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クルーズ船乗船の高山医師が新型コロナウイルスの特徴を報告。“外出自粛要請”は「効果を発揮する可能性がある」

横浜港に停泊するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に厚生労働省参与として乗船し、対応にあたった高山義浩医師が3月6日、衆院議員会館で勉強会を開き、新型コロナウイルスについて現状の対策やインフルエンザと比べた場合の特徴などを報告しました。
(出席者:高山義浩医師、国光あやの衆院議員)

【以下:高山医師と記者とのやりとり】

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Q.勉強会でどのような話をしたのか。

高山医師:
新型コロナウイルスについて分かっているエビデンスなどを紹介して、今後の見通しや対応、注意点などをご提案申し上げました。

Q.新型コロウイルスについて季節性インフルエンザと比べ重症度の頻度や広がりやすさをどのように評価しているか。

高山医師:
季節性インフルと比べると重症度はやはり高そう、特に高齢者に対する重症化率、致死率は高いだろうという風に考えられます。感染力についてはまだデータを収集している段階なんですけれども、例えば武漢で大流行した時の感染力は明らかにインフルエンザを超越したものでしたけれども、その後いろいろな公衆衛生学的な介入が中国でも行われ、世界的にも努力しているところをみるとインフルエンザはそういう介入をしたとしても広がるものは広がるんですよ。ところが(コロナは)色々な介入をすると、封じ込められているように見える地域もある、というところは単純に感染力という指標だけではなく封じ込めすることが期待できるような感染特性を持っているのではないかということが見えてきたと思います。



Q.封じ込めが期待出来る感染の特性があるとは具体的にはどういうことか。軽症の方が多い一方で少数だけれどもいろんな人に移してしまう人がいることについては。特措法が発令される可能性があるが必要だと思われるか。

高山医師:
封じ込めが期待できるかどうかということなんですけれども、軽症者が多いということではなく、1人あたりで感染させている人の数が少ない、いわゆる今感染が特定された人がいるが、その方々に対して保健所が積極的疫学調査というものを行って、周囲に感染させたかどうかを確認していますけれども、それを見てみると意外に少ないと。一方で10人以上にまとめて感染させている人もいるというところで感染力にばらつきがある。感染力というのはウイルスの特性というよりも、その人の行動に依存しているんじゃないかと。例えばスポーツジムとか屋形船とかそういうところで宴会をしたとか。そういうことで流行が広がっている可能性がある。となれば、そういうことが起きないように外出自粛とかイベントの自粛をすることで周囲への感染が減るのでは無いか。インフルエンザのように誰もが2~3人ずつ感染させるのであればなかなか難しいのだけれども、感染を広げる場というものが見えてきているので、そこを叩いていきましょうという意味では今行っている外出自粛の呼びかけというのが、効果を発揮する可能性がある。これは最終的にはやってみないとわからないんですけれども。その延長線上として特措法が必要かというのは私の守備範囲を越えるのでわからない。


Q.国民に対して知って貰いたい問題意識は。

高山医師:
これから感染を広めないためにみんなが努力しているところなんですけれども、症状がある人に対してつらくあたっているところがないかなということを心配しております。確かに封じ込めていくためには症状のある人は外出しないというのが大事なんですけれども、医療者として自分の患者さん診ているとですね、喘息のあるお子さんであるとか、花粉症であるとかいろんな形で症状のある慢性疾患の方々がいらっしゃいます。その人たちにまで差別といういかつらく当たるようなことがないように、みんなが一致団結するんだけれども排除の論理がないようにというところはお願いしたいなと思っております。


Q.政策を考える方に期待することは。

高山医師:
わかりやすい情報発信を専門家としても心掛けていくので、そことぜひ協調しながら、政策決定者として決断し、国民の方々にメッセージを送っていくということは期待しつつも、そこに専門家の持っているいろんな情報を有効に使って頂ければ我々としてはとても助かります。

これ(下の図)は厚生労働省のホームページ(Q&Aの中)にも載っている図なんですけれども、実際の疫学調査で、感染者から濃厚接触者と想定されている人がその後発症したかを確認したものですね。

