプライバシーや人権の制限。私たちは、それをどうとらえたらいいのでしょうか?
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