🇨🇦カナダでワクチン接種した日本人に聞きました

新型コロナの感染世界１位のアメリカのお隣、人口３８００万のカナダの感染者数は３月２日時点で８７万人、死者は２．２万人を超えた。ワクチンの接種開始はアメリカと同じ、２０２０年１２月１４日。１度目の接種率は３月２日時点で３．９％（同日時点でアメリカは１５．５％）だ。
今回話をうかがったのは、在住歴２０年以上、ツアーガイドなどを経て、現在はバンクーバーで、外国人のカナダへの移住などをサポートするコンサルタント兼、介護士の尾崎尚人さん（４６）。１２月１５日に１度目を、１月２１日に２度目の接種を受けている。
カナダならでは、と言えるような優先順位や、接種までの流れや副反応、受けてみての感想などについて聞いた。尾崎さんは、自身の経験が「これからワクチン接種を受ける人たちの判断材料になれば」ということで取材に応じてくれた。（メールおよびZOOMで実施）。

カナダ流優先接種順位

今は第１フェーズ(カテゴリー)で、日本でいう老人ホームで働く従業員、看護師やヘルスケアアシスタント＝介護士、おそらく、施設で働く清掃スタッフやキッチンスタッフ、受付の人たちも接種可能だと思います。老人ホームに住んでいるご高齢の方も受けられます。ロングタームケアといって、高齢者だけでなく、ほぼ自活できないナースの助けが必要な人は受けられます。
あとは、ファーストネーションといって、先住民ですね。そのなかでも簡単にアクセスできない山の中、へき地に住んでいる先住民。そしてコロナ対策のICUなどの医療関係者です。
第２フェーズには、８０歳以上の高齢者、６５歳以上の先住民、医療関係者、あとはホームレスの方などです（細かい接種順位を知りたい方はこちら）。

ワクチン接種までの経緯、手続き

VCH（Vancouver Coastal Healthというカナダ保健省の、地域の管理をしている機関）から職場に連絡があり、「１回目のワクチンの接種場所、時間等」が職場の壁に紙で張り出されました。「接種は任意で、強制ではない」とも書かれていました。
そこで受けたい人は直接、指定された日時に指定された場所に行くというものです。個人への連絡というのはVCHからも職場からもありませんでした。紙が張り出されていた期間に休んでいたら知りえなかったです。2度目の張り出し時は休んでいて同僚が知らせてくれました。

接種当日（１回目）

私はバンクーバー市内のVancouver General Hospitalと言う大きな病院で接種するように段取りされていました。他の場所での接種は不可だと思います。そもそも、他の接種場所情報は簡単に手に入らないようにVCH等が情報コントロールを行っていたと思います。接種自体は病院内ですが、受付等は屋外でした。
接種場所には予約無しで車で行きました。職場のIDとMSPと呼ばれる健康保険証と運転免許所等のIDは持参しました。屋外の受付エリアに３０人程の行列。スタッフ数人が密にならないように声掛けていました。この時期は医者、看護師、介護士等、医療介護従事者のみの接種なので、基本的にはソーシャルディスタンスの意識は持っていましたので、大部分の接種者は自主的に距離を取っていました。
順番が来ると、屋外テントのような所に入り、ID等を見せ接種準備。担当していたのは看護師だと思います。準備終了後、屋外テントを出て、屋外に並びます。ここでも密をつくならように声がけするスタッフがいました。ここで２０分程待ち、順番が来たら、病院内に入りました。入り口にスタッフが２名おり、手のアルコール消毒、用意された新しいマスクへの付け替えの指示されました。
この時点で、私の前には１５名位が並んでいました。１０分程で「接種エリア」に入り、書類を見せ、口頭で本人確認をし接種でした。また、約３０秒、副反応の簡単な説明を口頭で受けました。
注射は、１度目、２度目共に左の上腕部でした。筋肉注射なので、右でも左でもどちらでも希望した方に注射してくれると思います。私は右利きなので左でお願いしました。痛みは、インフルエンザの注射と同じか、それ以下だと感じました。注射針が刺さっている時間は４秒位でした。