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厚労省2次感染図

(厚労省HP「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」問14より)

感染者の約8割は他人に感染させていない。私の立場で言うと「発症させていない」というふうに言わないと、感染させても無症候の人がいるわけで、その人を調べていない以上感染させていないというのは言い過ぎかなと思うんですが、いずれにせよインフルエンザのようにどんどん広げていくというよりは特定の一部の人、こうしたスポーツジムの事例で一人の人が9人に感染させた事例があるとか、あるいは屋形船では12人に感染させた事例がある。こういう人がいることによって感染が一気に広がってしまうということが起きている。外出自粛とかイベントの自粛ということによってこの部分を封じ込めることができたら、あとは自然に収束することも期待できるのではないか。この仮説のもとにこの1、2週間が瀬戸際だと言われているところですけれども、対策をとって消えていくか確認をしているところだ、という風に思っています。


Q.一斉休校や自粛などがされているが今後どういう対策になるべきか。

高山医師:
本来政策というのものは事実に基づいて対策をとっていくべきだと思うんですけれども、進行感染病に関しては事実が蓄積するのを待っていると手遅れになることがありますね。だから想像力をもって対策をとることが必要です。そこで当たった外れたということを批判していると、対策が進まないんですよ。そこはメディアの方も大胆に想定のもとに対策をとっている、例えば封じ込めが出来るかもしれないと考えて対策をとっている、だけども「封じ込めが出来なかったどうしてくれるんだ」という話ではなくて、そこはみなさんも理解して欲しいし、その想像力をもって対策をとっていくことを躊躇しないということも行政側に求められていると思います。想像力を持ってやる以上間違っていることもあるわけで、そこをきちんと事実でフィードバックを受けながら軌道修正しながら対策を進めていくということが、今後の行政に求められる姿勢だと思います。


Q.イベント自粛の出口はいつになる?どういう状態であれば大規模な自粛は必要ない?どういう状態なら続ける、その目安は。

高山医師:
これから流行状態というものを捉えていく。幸いなことに(PCR検査が)保険適用になったことで、より流行動態がとらえやすくなった。今自粛をすることでどれくらい減っていくのか、消えてしまうのか、そういうことも含めて見ていって、さらにどういうイベントが流行を広げているのか、さらに蓄積してわかってくると思いますので、そのエビデンスに基づいて切り替えていく。少なくとも今の段階で、いつ何を持って終了するとは言えないと思います。


Q.「2週間後」というのが来週くらいに来てしまう(3月6日時点)。来週の時点でやめるやめないというのはどういう判断でできるのか。

高山医師:やめるという判断はおそらくないと私は思っていますが、これはちょっと意見は専門家ごとに変わってくると思います。ただ流行が、1、2週間が瀬戸際というのはその後ぐっと韓国のように流行が広がっていけばそれは当然対策のとりかたは変わっていきますよね。そういう意味だと思います。ただその時、イベントの自粛をやめていいっていうことになるかというとそうはならないと思います。


Q.やめるという判断が難しいというのは、まだ感染者数が毎日何十人か出ているような状態が続いているのでなかなかそれはやめるのは難しい。

高山医師:
それは無理ですよね。


Q.新型インフルのようにそれほど毒性の強いものではない、致死率が高いものではないと分かった時点で、感染は広まっているけれども毒性を考えるとそこまで強いものではないという考え方の転換というのはあり得るのか。

高山医師:
今までの疫学情報からすると、すでに高齢者に対する病原性の高さというのは確定的だと思いますので、子供たちの活動を制限する必要はないという判断が来る可能性はありますけれども高齢者を守るということは今後もずっと続くと思います。流行しているかぎりは。(Q.だと、必要?)必要です。


Q.イベント自粛を単純にやめるのは難しい。

高山医師:
選択はするようになるかもしれませんが。

国光衆院議員:
新型コロナウイルスについて高齢者の人は重症だというメッセージが一般の方が聞くと大変なウイルスなんじゃないかと思ってしまう。だからワイドショーを見ている高齢者は怖いんですよね。どれくらい怖いのかインフルエンザとの比較などで・・・。

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高山医師:
これは公表されているデータ(中国本土における年齢別症例数と致命率)になりますね。中国が公表しているものなんですけれども、それによると80歳以上だと14.8%の致命率。感染した場合にはですね。一方50歳以下だとインフルエンザとそれこそ変わらないくらいの致命率という差がありますよね。ですから、(新型コロナは)若い人にとってはインフルエンザと変わらないかもしれない。しかし高齢者になるとこんなアタックはしないので。やはりこの高齢者をいかに守るのかというのが必要だと思います。同じく・・・基礎疾患別のデータなんですよね。これでみると、基礎疾患のある高血圧、糖尿病、心疾患。やはり致命率が6%から10%くらいのレンジをもってやはりインフルエンザでは考えられないくらいの致命率が中国においては出ている。日本ではわからないですよ。中国では出ている。

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一方基礎疾患のない方については0.9%。おそらくここには高齢者もはいっているけれども致命率がそれほど高くない、というところを見ると、政府からの情報発信にも出ているように、基礎疾患のある方と、高齢者をしっかり守っていきましょうというところが重要だというのが見えるかと思います。


Q.中国の初期の混乱状況での致命率と今後の日本の致命率にはかなり差が出てくるのではないか。差が出てきたときにコロナウイルスに対する評価が変わってくるのではないかと思うが。

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高山医師:
その可能性はあると思います。いくつかの公表されている疫学情報を足し合わせると、世界で今10万人弱(3月5日時点)ということで致命率が3.3%。ところが、これほどは高くないだろう。それを湖北省と中国本土、そして韓国日本と比較するとやはりおっしゃっているように混乱していた武漢市においては湖北省においては4.3%の致命率だけれども中国本土それ以外だと0.9%。まで下がってますよね。韓国と日本を見てみると韓国は0.7%に対して日本は1.2%。日本が高く見えるのは、実はクルーズ船の感染者に高齢者が多かったということで、韓国と比べると感染者の年齢階級が違うんだと思います。ともあれ、中国本土の0.9%と比較して、中国本土以外韓国や日本と大きな差がない。今のところ見えているものはですね。ですからもちろん日本ではもうちょっと成績がいい可能性がありますけれども、今あるデータからするとそれほど差はなさそうだという感じがします。湖北省以外はですね。

中国と日本と比較するときに日本の高齢化した社会であって、しかも高齢者が集団生活をしている、歴史上ないくらいの集団生活が今起きている。ある意味感染症に対して脆弱なんですよ。昭和であれば学校を守るという考え方ですけれどもこれから高齢者施設をどう守るかというもうちょっと一段難しいことが日本にはあって、しかも今回のウイルスは高齢者をアタックするとなってしまうと中国とは違う難しさを日本が抱えているところは知っておく必要があると思います。


Q.中国と韓国からの入国者を14日間待機させる、このタイミングについての評価は。

高山医師:
臨床医の立場からはコメントできません。申し訳ありません。


Q.対策の効果はどういうものさしでみていけばいいのか。

高山医師:
それはもう発症者数のカウントだろうと思います。今後どういうサーベイランスを、大流行になったとしてですね、そのときのサーベイランスが今のように一人一人をカウントするというやり方をやるのか、あるいはインフルエンザのように定点を設定して、そこでの感染者を数えるということになるのかそれはわからないんですけど、いずれにせよ患者数を何らかの方法で数えていくということで特定する。新規の感染者を。


Q.集団感染が起こっているのは湿度が高いところというのがある。風邪などを考えると湿度が高ければウイルスの活動が弱まりそうだがどういうことが起こっている?