接種後

接種後、待機エリアに1人で移動。椅子が等間隔で置かれていたので座る。念の為３０分待機しました。最低１５分は接種場所の横にあるエリアで待機を勧められました。これは自己判断で強制ではないです。
合計でかかった時間は９０分程度だったと思います。
混雑時は４時間かかったと、現場のスタッフが言っていました。
接種後の行動規制は無し（シャワーもOK）。が、接種前と同じように密にならない、マスクの着用等、感染拡大を防ぐルールに従うようにとの指示はありました。

　　　　　　　　　　　　(尾崎さんの左腕)

副反応

■１度目
・２時間後位に接種部分に鈍痛（軽度）
・３時間後位に顔の一部と胸部のごく一部に「赤い湿疹」のようなものが少量現れる。４～６時間で消えたと記憶。痛み、痒み、違和感は一切なし
・接種の翌日（接種の約１４時間後）、左腕を動かした際に強めの痛み。腕を垂直に上げるのは厳しいくらい
・接種の２日後、左腕の痛みレベルがかなり下がり、接種の３日後、痛みはなくなった

■２度目
・接種の６時間後、接種した左腕に軽い痛み
・１０時間後、全身に中程度の痛み
・１８時間後、全身に強めの痛み（痛み止め服用）。微熱。左腕の痛みは６時間後と同じレベル。
・２３時間後、息苦しさ（軽度）＆ みぞおち辺りにしびれるような違和感（軽度。過呼吸気味なので、その影響の可能性大）
・４８時間後、息苦しさ：ピークから３０％減・全身の痛み：ピークから２０％減・接種箇所の痛み：ピークから９０％減
・６８時間後： 息苦しさ：無し・全身の痛み：ピークの１０％・接種箇所の痛み：ピークの５％

１度目と２度目で比較すると

良い点：①左腕の痛みがかなり弱い ②赤い湿疹のような物が一切出なかった
悪い点：①息苦しさが悪化しないか不安だった。②全身の痛みが辛く、デスクワークでも仕事はするのは厳しかった。

ワクチン接種のリスク

人によってはきつい副反応の為、仕事や学校を休む必要があると思います。
医療介護従事者のみが接種に来ていた為、接種時の感染リスクが高めだった（感染している無症状の人が来ている可能性は、少なくともカナダにおいては高いと考えています）。尚、現場では体温の測定は行っていませんでした。
一人暮らしの人に副反応が出た場合、病院への搬送が遅れるなどの可能性があります。ワクチンを打ったことで、「感染しない」と油断をし、外出が増えたり、密を避ける意識や手洗い、除菌の意識が低くなったりして感染を広げる一因になりかねません。「接種者」も感染を広げるリスクファクターである事の周知が大切だと思います。ワクチン接種の際にしっかり理解させる事が最も効果的だと考えています（現場での説明・注意をまとめた紙の配布し、後で読み返せるようにするなど）。ワクチンの効果持続期間もまだ明確ではありません。

ワクチン接種のベネフィット

①接種者の感染リスクの大幅減
②将来的な集団免疫の獲得
③コロナを必要以上に怯えている人のメンタル安定に寄与
④感染リスクの高い仕事の方のメンタル安定に寄与
⑤医療介護従事者が、勤務場所（病院、介護施設）で感染を広げるリスクが下がる可能性があるかもしれない（ワクチン接種により抗体を持ってもウイルスのキャリアになりうるのか、私は理解していませんので何とも言えませんが。。。）
⑥ワクチン接種の健康被害・死亡被害リスクが低い事が世間に浸透し、接種控えをする人が減る可能性あり
⑦接種する側＆受ける側共に経験を積む事になり、次の年の接種作業において様々な事がスムーズになる
⑧日本人への接種により今後に活かせるデータが得られる。

先住民やホームレスへの接種順位が高い、というのはカナダならではなのかなと感じました。一方で、職場で接種の情報が張り出され、それを見て受けに行く、というアバウトさにも驚かされました。
副反応は人によって異なりますが、尾崎さんの話を聞いて、副反応の症状が強めに出る可能性を鑑みると、特に２度目の接種の翌日は休みが取れるようなスケジュールがいいのかもしれないというのは参考になりました。（聞き手：デジタル編集部　遠藤弥生）