高山医師:
わからないですね。ただインフルエンザは確かに加湿が感染防御に一定の効果を出すんじゃないかと言われていますよね。それと同じことが新型コロナにあてはまるわけではなさそうだということだと思います。


Q.小学校の休校に関して4月以降はどうすべきなのか。識者の中には感染のピークは4月以降に来るだろうという意見がある。そうすると4月以降続けるべきなのかその点について。

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高山医師:
もしそのときの流行がある程度大きくて、しかも子供達が媒介する可能性があるということが・・・4月までに情報がかなり積み重なってくるのでよりピンポイントな対策がとれるようになってくると思います。そのときにもちろん教育を受ける権利もありますからそことのバランスで落としどころを探していくということだと思いますね。

学童クラブと比べてどちらが有効かというエビデンスが出てくるんじゃないですか。休校していない地域もあるわけですよね。比較ができますよね。

臨床医の立場から水際対策に期待していることは何かというと、いきなり国内で流行する前にエビデンスくださいってことなんですね。例えばどんな薬が効くのか利かないのかとか、あるいはどういう症状があったら重症化の兆候があるのできちんと注意して見守る必要があるのかとか、様々な情報がないままにいきなり国内流行されると困ると。そういう意味で1週間でも2週間でもいいので国内流行を先送りしてくれるのであれば臨床学士としてはとても助かります。

きょう(6日)からまさに保険適用になったわけですよね、PCR検査が。これも先延ばししてその間に検査会社とかがPCR検査の態勢を整えてくれたわけですから、臨床側としては先延ばししてもらった効果にあげられると思います。


Q.クルーズ船対策の評価は。

高山医師:
評価は疫学情報、クルーズ船の中の・・・どうだったのかということをきちんとデータを読み解く必要がある。それはまだ公表できていないので、今後感染疫学の専門家が分析をして評価してくれると思います。それをみる必要があると思いますけどね。


Q.先生ご自身は。

高山医師:
わからないです、それはみてみないと。


Q.レッド、グリーンのゾーン分けが出来ていないというのはどうだったのか。

高山医師:
どこまで理想を追うか。

私も船の中のルールというのがわかっていないんです。いわゆる病院であれば一目で見てこうした方が良いよと言えるんですけど、船はきわめて特殊な環境で24時間動いていなきゃいけないし、どこでクルーがどういう仕事しているかもわからない。仮にクルーが全員降りたらなにが起きるのかということもわからない。船が傾いてしまうかもしれないくらいの複雑な構造な訳ですよね。働き方も。船乗り達の暗黙のルールもそこにある。そうした中で一概に感染対策がこうあるべきということはまだ言えない。だからこそいろんなデータがそろってからじゃないと私も発言できないなという風に思っていまして、私はほとんど発言していないのはそういう理由です。

今現在進行形であればどんどん介入していく必要があるかと思いますけど、いったん終わっているのでとりあえず情報を整理してそこできちんと専門家も交えて評価をする場があれば次のこうした事態に対して、役立つ情報になるだろうと思います。


Q.一般に肺炎で亡くなる高齢者は多いがこれらと比べて数的に多いと感じるか。

高山医師:
全く少ないと思います。新型コロナウイルスの方が。今は。今後大流行になったら入れ替わる可能性もあるかもしれないですけれども、少なくとも今なくなる人の99.9%以上は新型コロナではなく、誤嚥性肺炎とか今までと変わらないのではないでしょうか。


Q.今後考え得るシナリオを教えて欲しい。

高山医師:
大きく分けて3つある。ひとつは封じ込めが成功する、これが理想的なシナリオですよね。2つ目はちょろちょろ燃えながらもしばらく続いて消えていく。そしてそのしばらくとはどれくらいかというと、数年かかるかもしれない。季節による変動はウイルス感染症だとしばしばあるので、場合によっては春先に一端落ち着いて秋にまた燃えてくることもあるし、ずっと沖縄でインフルエンザが通年流行しているようにずっと続くということもあり得る。3つ目のシナリオはこれは避けるべきシナリオで、これから大流行を迎えるということですね。


Q.大流行になる場合はどういう条件を満たした時なのか。

高山医師:
ウイルスの特性と公衆衛生学的な介入がそれに対して十分発揮できなかったということだと思います。

国光衆院議員:
多くの方8割の方は軽症で終わる。気がつかないうちにかかっていて集団の免疫がついてくると普通の風邪となることも考えられる。

高山医師:
結局、集団免疫効果といいますけれども、例えばはしかが日本国内で大流行を起こさなくなっているのは、一定の人数が免疫を獲得しているからですよね。ワクチンがあればワクチンをうつことによって集団免疫を獲得できるんですけれども、新型コロナウイルスに関して、今ワクチンがないという状態ですからこれが封じ込められず地域的な流行を起こしてくるとすれば、一定の人数が感染して、免疫を獲得するまで落ち着いてはいかないだろう。これが感染症の基本的な理解です。

単純な話、R0(アールゼロ)、基本再生産数というのがありますけれど、これが仮に「2」だとすると集団免疫率、地域的な流行が起きなくなるために必要な免疫保持者の割合は50%となるんですよ。50%の人が感染すると地域の流行が治まっていく。その50%の中にご年配の方々や基礎疾患がある方々が入らないように地域で協力するということがこの対策の目標に、封じ込めが出来なかった場合の次の目標になりますよね。


Q.軽症でもPCR検査を全数すべしなど不安をあおるような論調もあるが臨床医として冷静な見解をお願いしたい。

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高山医師:
確かに診断を求めて受診される患者さんたちがいて、それに応えていきたいという医療従事者の思いは尊重すべきだと思う。患者にとってもそれは診断して欲しいということなんですよね。ただ一方で2つの面でこの新型コロナの流行期においては、軽症の方々の検査を行っていくということについては減らして、ある程度は抑制せざるを得ないだろうと思っています。なぜかというと、診断して貰えるとなると、軽症の人たちも沢山きてしまうと、それで病院のなかがごったがえしてしまう。待合室が患者で増えてしまう。そこには新型コロナ以外の患者さんもいます。赤ちゃんが体調が悪くてもどしてしまって連れてきているお母さんもいるでしょう。脳梗塞を起こして受診してきている高齢者もいるかもしれない。そういう色々な方々が受診するのが日本の病院です。そこに軽症の新型コロナの人たちもごちゃまぜに待合室で待っている状態というのが一番新型コロナの流行を抑止するうえで怖い部分でもあるんですね。それが一つ目の理由です。

もうひとつは検査を行うときに鼻の中やのどに綿棒をつっこむ。そのあと患者はけっこう激しく咳き込むんです。激しく咳き込むことが、エアロゾルといってウイルスをまき散らす原因になっています。我々はそれを防御するんですけれども、狭いクリニックの診察室とかでそれをやると医療従事者を危険にさらしているということは理解して下さい。狭い診察室の中でそれをやると、喚起が不十分だと次にその診察室に入ってくる患者も感染のリスクにさらされてしまいます。ですから、そこは診療所の先生も注意して対策をされるだろうと思うんですけれども、ある程度重症者の方々に検査を行う。少なくとも重症で無くても四日以上症状が続いた方々、やっぱりこれは新型コロナの可能性が高い、という方々に絞り込んで検査を行なっていくようにしないと、今言った二つの理由でもたないと思います。

あとは検査の精度が7割を下回るぐらいだという、いろいろレポートが出ていますけれども。少なくともそれほど高くはない。となると、10人の実際の感染者がいても、3人は見逃すわけです。その検査で。その3人の方々にPCR検査をして陰性だと伝えてしまうと、もう自分は大丈夫だと思ってしまいますね。どうしても。そして仕事に行ってしまうかもしれない、遊びに行くかもしれない。そうやって感染が広がるリスクがある。検査をやって陰性という話をするのではなく、むしろ、症状がある人はみんな自宅でしっかり症状が治まるまで療養をしていただくということの方が、実は感染対策としては有効。検査をして「陽性の人たちだけ外出自粛してください」というのは逆に危険であるということを理解して欲しい。


高山 義浩医師
沖縄県立中部病院 感染症内科・地域ケア科。
1995年東京大学医学部保健学科卒業。2002年山口大学医学部医学科卒業後、感染症診療や地域医療に従事。厚生労働省での新型インフルエンザ対策を経て、現職。2020年2月より厚生労働省技術参与。